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5速MTに換装されたAMGの“伝説のクーペ”がオークションに登場! イタリアの富豪が所有した「ハンマークーペ」はなぜ格安で落札された?

イタリアの富豪が所有していた「ハンマークーペ」がオークションに

 イタリアを代表する富豪だったラウル・ガルディーニ氏。そんなガルディーニ氏がかつて所有していたAMGの「300CE 6.0-4V ハンマー ワイドバージョン」が、2025年3月6日〜7日にかけてアメリカ・アメリアアイランドで開催されたグッディング&カンパニーのオークションに出品され、注目を集めました。

C124型の「300CE」をベースとする“ハンマークーペ”ことAMG「300CE 6.0-4V ハンマー ワイドバージョン」(C)ClassicDriver.com
C124型の「300CE」をベースとする“ハンマークーペ”ことAMG「300CE 6.0-4V ハンマー ワイドバージョン」(C)ClassicDriver.com

 ガルディーニ氏は1980年、義父であるセラフィノ・フェルッツィ氏が手がけていた家業の指揮を執るようになり、フランスの名門製糖・製紙会社であったベギャン・セ社を買収。後にヨーロッパ有数の製糖会社に育て上げました。

 その後ガルディーニ氏は、モンテディソン化学グループの株式を買い占めて1987年までにグループの42%を取得。国営企業エニに次ぐイタリア第2の産業グループに育て上げた経歴の人物です。

 ただし1993年に、イタリアでタンジェントポリ(“賄賂の街”を意味するイタリア語)と呼ばれた政財界を揺るがす事件への関与が明るみになり、自殺したのだそう。もっとも財界、政界、マフィアも絡む深い闇ゆえに、他殺だったのではないかという疑惑が今でも拭いきれていないようです。

 そんなガルディーニ氏がかつて所有していたAMGの「300CE 6.0-4V ハンマー ワイドバージョン」が、グッディング&カンパニーのオークションに登場。予想落札価格として掲げられた額は150万ドル~200万ドル(約2億1517万円~2億8702万円)でした。

 グッディング&カンパニーの車両解説によると、ガルディーニ氏の“ハンマークーペ”は約25台が製造された車両の中の1台とのこと。メルセデス・ベンツのデータカードによると、当該車両は「300CE」として誕生。シャシーナンバーはWDB1240501A833114、製造番号は8165761で、1988年1月にウンターテュルクハイム工場をラインオフしたようです。

 アンスラサイトグレーメタリックのボディに黒革のインテリアをまとった当該車両は、そのままアファルターバッハにあるAMGのワークショップへと送られました。

 ワークショップに到着後、「300CE」は“ハンマー”仕様に改造され、新たなシャシーナンバーとしてAMG124.22416026が与えられました。

 AMG製の排気システム、ワイドボディキット、3ピースの「エアロIII」ホイールが装着されたほか、内装においては320km/hのスピードメーター、サイドサポートが強化されたレカロ製バケットシート、小径のMOMO製ステアリングホイールが取りつけられました。

 その際、エンジンにはどこまで手を入れられたのか、グッディング&カンパニーの車両解説には記述がありません。

●ヒストリーも明確な“バリモン”ながら予想外の落札価格に

 1989年8月、当該車両はガルディーニ氏の元に納車されました。

 彼はイタリアのラヴェンナで登録し、当初は「ガルディーニS.r.l.」名義で、1993年には彼が持つ別の企業体「セルヴィツィ・ジェネラーリ」名義となっています。

 なお、ガルディーニ氏の所有期間中、この“ハンマークーペ”は二度AMGへと送られ、アップグレードが図られています。

 なかでも1989年には5速MT(同モデルで唯一のMT仕様とされる)に換装され、1992年に370馬力を誇る現在の6リッター“M117/9エンジン”が搭載されたそうです。

 1993年のガルディーニ氏の死後、当該車両は1996年と1997年のイタリアF3選手権にエントリーしていたエンメヴドゥエ・アッソスポルト・レーシングS.n.c.に売却。その後、イタリア・ブレシアのエレナ・ファローニ氏が1994年から2014年まで所有していました。

 そして2015年以降、当該車両はドイツの個人コレクターやアメリカ人の現オーナーの元へ。現オーナーは当該車両の由来を調査するために多大な労力を費やしたそうです。

 出品車両に付属するファイルには、イタリア自動車クラブの登録記録やメルセデス・ベンツの工場記録のコピーが含まれています。

 また当該車両は、AMGクラシックとMKBモトーレン・マニュファクトゥア(AMGの共同創業者のひとりであるエルハルト・メルヒャー氏の会社で、1969年から2000年までのAMG車やメルセデス・ベンツ車のレストアを得意とする)によってAMGのアーカイブで照合されたほか、物理的にも調査され、オークションにはAMGクラシック・コンバージョン証明書が付属しています。

 現在の走行距離は5万7323kmと少なく、写真を見てもいわゆる“バリモン”の雰囲気。過去に4速AT車が80万ドル(約1億1481万円)近辺で落札されたことがあったことから、先述した予想落札価格はさすがに「ふっかけすぎ」と思いつつも、「5速MT車なのでもしかしたら」と傍観していたところ、最終的には66万5000ドル(約9543万円)での落札となりました。

 予想落札価格の半分に満たなかったのは、ガルディーニ氏の死に匹敵するほどのミステリアスです。ここへきて富裕層の財布のひもが引き締まりつつあるのでしょうか?

Gallery 【画像】「えっ…!」トランスミッションは5速MTに換装! これが伝説のAMG“ハンマークーペ”です(20枚)

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