日本再導入されるトヨタ新「ランドクルーザー70」はなぜ乗る人を選ぶ? それでも他のクルマでは味わえない圧倒的な個性とは
快適とは無縁の“プロフェッショナルの道具”の70系
それゆえに、ランクル70系の構造は300系や新型250系と比べると非常にシンプルです。

まず、電子デバイスがほとんど付いていません。300系や250系の電子部品の精度、耐久性は高いようですが、70系が活躍しているような僻地では、修理・交換をする時の部品供給のことも考えられています。また、自分で交換できるかという作業性も考慮しなければなりません。
たとえば、70系が前後リジッドアクスル式サスペンションを使っているのは、堅牢性と走破性のため。リアはリーフスプリングですが、これはスプリングが破損したとしても、最悪1枚でも無傷なら走行を続けられるからです。
リアゲートが7:3の分割になっているのは、オフロードで車体が大きく傾き、アッパーボディが歪んだ状態でも、ゲートの開閉できるようにという配慮からです。もちろん、ドアを大きく開けられない狭い場所でも、中のモノを出し入れできるという理由もあります。
インテリアも実にシンプルです。新型になってから、シートは多少グレードアップした感がありますが、その他の部分はとても令和時代のクルマとは思えません。
エアコンはマニュアル式、サブトランスファーもレバー式で自分で操作しなければなりません。クルマが勝手にやってくれるという部分はひとつもありません。
前後デフロックが標準装備となっていますが、デフロックがどういう機能か、オフロード走行とはどんなものかという知識がない人にとっては、無用の長物であり、イマドキのSUVのようなつもりでオフロードに入れば、非常に厄介な事態になるかもしれません。
※ ※ ※
70系は間違いなく、“プロフェッショナルの道具”。だからこそ、デザインから放たれるオーラが人々を魅了するのだと思います。
ですがプロフェッショナルのツールを本当に楽しむことができるようになるには、オーナーにも高いスキルや相応のメンタルが要求されます。
乗り心地が良くなったとは言え、前後リジッドアクスル式サスペンションの四輪駆動車は、イマドキのクルマと違って高速道路でドライブするのにコツが必要です。ステアリングを中立にしておけば真っ直ぐ進むというものではありません。
6速ATになったとは言え、300系のように高速道路をストレスなく走れるわけではありません。そもそも70系は、牽引のニーズを考えて、ギア比が低めに設定されているからです。
新搭載されたディーゼルユニットに関しても、以前よりは静粛性が向上しているとはいえ、そもそも遮音性は前時代的なレベル。150系プラドとは全然違いますし、むしろハイラックスのほうが静かでしょう。
それでも、70系は最強なランドクルーザーであり、四輪駆動車です。300系、250系とランドクルーザーの世代が新しくなっているのに、いまだ世界の“現場”は70系を必要としており、いまだ生産・販売されていることが何よりの証拠と言えます。
新型70系は日本向けには少量生産で、カタログモデルとは言え手に入りにくいクルマです。ピックアップモデルのリニューアルも市井で取り沙汰されていますが、もしあの顔で登場したら、コアなファンは飛びつきそうです。もちろん、こちらは1ナンバーのままですが。
ランクル70系に過度な期待は禁物です。イマドキの安全装備もなければ、快適とは縁のないクルマです。もし、今どきの最新SUVのつもりで新しい70系を買おうと考えているなら、後悔する可能性もあるので諦めることです。
それでもやはり欲しい! と思ったら、買い時かもしれません。何かと不便は強いられることと思いますが、じつは1度乗ったら簡単には別れがたい、最高のクルマなのです。
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