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カーデザインの巨匠が多彩な工業製品を生み出せる理由「自動車デザイナーの仕事」は“つぶしが効く”のか!?

イアン・カラム氏の手によるラウンジチェア

 フォード、アストンマーティン、ジャガーなどでさまざまな車種のデザインを手がけたイアン・カラム氏が、先ごろ50脚限定のラウンジチェアを発表しました。

イアン・カラム氏がデザインを手がけた「カラム・ラウンジチェア」(C)CALLUM LOUNGE CHAIR
イアン・カラム氏がデザインを手がけた「カラム・ラウンジチェア」(C)CALLUM LOUNGE CHAIR

 カラム氏は現在もジャガーのブランドアンバサダーを務めていますが、ジャガー・ランドローバー社は退職し、自身のデザイン事務所、カラム・デザインズを立ち上げています。

 カラム・デザインズでは、彼自身がデザインしたアストンマーティン「ヴァンキッシュ」をレストモッドした「ヴァンキッシュ25」やウイスキー、最近ではポルシェ「911」のレストモッドを手がけるシンガー・デザイン・ビークルのインテリアも担当している模様です。

 そんなカラム・デザインズが発表したのが、一人がけの「カラム・ラウンジチェア」。合板、カーボンファイバー、本革で構成されるラウンジチェアは、どことなくイームズのラウンジチェアを想起させます。一人がけのラウンジチェアとして、イームズのものは究極のデザインだったのでしょうね。

 イアン・カラム氏が手がけたラウンジチェアは直線と曲線が融合していて、イームズのデザインを現代版に進化させた雰囲気すら漂っています。

●多彩な製品デザインを手がけるカーデザインの巨匠たち

 そういえば、自動車デザイン界の巨匠たちは、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロ氏や、KEN OKUYAMA DESIGNのケン奥山氏(奥山清行氏)もイスを手がけたことがありますね。

 ジウジアーロ氏は、オカムラのオフィスチェア「フィノラ」をはじめ、セイコーの腕時計「スピードマスター」、40代男性なら誰もが憧れたブリヂストンの自転車「モンテカルロ」、ニコンのカメラ「F3」など幅広いプロダクトデザインを担当した実績があります。

 ケン奥山氏は、イナバインターナショナルのオフィスチェア「Xair」、「Yera」、「Swin」のほか、パントンチェアを想起させる天童木工の「ORIZURU」といった家具のほか、鉄器や食器、腕時計などなどを担当。

 それだけにとどまらず、北陸新幹線、山形新幹線、秋田新幹線、豪華列車「トランスイート四季島」などの鉄道車両、大阪シティバス、ヤンマーのトラクター、長崎市のロープウェイ、ヤンマー本社建物、大阪市高速電気軌道の駅など、多岐に渡ってデザインを手がけています。

 BMW傘下に収まってから初めて投入されたMINIや、フェラーリの「F430」や「FXX」、マセラティ「MC12」、マクラーレン「MP4-12C」などを指揮したフランク・ステファンソン氏は、現在、ドイツのeVTOL(電動垂直離着陸機)メーカーであるリリウム・エービエーションのクリエイティブダイレクターに就任。自身のデザイン会社から初となる腕時計「コスモス」をリリースしました。250ドルとリーズナブルに感じる販売価格は初回スペシャルだからでしょうか?

 アルファ ロメオの「アルファ164」、「GTV」、ランチアの初代「イプシロン」、マセラティ「3200GT」のインテリアなどを手がけたエンリコ・フミア氏は、日本のユピテル工業で「レーダー探知機」や「カーセキュリティ」を担当。そのほか、住宅までも手がけていたようです(ホームページの更新は2012年から停止している模様)。

 ここにご紹介した元カーデザイナーたちは、“デザイナー”として才能が優れていたからこそ対象がクルマだけにとどまらないのかもしれません。それにしても皆さん、守備範囲が広いですね。

 カーデザインには美しさ、機能性、実用性、安全性、空力特性などさまざまな要素が詰まっているからこそ、工業デザイナーとしてのノウハウが濃くなるのでしょうか……。機会があれば皆さんから話をうかがってみたいものです。

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