故アイルトン・セナ選手の愛車「190E」がオークションで高値落札 “伝説のレース”で優勝し 購入後にセナ自身がドイツから英国まで乗って帰ったという“ホモロゲモデル”とは
F1王者ゆかりの「190E 2.3-16」、その歴史と特別な個体
2025年11月に英国ロンドンで開催されたRMサザビーズ主催のオークションで、1985年式メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」が出品され、高値で落札されました。
どんなクルマなのでしょうか。

1984年5月、改修を終えたニュルブルクリンクの新グランプリ・サーキット開業を記念して「レース・オブ・チャンピオンズ」が開催されました。
新型メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」の発表を兼ねたこのレースには、ニキ・ラウダ氏をはじめ、往年のF1チャンピオンたち20名が集結。その中には未来の王者となる現役F1ドライバー、アラン・プロスト氏やアイルトン・セナ氏も参加しました。
当時のセナは、まだF1デビューから4戦目を終えたばかりの新人。フォーミュラ3出身の若手にすぎませんでしたが、急遽欠場した同郷のエマーソン・フィッティパルディ選手の代役として出場しました。
使用車両はすべてメルセデス・ベンツ190E 2.3-16をベースにしたワンメイク仕様で、セナはスモークシルバーの11号車をドライブしました。
予選では、プロストに次ぐ3番手を獲得。そして雨の降る決勝で、歴代王者を抑えて見事トップチェッカーを受けます。
2位はラウダ。セナはこのレースで、わずか12周の戦いの中で世界にその才能を印象づけました。後にF1を代表するドライバーとなる彼にとって、この勝利は伝説の幕開けだったといえます。
この経験を経て、セナは190E 2.3-16を気に入り、私用車として購入しました。
メルセデスの工場から直接引き取り、英国の自宅へ自走して帰ったといわれています。整備記録には彼自身が支払った関税や税金の記録も残っており、2年間で約2万5000マイルを走行した後、モナコへの移住を機に友人関係者に譲渡されました。
1996年には現オーナーが英国で購入し、その後オーストラリアへと移送。約30年にわたり丁寧に維持されてきました。
整備書類にはセナ所有時代からの記録が一貫して残され、現在の走行距離は15万マイル台。さらに2016年のオーストラリアGPでは、ラウダがエンジンルームにサインを残しています。
付属品も充実しており、当時のマニュアル、工具、Becker Mexicoステレオ、未使用の救急キットまで揃っています。
この190E 2.3-16は、F1史上に名を刻むアイルトン・セナが愛した実車として、他に並ぶもののない来歴を誇ります。若き日のセナが初めて世界を驚かせた瞬間の延長線上にあるこの車は、モータースポーツ史の1ページをそのまま留めた、まさに“走る遺産”です。
この1985年式メルセデス・ベンツ「190E 2.3−16」、23万ポンド(1英国ポンド=198円換算で、日本円で約4554万円)で落札されました。
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