「レンジが変わると、人生変わる!?」象印「EVERINO(エブリノ)」は熾烈な電子レンジ競争を勝ち抜き“10%の壁”を越えられるか?――家電で読み解く新時代|Case.12
電子レンジ市場「10%の壁」を越えられるか?
「家電で読み解く新時代」と題してテクノロジーの奥に潜む“時代の空気”を紐解く本連載、今回取り上げるのは、熾烈な競争が繰り広げられる日本の電子レンジ市場に新風を吹き込む象印マホービンの新製品「EVERINO(エブリノ)」だ。
象印は長年培った温度制御技術を武器に、“本当に毎日使ってもらえるレンジ”を目指して開発を進めてきた。プロジェクト全体では約5年の開発、初代の投入(26L/2022)から約3年で30Lの最上位「ES-LA30」を実用化。
国内の家庭用オーブンレンジとして“底+奥の2基マグネトロン個別制御”は業界初(発表時点・同社調べ)で、温度ムラや時短、解凍への不満を正面から解決する。
同社は単機能を除くオーブンレンジ市場で、まず10%のシェア確保を狙う。その差別化戦略に、起業家の発想と家電スペシャリストの視点を融合させて読み解いていこう。

「戦えるレンジ」を5年かけて追及した象印の勝算
象印マホービン(以下象印)が電子レンジ市場に本格参入したのは2022年。当時26Lサイズで登場した初代EVERINOは、象印にとって17年ぶりのレンジ製品だった。
炊飯器や魔法瓶で知られる同社が、なぜ成熟市場に新規参入したのか。実は背景には中長期の成長戦略がある。
象印の市川典男社長は「象印の中長期の成長戦略では、領域の水平的拡大として既存商品のラインナップ拡充を、そして垂直的拡大として新事業の創出を掲げています。今回のオーブンレンジは新規カテゴリーの商品で、象印ブランドの力を十分に活かせる商品領域であると考えています」と語っている。
つまり、電子レンジ事業は同社の第3の柱として位置付けられ、ブランド力と技術力で「市場で戦える象印らしい商品」を送り出す狙いだ。
実際、市川社長は「競合も激しい市場だが、その分規模が調理器具の中では大きい製品。その市場の中で戦える象印らしい商品が開発できた」と新製品への自信を覗かせている。
特に興味深いのは、市川社長が電子レンジ市場の構造を炊飯器市場と類似すると見ている点だ。
炊飯器も電子レンジも低価格帯と高価格帯に二極化する傾向があり、近年炊飯器では高価格モデルが伸長している一方、電子レンジでは「多機能なオーブンレンジより単機能レンジの方が数量で上回る」状況があるという。
高機能レンジを買っても「機能が複雑で使いこなせない」ため結局あたため用途ばかり…というユーザーも多く、オーブン機能を持て余した消費者がシンプルな単機能レンジに回帰する動きも出ている。
象印はここにビジネスチャンスを見出した。既存メーカー各社が欧米的なパンや焼き菓子向け機能を充実させてきたのに対し、象印はあえて日常の日本の食卓ニーズに照準を合わせ、「毎日とことん使えるオーブンレンジ」を開発コンセプトに据えたのだ。
こうして構想開始から5年を経て送り出された30Lモデルが今回の「ES-LA30」である。
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