34年前の国産スーパーカーなのに走行1.2万キロ! ビッカビカの赤いアキュラがオークションに登場 初期型「NSX」の価値とは
ハリウッド俳優たちを魅了した国産スーパーカー
2025年10月31日に米国ラスベガスで開催されるブロードアローオークションに、1991年式アキュラ「NSX」が出品される予定です。
どんなクルマなのでしょうか。

1980年代、フェラーリ「F40」やポルシェ「959」といった伝説的なスーパーカーが登場するなかで、ホンダは少し異なる方向を目指しました。
F1エンジンメーカーとして数々の栄光を手にしていた同社は、自らの技術力を世界に示し、ブランドの存在感を高めるために、純粋にドライバーのために設計されたスポーツカーを生み出そうとしたのです。
この挑戦から誕生したのが「NS-X」、すなわち“New Sportscar eXperimental(新しいスポーツカーの実験)”という名を持つモデルでした。
登場した初代NSXは、ホンダのエンジニアリングの野心そのものといえる存在で、同社のF1技術を数多く取り入れて開発されました。
世界初の量産車用アルミモノコック構造を採用し、そのシャシ重量はわずか210kgに抑えられていました。心臓部には3リッターのV6エンジンをミドシップに搭載し、こちらもオールアルミ製。さらにコンロッドには量産車として初めてチタン素材が用いられました。
北米仕様のアキュラNSX、5速MT仕様では274馬力を発揮し、4速AT仕様でも255馬力を誇りました。すべてが軽快で滑らか、そして精密に仕立てられていたのです。
デザイン面でも、性能の一部として視界性能が重視されました。デザイナーの奥山清行氏と上原繁氏は、F-16戦闘機のコクピットをヒントに、広く遮るもののない視界を実現しています。
開発には当時のホンダF1ドライバー、アイルトン・セナ選手も深く関わりました。
セナのテスト時のフィードバックは、NSXの走りを最終的に磨き上げるうえで大きな役割を果たしたといわれています。セナはグランプリ期間中に日本登録のNSXを公用車として使用しており、またブラジルの自宅にもプライベート用としてフォーミュラレッドのNSXを所有していました。彼にとってこのクルマは、サーキットの外でも愛用する特別な存在だったのです。
NSXは、セナをはじめゴードン・マレーやビル・ゲイツといった著名人を魅了しましたが、最も注目を集めたのはハリウッドでした。映画監督ジョージ・ルーカスがカリフォルニアで最初の1台を注文し、トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、そして故ロバート・レッドフォードらもオーナーに名を連ねました。
この個体のNSXは、1990年12月、カリフォルニア州のゴールデンゲート・アキュラを通じて新車納車されたもので、オリジナルのウィンドウステッカーにもその記録が残っています。ボディはフォーミュラレッドにブラックルーフ、内装はブラックレザー、そして人気の高い5速マニュアル仕様でした。
初代オーナーは約5000マイルを走行したのち、1996年に手放しました。2代目オーナーはコレクションの一部として約200マイルのみ走らせ、2009年に売却しています。
以降の整備履歴はすべて領収書や記録として保管されており、詳細に追跡可能です。
このNSXは、走行距離7751マイルという極めて低走行のまま、当時のオリジナル状態を見事に保っています。
新車時から丁寧に扱われてきたことがわかる美しいレザーインテリアが、その保存状態の良さを物語っています。付属品としてオーナーズマニュアル、4本のオリジナルキー、ウィンドウステッカー、納車前点検記録、そして2009年以降の整備・メンテナンス記録一式が揃い、クリーンなCARFAXレポートでもその履歴が裏付けられています。
落札予想価格は13万5000ドルから16万ドル(1米国ドル151円換算で、日本円で約2035万円から2413万円)とされています。
VAGUEからのオススメ
マザー・オブ・パールが詩情豊かに輝く――大人の夜を彩るブローバ「マリンスター」日本限定モデルの魅力とは【PR】