VAGUE(ヴァーグ)

ミナミの近くにある“昭和の原風景” 大都会の片隅にぽつんと存在するローカル線 南海・汐見橋線の「秘境駅」とは

タイムスリップしてきたかのような佇まいの秘境駅

 岸里玉出駅から2両編成の電車に乗り込み、3つ目の駅でドアが開くとそこが木津川駅です。

ホームに降り立った瞬間、その静かさにちょっと驚きます。周囲の都会の喧騒からぽっかり切り離されたかのような、まるで昭和の時代にそのまま置き去りにされたかのようなノスタルジックな佇まいです。

駅は島式1面2線のホームを備えています。ホームから出口へ向かおうと歩を進めると、目の前に現れたのは下り線をまたぐ構内踏切でした。この小さな踏切にはきちんと遮断機と警報機が備え付けられています。

南海・汐見橋線「木津川駅」。都市部の駅ではほぼ見ることのなくなった構内踏切が設置されている
南海・汐見橋線「木津川駅」。都市部の駅ではほぼ見ることのなくなった構内踏切が設置されている

古い無人改札を抜けて駅の外へ出てみると、そこに広がっていたのは驚くほど静まり返った風景。 駅前だというのに商店の姿はありません。

 小さな空き地の向こうには、工場や倉庫が立ち並び、完全に事業用地区といった趣です。

少し期待を込めて工場沿いの道を歩き、表通りまで出てみましたが、やはりふらっと立ち寄れそうなお店は見当たりませんでした。

今度は向きを変え、線路を渡って駅の東側エリアへと足を延ばしてみることにします。

しばらく歩いていくと「北津守公園」に行き着きましたが、この周辺にもお店はありません。視線を上げると、遠くに阪神高速15号堺線の巨大な高架が見えるばかり。改めて振り向いて駅の方向を探してみても、そこに「木津川駅がある」と知らせてくれるような案内看板すら見当たりませんでした。

実際にこの足で周囲を歩いてみて、ふと疑問が湧いてきます。

 なぜ木津川駅はこれほどひっそりとした場所にポツンと存在し続け、汐見橋線もまた大阪の中心部近くで30分に1本というのペースを守り続けているのでしょうか。

その答えの背景には、汐見橋駅と岸里玉出駅という両端の立地条件があります。どちらの駅に到達したとしても、大阪の主要中心部へ出るにはさらなる乗り換えが必要となり、交通ルートとしては使いづらい側面があるのです。

木津川駅の東側に広がる住宅街を歩くと実感するのですが、徒歩圏内にあるJR大阪環状線の芦原橋駅や、環状線と大和路線が交差する今宮駅を利用したほうが、キタやミナミへ出かけるには圧倒的にスムーズで便利なのです。

一方で、駅の西側は工場や倉庫が密集するエリアとなっており、そもそも日常的に電車を利用する住民が育ちにくい環境にあります。

南海汐見橋線汐見橋駅
南海汐見橋線汐見橋駅

最近は、工場の跡地が再開発されて大型マンションに変わる光景をよく目にしますが、このエリアでは少し事情が異なるようです。30分に1本という列車の頻度に加え、スーパーなど日常のお買い物スポットも周辺に乏しいため、住宅地としての開発が進みにくいという側面があるのかもしれません。

2両編成の小さな電車が、のんびりと行き来する汐見橋線。その途中に、忘れ去られたかのようにぽつんと佇む木津川駅。 それはまさに、大都会・大阪の真ん中にぽっかりと取り残された“時間のエアポケット”のような場所でした。

Gallery 【画像】大阪市内にある「秘境駅」を写真で見る(27枚)
プロだけじゃない アマチュアこそ試したいスリクソンの新アイアン
植村祐介
植村祐介
ライター&プランナー
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。

page

  • 1
  • 2

VAGUEからのオススメ

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

RECOMMEND