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70〜80年継ぎ足し続けるデミグラスソースの“意外な隠し味”は? 至福のふわふわハンバーグが味わえる『洋食キムラ 野毛店』【何度でも行きたい町洋食#20】

人気No.1の柔らかハンバーグ、ソースの隠し味は戦後ならではの思いつきだった!?

 多くの飲食店が連なる、横浜でも最大級の飲食店街、野毛。食べ歩きや飲み歩きなどを楽しむ人たちで活気のある街にも、名店と呼ばれる洋食の店があります。

 それは「洋食キムラ 野毛店」。初めて食べてもどこか懐かしい美味しさに。近隣で働く人はもちろんのこと、親子、孫と3世代、4世代で通う常連さんも多いお店です。

「祖父から数えて3代目になります。祖父は最初、図面をひく仕事をしていたんですが、思ったことを何でもやりたい人だったみたいで。祖父の友人に銀座でレストランをやっている方がいらして、そこに潜り込んで色々習い、関内に1938(昭和13)年に『ランチカウンター』という店を開いたのが最初になります」と話すのは野毛店代表の貴邑(きむら)智さん。

「戦争末期になるとカタカナが使えなくなったので『洋食木村』という名前に変え、営業を続けていたのですが戦後になると米軍に接収されてしまって。現在、中区花咲町に『花咲町店〜隠居亭〜』という店舗があるのですが、そっちに移って「洋食キムラ」になったんですよ」

カッパをモチーフにした看板。実はこのデザインにも店の歴史が
カッパをモチーフにした看板。実はこのデザインにも店の歴史が

 野毛にお店ができたのは平成になってから。ですが店内の雰囲気は昭和の名残を感じさせる、ちょっとレトロな空間です。

「祖父はとても酒が好きで、食べるのも好きだった。なので図面ひきの仕事はすっぱりやめて、飲食業に切り替わったんです。みんなと一緒に食べるのが好きだったみたいですね」。

 現在店内で提供される料理は、戦後から基本的にレシピは変わっていないとのこと。洋食の激戦区横浜で、何十年も愛され続けている「洋食キムラ 野毛店」の、おすすめの料理を3品紹介します。

この隠し味は洋食店で唯一無二! 看板メニューの「ハンバーグ」

 洋食キムラの看板メニューといえばハンバーグ。セットの場合プチサラダとパンまたはライスが付いてきます。単品注文の場合1720円。

「いちばんの特徴は柔らかさ、ですね。ご年配の方が安心して味わえるぐらい、箸で切って食べられる柔らかさと、ハンバーグが今の形になってからずっと、デミグラスソースを継ぎ足し、継ぎ足しで作ってきていることですね」

 戦後からと考えると、およそ70〜80年の継ぎ足し。すごい! ちなみに、生卵を入れるようになったのは?

ハンバーグセット1910円。シェルの形の器に生卵と一緒なのは昔から
ハンバーグセット1910円。シェルの形の器に生卵と一緒なのは昔から

 「祖父と父がやっている時からもうこの形だったらしいです。卵は高タンパクかつ高栄養食でもあるので、卵を入れることに祖父がこだわったようです。それに、卵を入れると、シェルの形の器の中で、真珠みたいに見えるでしょ」。なるほど! 

 肉は牛7:豚3の合挽肉。多種類のスパイスを一緒に混ぜ込んでいます。

「練り込んだものを、成型した後に表面だけサッと焼いて、それを冷蔵庫で寝かせています。そうすると、混ぜたスパイスが中の肉やパン粉と馴染み、尖ったものがなくなり落ち着くんですよ」

生卵を崩さないよう、そっとナイフを入れると、中からしっとりとした肉が
生卵を崩さないよう、そっとナイフを入れると、中からしっとりとした肉が

 注文が入ったら、冷蔵庫から出して本焼き。中まで火を通し、ソースに煮込んで提供します。

 そして、驚きなのがこのソース。

「隠し味に梅酒が入っているので、ちょっとだけ甘酸っぱい感じになるんです」

 ハンバーグソースの隠し味に梅酒。他では聞いたことのないレシピです。

「祖父がお酒好きだったからですよね。戦後はものがなかったため、洋酒も手に入らなくなり、ソースが仕込めない、となった時に『よし、あの漬け込んだやつを使おう!』と入れたのが梅酒だったんです。なので今も梅を漬けて梅酒を作っています」

 洋酒が入手できないから使った自家製梅酒が今や店の味に。でもこのほのかな甘酸っぱさを感じるソースが、ほろほろに柔らかいハンバーグや卵と合う! 思わず真似したくなる隠し味です。

大きめの野菜が入っているので英国風!「ビーフシチュー英国風」

「メニューを考えたのが祖父なんですが、大きめの野菜が入っているから『英国風』と名付けたのではないかと思います」

 というビーフシチュー。大きめにカットされたタマネギやニンジンなどにポーチドエッグ、そしてグリーンピースが飾られています。

「牛バラ肉を紐で縛って、香味野菜と一緒に5〜6時間漬け込んだのちコトコトと煮込んで柔らかくして、オーダーが入ってから焼いてお出ししているんですよ」

トロトロ、つやつやの牛肉。口に入れるとトロッとほぐれるような食感
トロトロ、つやつやの牛肉。口に入れるとトロッとほぐれるような食感

 これは、ゴハンにするかパンにするか悩む。実際、どちらを一緒に頼む人が多いですか?

「そうですね。やはりそこはお好みなので、何とも言えないんですけど。最後にご飯を入れて一緒に食べることもできますし、パンだと最後に全部拭き取って食べる方もいますね」。うわ〜、どちらもたまらない!

 ちなみに、ポーチドエッグを割るタイミングはいつがいいんですか?

「う〜ん、そうですね〜。最初は普通に食べていただいて、途中から割ると、黄身がソースに混ざってまろやかになるので、2度美味しい、みたいな感じでしょうか」

 なるほど。黄身は味変用に、途中から楽しむことにします!

まさかの理由で2枚になった、シェフ泣かせの「ポークカツレツ」

 そしてメニューを見てちょっと気になっていたのが「ポークカツレツ」。

「上質のポークをなんと2枚の、シェフ泣かせのメニューです」と書かれています。これは一体?

「実は父の代の時に葉物が高騰した時があったんです。セットで出すサラダの量が少なくなった時に、『サラダの量が少ねえじゃねぇか』ってお客様からクレームが入ったんですよ。

 それでカチーンときた父が、『だったら2枚つけてやるよ!』ってカツレツを2枚出すようになったんです。

 その後、葉物の価格は落ち着いたんですけれど、もう2枚で出していることが周囲に知れ渡っているから、引っ込みがつかなくなって」

ポークカツレツ2430円(プチサラダ付き)、サラダとパンまたはライス付きのセットの場合2600円
ポークカツレツ2430円(プチサラダ付き)、サラダとパンまたはライス付きのセットの場合2600円

 クレームからの応戦。だからカツレツが2枚になり、シェフ泣かせのメニューになってしまった、ということなんですね。食べる側としては、文句をつけてくれたお客さん、ありがとう〜! という気持ちになってしまう、カツのダブルです。

 2枚あるから、味だって色々楽しめる。まずはそのままを楽しんで、2口目は自家製マスタードソースをちょこっとつけて、その次はソースをかけて。

 ゴハンで口の中をリセットして、またもう一度マスタードをつけて。塩をパラっとふってシンプルに味わうのも良さそう。カリッと揚がった衣に脂の旨みを感じる豚肉。幸せな気持ちになれます。

「冬場はグラタンなど温まるメニューもおすすめです。カニコロッケもぜひ」(野毛本店代表の貴邑 智さん)
「冬場はグラタンなど温まるメニューもおすすめです。カニコロッケもぜひ」(野毛本店代表の貴邑 智さん)

 ほかにも、マヨネーズから自家製、一から作るポテトサラダ1080円やスペイン風オムレツ2080円、エビのフライ2380円など、魅力的なメニューが色々。グラタンは王道のマカロニグラタン1620円とライスグラタン1520円があり、どちらにするか真剣に悩みそうです。

 そして、横浜までなかなか行けない人には、クール便で地方発送もやっているので、真空パックのハンバーグや牛すじのシチューなどを家で楽しむこともできます。

 テイクアウトまたは発送でおすすめなのはドレッシング900円。これがすっごく美味しい!

 酢とコショウ、そしてマスタードが絶妙なバランスです。店内が満席で入れないという時でも、これだけは買って帰りたい! 一気に洋食キムラのファンになってしまう味わいです。

 これからは、野毛で飲み歩き前にここにきて、食事を楽しんでからのドレッシングテイクアウト。または0次会としてここでポテトチサラダとビールやワインで軽く乾杯するか。横浜に来る楽しみが、またひとつ増えました!

洋食キムラ 野毛店
住:神奈川県横浜市中区野毛町1-3
TEL:045-231-8706
営:11:30~14:00(LO)、17:00~21:00(LO20:30)、土曜11:30~21:00(LO20:30)、日曜・祝日11:30~20:30(LO20:00)※夜の営業はハンバーグが売切れ次第終了、土、日、祝日は仕込みの為15:00~17:00の時間を閉める場合あり
休:月曜(祝日の場合翌営業日)、第1火曜

Gallery 【画像】全部食べたい…洋食キムラの名物料理を画像で見る(15枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス

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