“アップルどっぷり世代”をどう動かす?――Windows生誕40周年を迎えたマイクロソフトの“AI戦略のカギ”とは
「AI PC」とは何者か──40TOPS NPUがつくる“第3の頭脳”
日本はスマホ市場で長らくiPhoneが強く、直近の統計でも出荷台数シェアの5割超を押さえ、14年連続トップという“アップル王国”だ。
Macと組み合わせたこの「心地よい囲い込み」のなかで、WindowsやAndroidのオープンなエコシステムは、なかなか生活者の実感として届いていない。
このアップルのiPhoneとMacの組み合わせについて、「日本のお客さまは、一度“これが便利だ”と感じると、そこから長く使い続ける傾向があります。まさにその成功例だと思います」と分析するのは、日本マイクロソフト業務執行役員 コンシューマー事業本部 デバイス戦略本部 本部長、當野喬之氏だ。
「一方で、その快適さゆえに“他の選択肢を比べてみる”機会が少なくなっているのも事実です」と続ける。
そこで、日本で本格的な立ち上がりを迎えつつある「AI PC」と、それを普及させようとするマイクロソフトの戦略について話を聞いてみた。

では、そのWindowsを40年開発し続けるマイクロソフトは、どうやって日本の“アップルどっぷり世代”に「AI PC」の価値を伝え、行動を変えようとしているのか。
そもそも、マイクロソフトがいう「AI PC」とは何か。同社は「Copilot+ PC」という新しいカテゴリを打ち出す。
これは、Windows 11をベースに、40TOPS NPU、毎秒40兆回以上の計算ができるAI専用の“第3の頭脳”、NPU(Neural processing unit)を搭載し、画像生成やリアルタイム翻訳などのAI処理をPC側で高速にこなせるマシン群だ。
「AIの処理をクラウドだけに任せるのではなく、PCの中にも“もうひとつの頭脳”を持たせる。それがNPUです」と、當野氏。
「CPUとGPUに加えてNPUが入ることで、PCの中に三つの役割がはっきり生まれます」
•CPU=汎用計算
•GPU=映像・3D・並列処理
•NPU=AI専用の“第3の頭脳”
という役割分担が、PCの中で明確になってきたのだ。
これまで「AIを使う」というと、ブラウザを立ち上げてChatGPTなど、それぞれのサイトを開く、あるいは専用アプリを起動するといった“モード切り替え”が必要だった。
しかしAI PCは、OSそのものの裏側でNPUが常時動き続け、「翻訳」「要約」「文章提案」「画像理解」などをアプリ横断で支えるインフラとして機能する。
「理想は、“AIアプリを使う”という感覚が薄れていくことです」と當野氏は語る。
「いつものアプリを開いているだけなのに、その裏でAIが静かに支えてくれている。その状態こそが、私たちが考えるAI PCのゴールです」
例えば、「Web会議の議事録を自動要約してOneNoteに整理する」「長文メールの内容を一瞬でかみ砕いてくれる」「スクリーンショット上のボタンを指して『この設定どう変えればいい?』と聞ける」など、“地味だけど確実に助かるタスク”を、あらゆるアプリの裏側で支える。それがAI PCの本質だ。

日本はなぜ「アップルどっぷり」になったのか
日本市場の特徴をもう一度整理しておきたい。スマートフォンに関して言えば、日本は長年iPhoneが圧倒的に強く、直近の統計でも出荷台数で約半分を押さえている。
とはいえ、純粋に「スペックや価格を比較した結果」というよりも、「みんながiPhoneだから」「メッセージやAirDropが楽だから」「家族や友人もみんな同じだから」といった周囲との同調や、家族・友人との“つながり”を重視する意識が働き、アップルのエコシステムに深く浸かっている人が多いのが実態だ。
アップルのプロダクトや体験に対し一定の評価をする當野氏である一方、
「日本では“最初に触れるデバイス” と連携する仕組みを選ぶ傾向にあります。ここで一度“比較する機会”をつくれるかどうかが、私たちの勝負どころだと考えています」
家電の世界でも、“最初の一台”がその後のブランド選好を長く決めてしまうことはよくある。冷蔵庫でも掃除機でも、最初に出会ったメーカーをそのまま買い替え続けるユーザーは少なくない。PCやスマホも、まさに同じ構造になっていると考えていい。
そのなかでマイクロソフトは、次の3つの方向性で、この「アップルどっぷり構造」を少しずつほぐしていこうとしている。
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