軽やかな走りがクルマ好きたちを魅了! プジョーのコンパクトハッチバック「106」の根強い人気の秘密とは?【今こそ乗っておきたい名車たち】
流通量は減少したものの欲しい人は減らない
今でこそ1000万円以上の値がつくこともある“ハチロク”ことAE86型のトヨタ「カローラ レビン」と「スプリンター トレノ」ですが、平成の初めごろは「地元のセンパイから10万円くらいで無理やり買わされるクルマ」というカテゴリーに属していました。時代やモノの価値というのは、変われば変わるものですね。

そんなAE86と同様に、1995年から2003年まで販売されたプジョーのコンパクトハッチバック「106」も、さすがに「センパイから10万円で……」ということはなかったものの、2000年代後半ごろは「数十万円も出せば、まあまあいい中古車が買える」というニュアンスのクルマでした。
しかし、この原稿を書いている2025年の今、プジョー「106」の中古車平均価格は約165万円まで高騰。ちょっと気の利いたフルノーマル車を買おうとすると、おおむね200万円は必要という状況になってしまいました。
プジョー「106」の日本仕様は、1.6リッターの自然吸気エンジンに、ごくごく普通のサスペンションを組み合わせた全長約3.7mの小さなハッチバックでした。
その相場が高騰している理由を挙げるならば、まず第一に「物件数は減少しているのに、欲しいと思う人の数はさほど減っていない」という現状があります。
プジョー「106」は、今も昔も「巷で大人気!」という類のクルマではなく、「好きな人は好き」というニュアンスの地味なクルマ。前述したとおり、特にスゴいエンジンを積んでいるわけでも、凝ったサスペンションシステムを採用しているわけでもありません。
また、ニュルブルクリンクの北コースで華々しい実績を残したわけでもないため、「106」を欲しいと思う人の数など……今も昔も……たかが知れているのです。
しかし、その“たかが知れている人の数”がなかなかゼロにはならず、その一方で、中古車の流通量はここ10年ほどずっとゆるやかにゼロ方向へと向かい続けているため、需給バランスの関係で平均価格は必然的に上昇し続けているのです。
●「危うさ」を含んだ「軽やかさ」に代替品はない
ではなぜ、筆者(伊達軍曹)を含む一部の人は、いつまでもいつまでも「プジョー『106』が欲しい!」と願い続けるのでしょうか?
これはもう簡単な話で「代替品がないから」です。
「小さなクルマ」は、プジョー「106」以外にも星の数ほど存在しています。そして、「小さくて走りがいいクルマ」も、少数ですが存在しています。一例としては、トヨタ「GRヤリス」辺りが「小さくて走りのいいクルマ」の筆頭格でしょう。
でも「GRヤリス」のようにきわめて強固な車体と強力なパワーユニット、そして高度な電子デバイスによって高性能っぷりを発揮するのではなく、あくまでもプリミティブなつくりの、だからこそ、その味わいをダイレクトに堪能できてしまう小さなクルマを探そうとすると、選択肢は限られてくるのです。
そしてその中で、プジョー「106」は一応2003年までつくられていたクルマだけあって、(きちんとメンテナンスされた個体であれば)真夏でもエアコンが利き、そして旧車のように「途中でエンストして、そもそも目的地までたどり着けないかも……」という不安もほとんどありません。
さらにいえば、これは人それぞれの感覚なので感じ方は異なるかもしれませんが、さすがは“おフランス物”だけあって、内外装デザインが少なくともダサくはないのです。
そんなクルマは、プジョー「106」が“唯一の存在”ではないかもしれませんが、“きわめて少ない存在”であることは間違いありません。
日本のスズキが製造販売している「スイフト スポーツ」も、相当素晴らしい「小さくて走りがいいクルマ」です。でもあちらは、今でも新車の販売が続いている現代のクルマだけあって、ボディ剛性が非常に高い。例えていうなら「鉄筋コンクリート製の小さな高級マンション」のようです。
しかし、プジョー「106」はそこまでガッチリしてはいないため、「森の中につくられたツリーハウス的」な軽やかさがあります。もちろんその軽やかさは「危うさ」の裏返しでもあるのですが、世の中のクルマの大半から「危うさ」が消滅した今、そこが逆にレアアースのような価値を帯びてくるのです。
そんなプジョー「106」も、中古車の流通量は確実に減り続けています。手元の私的な資料を見てみると、ここ5年間で流通量は50%ほど減少してしまったようです。
誠に残念ながら、事実としてプジョー「106」の終わりは近づいています。だからこそ「いつかは」ではなく「今」こそ、この名作ハッチバックを購入しなければならないのです。
もちろんこの言葉は、あなただけではなく、いつまでも「106」を買わず、ただ能書きだけをたれ続けている筆者自身に向けてのものでもあるのですが……。
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