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約20分で2500台完売! 話題の“手のひらケルヒャー”がMakuakeで大成功を収めた理由とは【家電で読み解く新時代|Case.14】

「限定数2500台」が生んだ初速の熱狂

 2025年6月22日に始まった「OC Handy Compact ハンディエア」のMakuakeプロジェクトは、開始直後からアクセスが殺到し、わずか約20分で限定数の2500台が完売した。

 本プロジェクトを担当したマクアケのプロジェクト推進本部 キュレーション局 マネージャー・大久保 尚氏は語る。

「高圧洗浄機はMakuakeでも人気ジャンルですが、ケルヒャーの参戦は初。しかも小型で価格も手ごろ。開始前の露出で期待値が最高潮に達していました」

 事前に日経新聞などの大手メディア露出があり、開始前の「気になる」登録は2万2000件超。さらに「数量限定」という条件設定が、ユーザーの心理を強く刺激し、瞬く間に“争奪戦”が生まれた。

「もし数量を絞らずオープン販売していれば、売上は1億円規模に達していたはず」と同氏は振り返る。アクセス集中で一時サーバーが“詰まる”ほどの熱量だったという。

モバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(ハンディエア)」
モバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(ハンディエア)」

小型モデルの系譜──OC 3、KHB 6、OC 5 Handy、そしてハンディエアへ

 ハンディエアの成功は偶然ではない。ケルヒャーは2018年、タンク一体型のOC 3で“持ち運べる洗浄機”という新カテゴリーを地固め。2021年にはKHB 6 バッテリーを投入し、ホース給水と約2.4MPaの吐出で、家まわりの“中強度”を担うポジションを確立した。

 転機は2025年3月のOC 5 Handy。集合住宅のベランダ掃除など“軽清掃”を掲げ、Amazonを中心に展開すると予想以上のヒットを記録。その直後、2025年6月に登場したのが「OC Handy Compact ハンディエア」である。

 折りたたみ構造とペットボトル直結、約1.5MPa相当の水圧、12〜30分の運転時間で“持ち出し即応”に振り切り、キャッチコピーは「帰るまえに10秒ケルヒャー。」。

 前機種で得た手応えと市場の盛り上がりを“逃さず投下したタイミング”が、完売劇につながった。

モバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(ハンディエア)」の一般販売を9月15日に開始する。価格は13,620円(税別)
モバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(ハンディエア)」の一般販売を9月15日に開始する。価格は13,620円(税別)

ドイツ本社を動かした“現場主義”

 ドイツ本社には「ケルヒャー=パワー」という強固なイメージがあった。小型モデルへの懐疑は根強かったが、日本側で商品企画を担ったケルヒャー ジャパンの本田圭悟氏は、机上ではなく生活の現場で訴えた。

「本国の担当者を自宅に招き、一般的な日本の住宅を知ってもらいました。収納スペースの乏しさや隣家との距離を実際に体感してもらい、年に数回の大掃除ではなく、日常でサッと使える小型機の必要性も理解してもらえたと思います」

 市場が求めるタイミングで日本から提案し、本社を動かしたことが、プロダクト開発を一気に加速させた。

ケルヒャージャパン マーケティング&プロダクト本部 家庭用プロダクト部 プロダクトマネジメント エキスパート 本田圭悟氏
ケルヒャージャパン マーケティング&プロダクト本部 家庭用プロダクト部 プロダクトマネジメント エキスパート 本田圭悟氏

“あるあるシーン”に特化した体験設計

 ハンディエアが狙ったのは、外壁洗浄のような“重清掃”ではない。スポーツ帰りの泥落とし、公園帰りのベビーカーのタイヤすすぎ、ペットの足裏ケア、自転車やギアの軽い洗浄──そんな“外出先でのちょこっと清掃”だ。

「長時間の高出力は不要。思い立ったらすぐ使えることに全振りしました。折りたたみボディとペットボトル直結はその象徴です」(本田氏)

 生活者の清掃行動が“短時間・高頻度”へと変化するタイミングで、必要十分な圧力と即応性を備えた最適解を提示したことが支持を呼んだ。

これまでは放置していた汚れもハンディエアがあれば、サッときれいにできる。家の中に折り畳んで保管するベビーカーなども清潔だ
これまでは放置していた汚れもハンディエアがあれば、サッときれいにできる。家の中に折り畳んで保管するベビーカーなども清潔だ

安全と品質という「ブランドの約束」

 ケルヒャーが行った独自のユーザー調査では、購入理由の上位に「コンパクト・持ち運び」に続いて「ブランドの信頼」が挙がったという。

「社内の製品試験は正直“やりすぎ”と思うほど厳格です。小型でもそこは一切妥協しません。品質と安全性はケルヒャーの最重要の約束です」(本田氏)

 市場には安価な無名メーカー品も多い中で、安全志向が高まるタイミングにブランドの信頼を前面に押し出したことが、購買の後押しとなった。

筆者は2023年にドイツのヴィンネンデンにあるケルヒャーの本社メインオフィスやエクスペリエンスセンターを訪れている。業務用民生用に限らず、”清掃機器専業メーカーとして厳格な開発テストや品質管理が行われていた
筆者は2023年にドイツのヴィンネンデンにあるケルヒャーの本社メインオフィスやエクスペリエンスセンターを訪れている。業務用民生用に限らず、”清掃機器専業メーカーとして厳格な開発テストや品質管理が行われていた

成功の陰で見えた課題――供給体制の再設計

 華々しい数字の裏には、反省もある。想定を超える反響で生産調整に時間を要し、応援購入者への納品と一般販売の開始が近接してしまった。

「完売してから発表までが2カ月空いてしまいました。増産体制の交渉をしていたためです」(本田氏)

 背景には、生産ラインの硬直性という構造課題がある。

「工場は生産計画が予め固定されているので、途中で増産と言っても、相当な見込みがないと強く言えません。でも今回のMakuakeの実績はそれを説得するために余りある結果でした。なので、自信を持って工場側に“ラインを空けてください”と交渉しました」(本田氏)

 さらに不運なことに外的要因も重なったと本田氏は語る。

「台風の影響やタイトなスケジュールが響き、納品は事前の計画より大幅に時間を要することになりました。初めての進め方で想定も甘かった部分は反省し、次に活かします」

 結果的に、爆発的需要と生産体制の硬直性がぶつかるタイミングで課題が顕在化した。しかしその経験こそ、次の挑戦への布石となる。

さまざまな趣味の道具を道具をきれいに保つ道具としても大活躍する
さまざまな趣味の道具を道具をきれいに保つ道具としても大活躍する

「即応性×信頼×場」が完璧なタイミング

 プロダクトの完成度、ブランドへの信頼、クラウドファンディングという熱量の高い場、直前の露出、そして市場環境。これらの要素が“同じタイミングで重なった”ことこそが、20分で2500台完売の最大の理由だった。

 生活者中心の体験設計を背景に、必要十分の機能を信頼できる品質で届ける。そこにクラウドファンディングという舞台装置が加わったことで、ケルヒャーは時代の波を掴み取った。

 生活者中心の体験設計で、過不足ない解を最短距離で届ける——家電の勝ち筋はここにある。この挑戦は単なるヒットではない。タイミングを制する者が市場を制する”ことを証明した、家電の未来を拓く確かな予兆である。

●商品概要
「OC Handy Compact」
・本体重量:約 780g
・サイズ(展開時):約 184 × 71 × 186 mm
・バッテリー:リチウムイオン 7.2V/2.5Ah
・充電時間:約 3時間
・連続使用時間:約 12〜30分(モードによる)
・最大吐出圧力:約 1.5MPa(一般水道の約7.5倍)
・最大吐出水量:約 150L/h
・給水方式:ペットボトル直結 or バケツから自吸
・ノズル:4-in-1ノズル、洗浄剤ノズル付属
・付属品:5m自吸ホース、ホースクリップ、ペットボトルアダプター、USB充電ケーブルなど

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