渋谷から「世界のTOSHIBA」へ──東芝ライフスタイルが描く“デザイン経営”の未来とは【家電で読み解く新時代|Case.24】

「生活空間で決める」──意思決定の構造改革
筆者がもっとも印象に残ったのは、TDCでの意思決定プロセスだ。従来、製品の色や仕上げは、会議室の机の上で決まっていた。蛍光灯の下で見た“白”と、実際のリビングで見た“白”は、まったく違う。これを現場感覚で判断するのがTDCの手法だ。
「照明の明るさや色を自在に変えたり、設置場所を変えたりして、最終判断をします。生活空間の文脈で意思決定することが、最終的な品質にも直結する」
また、TDCはデザイン部門だけでなく、企画、マーケティング、生産技術も巻き込み、横串で議論する場 として機能している。社長直下の組織体制に移行したことで、スピード感も格段に上がったという。

Tokyo Design を“ラベル”に──グローバル発信の最前線へ
もう一つの大きなポイントが、TDCのグローバル戦略との接続だ。宮澤氏は、TDCを 「東京発のグローバル・デザインラボ」 として位置づける。
「今後、本体である親会社・美的集団から海外デザイナーの受け入れも進めます。日本から発信するTokyo Designを“ラベル”として海外のプロジェクトにも活かしたいと考えています」。
すでに中国・欧州の拠点との連携も始まっており、東京で決まったデザインが海外モデルに反映されるケースも増えていく見込みだ。
つまりTDCは、単なる国内拠点ではなく、グローバル戦略のハブとしての役割を担うことになる。
この戦略は、近年の「デザイン経営」の潮流とも合致している。単なる意匠としてのデザインではなく、事業戦略そのものにデザインを組み込むことで、競争力を高めるという考え方だ。

「Tokyo Design Center」という名の“メディア”
TDCの面白い点は、ここが単なる開発施設ではなく、情報発信の拠点としても設計されていることだ。将来的にはイベントや展示の一般公開も視野に入れているという。
「普段は非公開ですが、期間限定の一般公開は検討しています。展示会のように“つくる過程”を見せることができれば、ユーザーとの距離も縮まります」。
TDCは、製品を「つくる」だけでなく、社会と「つながる」場所でもある。いわば “TOSHIBAブランドのメディア” としての機能も内包しているのだ。
page
VAGUEからのオススメ
マザー・オブ・パールが詩情豊かに輝く――大人の夜を彩るブローバ「マリンスター」日本限定モデルの魅力とは【PR】