かつての若い男子はなぜサーブ初代「900」に憧れた? 航空機メーカーらしいルックスがウケた“ターボの輸入車”の現在地とは?【今こそ乗っておきたい名車たち】
若い男子が夢中になったスタイルとターボエンジン
いきなり妙な話で恐縮ですが、本記事をお読みの貴方にも「ぜひもう一度会って、いろいろと話をしたり、できれば抱擁などもしてみたりしたいが、おそらくその人とは死ぬまで会うことはないだろう……」と確信できる人が、ひとりやふたり、いるのではないでしょうか?

筆者(伊達軍曹)には、そういう人がいます。小学1年の頃から今に至るまで、好きでい続けているSさんという女性。元同級生です。
最後に会ってからもう数十年が経ち、「つき合っていた」というわけでも全くないのですが、いまだにSさんの夢を見ます。そして、今生においてSさんと会える可能性は、0.001%もないだろうと考えると、いつも胸が苦しくなります。
……これ以上Sさんの話を続けるとかなり気持ちの悪い記事になってしまうためこの辺で止めておきますが、要するに私は今、後悔と絶望に関する話をしているのです。
それはクルマも同じ。時折、後悔と絶望にさいなまれます。その一例が「あー、あのときサーブの初代『900』を買っておくべきだった……」という後悔と、その中古車が絶滅しつつあることに対する絶望です。
“クラシック900”と呼称されることも多い初代「900」は、スウェーデンの航空機メーカーであるサーブの自動車部門であるサーブ・スカニアが1978年から1993年にかけて製造・販売した同社の主力モデル。
2ドアと4ドアのサルーンとハッチバックをラインナップしていたほか、1986年には電動開閉式ソフトトップを備えるカブリオレも追加設定されました。
そのエクステリアデザインは、いかにも航空機メーカーの傘下にあるブランドらしいキャノピー(=航空機のコックピットを覆う透明な円ぶた)を思わせる湾曲したフロンドウインドウと、絶妙な尻下がり感のある個性的なフォルムがきわめて特徴的でした。
そして、車内のインストルメントパネルもどこか航空機ライクであったため、自動車とともに空への憧れも抱きがちだった当時の若い男子(の一部)は、初代「900」に夢中になったものです。
そんな世代のひとりが書いた小説『ドライブ・マイ・カー』に黄色いサーブ「900コンバーチブル」が登場し、その映画版では赤い「900ターボ」が起用されたのは、ある意味、当然のことだったのかもしれません。
そして、当時の若い男子(の一部)が初代「900」に熱狂した理由は、航空機ライクなデザインとたたずまいだけではありません。当時はまだ珍しかった“ターボエンジン”も、初代「900」への憧れをかき立てる大きな要因のひとつとなったのでした。
とはいえ、当時の「900」が搭載していた2リッターの直列4気筒ターボエンジンは、最強グレードである「ターボ16S」でも最高出力160ps/5500rpmに過ぎませんでした。
とはいえ、当時と今とでは状況も価値観も異なります。1980年代後半から1990年代前半頃にかけての日本では“ターボの輸入車”というだけで別格でした。
しかもそれが、異彩を放つ航空機ライクなデザインとともにあるというのですから、男子(の一部)は心躍らざるを得なかったのです。
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