かつての若い男子はなぜサーブ初代「900」に憧れた? 航空機メーカーらしいルックスがウケた“ターボの輸入車”の現在地とは?【今こそ乗っておきたい名車たち】
“時間という洗礼”をくぐり抜けて生き残った猛者を発見
ですが筆者は、そんなにも素敵で、そんなにも憧れを抱いた初代「900」を、実際に購入することはありませんでした。

20代前半は金がなく、20代後半になると「まぁ、いつかそのうちに」と思い、30代に入ると「とはいえ、今となっては信頼性がなぁ……」などとぶつぶつつぶやいていました。
そして30代後半になると、初代「900」のことなど忘れ始め、そうこうするうちに、気づいてみれば初代「900」はほぼ絶滅していました。買いたくても、仮に金があったとしても、“物理的に買えないクルマ”になってしまったのです。
「後悔先に立たず」ということわざほど、役に立たないことわざはないと思っていたのですが、とにかくいくら後悔しようとも、個人的には世界で一番カッコいいというか、味のあるデザインだと思っている初代「900」は、Sさんと同様の“二度を会うことのない存在”になってしまったのです。
最後に彼女=初代「900」と会ったのは、つまり“ドライブ・ザット・カー”をしたのは、確か30年ほど前。それが私にとって最初で最後の“初代「900」体験”となったのでした。
今はもう、あのときの甘美な記憶を反芻しながら、絶望とともに残りの人生を生きるしかありません。さようなら“クラシック900”。君のことはSさんと同じで、いつもいつまでも大好きだよ。フェアウェル、マイ・ラブリー……などとセルフポエムに浸りながら中古車情報サイトをなんとなく見てたら、あれ? 初代『900』、まだあるじゃないですか!
そうなのです。“絶滅した”と思い込んでいた初代「900」の中古車ですが、それは筆者の早とちりで、実際には数台の中古車がしぶとく流通しているのでした。
そしてその数台は、さすがに経年という“時間という洗礼”をくぐり抜けて生き残った猛者だけあって、いずれもコンディションは非常に良好そう。整備記録簿などもバリバリ充実しているようです。
筆者は自動車ライターという仕事柄、新車ブランドとしては消滅してしまったサーブながら、その整備を専門とする腕利きの工場が少数ながら日本に存在していることを知っています。
ということは、“夢”はまだ終わっていなかったのです。その気といくばくかのマネーさえあれば、筆者も貴方も、今からでも、初代「900」に会うことはできるのです。人生、捨てたもんじゃないですね。
* * *
……などと前向きな気分に浸っていたら、Sさんとは別の元同級生(女性)からSNS経由で連絡が入りました。
「先日、Sちゃんとお茶したときに伊達くんの話をしたら、Sちゃんも『伊達くん? 懐かしいなぁ! そのうち会いたいね!』なんていってたよ」
……なんとSNSの発達により、長らく疎遠だった元同級生との接点が生まれ、その接点を通じて、二度と会うことはないと思っていた人と再会できる可能性が生まれたのです。人生、本当に捨てたもんじゃないですね!
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