“アップルどっぷり世代”をどう動かす?――Windows生誕40周年を迎えたマイクロソフトの“AI戦略のカギ”とは

戦略1:「AIを意識させないAI」――Copilotを“空気”にする
マイクロソフトのCopilot戦略を見ていて、一番面白いと思うのは、「AIをAIっぽく見せない」方向に全力で振っているところだ。
もちろんCopilotというブランド名や専用キーは打ち出しているものの、彼らが本当に目指しているのは、「ユーザーがAIを意識することなく、気づいたらAIの恩恵を受けている状態」である。
「AIって、言葉としてはすごく目立ちますが、理想は“目立たないこと”だと思うんです」と當野氏は笑う。
「電気やWi-Fiのように、あって当たり前。ないと不便だけれど、普段は存在を意識しない。“AIを使おう”と構えなくても、自然に支えてくれる。Copilotは、そんな存在を目指しています」
画面を“理解する”アシスタントへ
その象徴的な機能のひとつが、「画面文脈を理解して動くCopilot Vision」だ。従来のAIチャットは、テキスト中心の世界だった。「この文章を要約して」「この英語を翻訳して」といった、ユーザー側が“整理した質問”を投げる必要があった。
「ここは、PCならではの強みです」と當野氏。
「スマホアプリのチャットボットだと、どうしてもテキスト中心になりがちですが、PCは“画面全体”を前提にしたサポートができる。
いま見ている画面やアプリに沿って、Copilotが横からそっと『こういう設定もありますよ』と教えてくれるような体験を、これからもっと増やしていきたいですね」

“キャラクター”でAIへの心理的ハードルを下げる
もうひとつ興味深いのが、AIを擬人化しすぎない範囲で“キャラクター化”する取り組みだ。マイクロソフトは、Copilotに接続されるAIエージェントとして、「水の精のような存在」「風や光、火のような“自然物のエレメント”」といった抽象的なキャラクターを用意し始めている。
「AIにいきなり話しかけてください、と言われると、少し照れくさいじゃないですか」と當野氏。
「そこで、ちょっと柔らかい存在を間に置いてあげる。だけど、人間にそっくりなアバターにはしない。あくまで“道具としてのAI”という距離感は保ちたい。そんなバランスを意識しています」
この“距離感の取り方”は、テクノロジーを生活に溶かすうえで非常に重要だ。機能だけを押し出すのでもなく、かといって人間の代替のように振る舞わせるのでもない。「AIを意識させないAI」というコンセプトは、かなりよく練られた設計だと感じる。

戦略2:「Z世代の“最初のPC体験”を取りにいく」
もうひとつの大きな柱が、Z世代に対する「初めてのPC&AIの原体験」を、AI PCで取りに行く戦略だ。
マイクロソフトは、Copilot+ PCやSurfaceの学生・新社会人向けキャンペーンを強化し、「特別価格」「Microsoft 365やCopilot機能のバンドル」「オンキャンパスでの体験イベント」などをセットにして、大学生・専門学校生にアプローチしている。
當野氏が語るZ世代の特徴は、我々が思っている以上に“AIとの距離が近い”という点だ。学生の生活に AI が自然に入り込んでいる現状を示す印象的なエピソードとしてこう語る。
「最近の学生さんは、恋愛相談をAIにするんですよ。“このLINE、どう返した方がいい?” とAIに聞く。それがもう、日常の行動として染みついているんです」
つまりZ世代にとってAIは、もはや“専門ツール”ではなく、検索エンジンでも、先生でもない。『ちょっと賢い友達』の延長線上にいる存在だ。
「AIは彼らにとって、“生活の自然な一部”なんです。勉強も人間関係も、時には恋愛まで相談する。この感覚は、私たちの世代とはまったく違います」
だからこそ、AI PCで“自然なAIとの付き合い方”を最初に体験させることが重要になる。
「学生時代に “AIって便利だな” “PCで使うとこんなに自然なんだ” と感じてもらえれば、その後の10年以上、彼らはAIを前提に働くようになっていく。だからこそ、最初の接点が大切なんです」

Z世代にとって、AIはすでに“恋愛相談をする存在”だ。そのAI体験を、PCというより高度な情報環境へ引き上げることで、マイクロソフトは「AI PCを使うのが当たり前の世代」を育てようとしている。
「レポートを書くにも、プレゼン資料を作るにも、就活で自己PR文を書くにも、『Copilotにまず叩き台を出してもらう』のが当たり前になっていく。そういう学生生活を送った方が社会に出ると、“AIなしのPCには戻れない”と感じるはずです」
「日本の若い世代は、本当に忙しいんです」と當野氏は続ける。
「アルバイトもあれば、サークルもあるし、インターンに行く人も増えている。そこで“時間を買い戻す道具”としてAI PCを使ってもらえれば、もっと自分のやりたいことに時間を使えるようになる。その体験を学生のうちに届けたいですね」
起業家目線でいえば、これはこれは単なる製品販売ではなく、人生に長く寄り添う“パートナー選びの入り口”ともいえる。最初に強烈な価値体験を届けることで、長期のファンを獲得する──マイクロソフトはAI PCでそれを実践しようとしている。
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