VAGUE(ヴァーグ)

カオスな頭を歩いて整える。KIWAME TOKYOの「38mm薄型フィールドウォッチ」という選択──浅草にて

こんがらがった思考を散歩で整理する

 頭の中が散らかっているときは、一時間だけ歩く。

 締切、広告案件、記事ビューの数字、次の企画。編集の仕事は常に同時進行だ。ただ机に向かい続けても思考は整理されない。むしろ鈍る。

 そんなとき、私は歩く。

 場所はどこでもいい。スマートフォンはポケットに入れ、腕時計だけを見る。デジタルではなく、針の動きを確認する。

 機械式の秒針は急がない。一定のテンポで進む。そのリズムに歩幅が合ってくると、思考の速度も自然と落ちる。

 散歩は運動というより、思考の整理と再構築だ。実際、歩きながら企画の骨子が決まることは少なくない。

 今回、その時間をともにしたのが、KIWAME TOKYOの「IWAO GINKAI(銀灰)」である。

さまざまな人が行き交う休日の浅草は朝から大混雑していた
さまざまな人が行き交う休日の浅草は朝から大混雑していた

全体に真面目で、かつダイヤルへのこだわりが特徴的

 KIWAME TOKYOは浅草で生まれたマイクロブランドだ。

 創業者の渡辺雅己氏は、30年以上にわたり海外のラグジュアリーウォッチを日本市場に紹介してきた人物。

 世界の独立系ブランドを見てきたからこそ、「なぜ日本には文化や思想を背景に持つマイクロブランドが少ないのか」という問いに行き着いた。

 その答えのひとつが浅草だった。

 伝統を守りながら現代も受け入れる町。流行に迎合せず、しかし閉じない。KIWAME TOKYOは“手頃な日本製”をうたうのではなく、過剰なプレミアムや人工的な希少性に頼らない。適正な価格で、構造的に誠実な時計をつくる。

 海外マイクロブランドが大胆なストーリーや強い造形で存在感を出すのに対し、KIWAMEは抑制的だ。その代わり、細部で勝負する。

薄型フィールドウォッチとして使いやすさバツグン
薄型フィールドウォッチとして使いやすさバツグン

 「IWAO GINKAI」は38mm径、厚さ9.5mm、ラグ・トゥ・ラグ46mm。手首への収まりは良好で、ジャケットにも干渉しにくい。20-16mmのテーパードストラップが軽快な印象をつくる。

 ムーブメントはMiyota 9039。ノンデイト仕様でダイヤルの世界観を崩さない。10気圧防水、サファイアクリスタル搭載。スペックは堅実だ。

 外装はヘアラインとポリッシュを切り替え、エッジは明確。価格帯を考えれば仕上げは丁寧で、過不足がない。

 そして主役はダイヤルである。

 中央の岩肌テクスチャーは、単なる模様ではない。凹凸が光を受けて陰影を生み、外周のサテン仕上げとのコントラストで奥行きを出す。

 アラビア数字とダイヤモンドカットバーインデックスを交互に配置。視認性を確保しつつ、光を受けた瞬間に鋭く反射する。

 12時位置のアーチ状ロゴプレートは視覚的な重心を整え、低く設計されたルーレットがダイヤルを澄んで見せる。

 焼き入れによるスティールブルーの秒針は、銀灰の世界に控えめなアクセントを加えている。

観光客でごった返す仲見世通りも、一本路地に入れば静かに…
観光客でごった返す仲見世通りも、一本路地に入れば静かに…

「浅草の時間」を感じることで整う

 「IWAO GINKAI」を巻いて浅草を歩く。

 雷門前は想像以上にカオスだった。インバウンドは完全に戻り、外国語が飛び交い、スマートフォンが高く掲げられている。人の流れは絶えず、情報量も多い。

 思考が整理されるどころか、自分の頭の中の混乱をそのまま外側に映し出したような光景だ。

 しかし仲見世を抜け、一本裏へ入ると空気が変わる。

 観光客の波は少し遠のき、古い建物や控えめな看板が目に入る。時間の密度が変わる感覚がある。

浅草を代表する人力車も楽しそうにさまざまな人が利用している
浅草を代表する人力車も楽しそうにさまざまな人が利用している

 隣を人力車が駆け抜けていく。軽快な足音と車輪の音。観光の一部でありながら、日本古来の文化としてこの町に根付いている存在だ。こうしたものは、できれば残り続けてほしいと思う。

 さらに歩き、隅田川方面へ抜ける。視界が開け、風が抜ける。

 ここでようやく、散歩本来の効果が出てくる。

 時間を見る。

 岩肌ダイヤルに光が乗り、インデックスが反射する。ブルーの秒針が一定のテンポで進む。

 カオスの中でも、路地でも、川沿いでも、針の動きは変わらない。

 時計が整えてくれるわけではない。ただ、腕に基準があると、判断の順番が自然と定まる。

「IWAO GINKAI」は、極端な個性で目立つ時計ではない。

 38mmというサイズ、9.5mmの薄さ、堅実なムーブメント。どれも過度ではないが、バランスがいい。

 浅草のカオスから川沿いまで歩き、もう一度時間を見る。

隅田川に流れると急に視界が開ける
隅田川に流れると急に視界が開ける

 秒針は、変わらず一定のテンポで進んでいる。

「あっ、ひらめいた。今日のランチは天丼にしよう」

 さっきまでまとまらなかった企画の順番も、なんとなく決まっている。

 時計のおかげとは言わない。ただ、歩いたことと、この銀灰が腕にあったことは、無関係ではない気がする。

 浅草フィールドを一人で歩いた、その時間は思いのほか実り多いものだった。そして、この一本は、そんな時間によく似合っていた。

製品仕様
「KIWAME TOKYO ASAKUSA IWAO GINKAI/SUMI」
・品番:KT101(GINKAI)、KT102(SUMI)
・価格(消費税込):各9万2400円
・ケースサイズ:38mm径・9.5mm厚
・ケース素材:316L ステンレススチール
・ストラップ:イタリア製カーフレザーストラップ、クイックリリース仕様
・風防:内面無反射コーティング付きサファイアクリスタル
・ムーブメント:機械式 自動巻ムーブメント 日本製 Miyota キャリバー9039(調整済み)
・防水性能:10気圧防水

Gallery 【画像】ブラックもカッコいい! 浅草発のフィールドウォッチを画像で見る(16枚)

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