ハイアールはなぜスポーツに本気なのか? PSG、リヴァプール、羽生結弦が示す“家電ブランド再定義”の現在地【家電で読み解く新時代|Case.42】
羽生結弦は “チャンピオンスピリット”の翻訳者である
グローバルでPSGやリヴァプールFCと組む一方、日本ではプロフィギュアスケーターの羽生結弦さんをハイアール/アクアのブランドアンバサダーに起用しています。
この起用は、非常に納得感があります。羽生さんが持つ価値は、単なる知名度や人気ではありません。世界の頂点を知り、プロ転向後も挑戦を続ける姿勢。技術と表現を両立させる美意識。そしてファンとの深い関係性。そこには、競技成績を超えた物語があります。

ポップアップイベントの開幕式で紹介された羽生さんのメッセージでも、「挑戦し続ける姿勢」「情熱」「チャンピオンスピリットを日常のライフシーンへ届ける」といった言葉が語られていました。
ハイアールにとって、羽生さんは単なる広告塔ではありません。グローバルブランドであるハイアールの「Champion Your Haier Life」という考え方を、日本の生活者に感情として伝える存在です。
家電界のチャンピオンとスポーツ界のチャンピオンが並ぶ構図は、ここでも成立しています。しかも羽生さんの場合は、勝利だけでなく、技術、表現、継続する挑戦、美しさといった要素が強い。これは、家電ブランドが本来持っている「技術を暮らしの体験に変える」という構造とも重なります。
家電の技術は、生活者にはそのまま届きません。冷却制御、モーター、センサー、空調技術といったものは、最終的には「おいしく保存できる」「きれいに洗える」「快適に過ごせる」という体験に変換されて初めて価値になります。
羽生さんの演技も同じです。高度な技術がありながら、観る人の記憶に残るのは、最終的には感情の体験です。だからこそ、ハイアール/アクアと羽生さんの組み合わせは、単なるタレント起用以上の意味を持っているように感じます。

家電ブランドの競争軸は「性能」から「意味」へ移っている
家電業界を長く見ていると、ここ数年で競争軸が変わってきたことを強く感じます。
かつては、冷蔵庫なら容量や鮮度保持、洗濯機なら洗浄力や乾燥性能、テレビなら画質、エアコンなら省エネ性能が中心でした。もちろん、いまも基本性能は重要です。家電である以上、性能が弱ければ選ばれません。
ただし、一定以上の価格帯では、各社の技術水準はかなり高くなっています。単に「よく冷える」「よく洗える」「快適」というだけでは、ブランドの決定的な差になりにくい。
さらにスマート家電化が進むことで、製品単体だけでなく、アプリ、サービス、住空間との連携、購入後の体験まで含めて評価される時代になっています。
このとき問われるのは、「このブランドは、どんな暮らしを実現してくれるのか」ということです。
ハイアールのスポーツ戦略は、この問いに対する答えのひとつです。PSGやリヴァプールFCとの提携は、冷蔵庫や洗濯機を直接売るためだけの施策ではありません。羽生さんの起用も、ファン層に商品を届けるためだけの施策ではありません。
むしろ、ハイアールというブランドに「挑戦」「情熱」「精度」「美しさ」「世界の頂点」といった意味を重ねていく行為です。これは広告というより、ブランドの編集に近いものです。

ブランド戦略の視点で見ても、この動きは非常に興味深い。企業が一定規模を超えたとき、次の成長に必要なのは商品数を増やすことだけではありません。ブランドが何を意味するのかを再定義し、その意味を顧客との接点に埋め込むことが必要になります。
ハイアールは、販売台数ではすでに世界トップの企業です。だからこそ、次の課題は「どれだけ売れるか」だけではなく、「どのように愛されるか」になります。スポーツマーケティングは、そのための手段なのです。
「売れている家電メーカー」から「選ばれる生活ブランド」へ
今回のポップアップイベントを見て感じたのは、ハイアールが日本市場でもブランドの見られ方を変えようとしていることです。
ハイアールは、日本では長くコストパフォーマンスのよい家電ブランドとして見られてきました。もちろん、それは大きな強みです。価格と品質のバランスに優れた製品を届けることは、生活者にとって重要な価値だからです。
しかし、世界No.1の家電ブランドとして次の段階へ進むには、それだけでは足りません。安いから選ばれるのではなく、好きだから選ばれる。便利だから買うのではなく、このブランドと暮らしたいと思われる。そこへ進む必要があります。
今回のスポーツマーケティングは、そのための一歩に見えます。

PSG、リヴァプールFC、羽生結弦さん。これらに共通するのは、ただ有名であることではありません。世界の頂点を知り、挑戦を続け、ファンが強い感情を寄せる存在であることです。ハイアールは、その物語のそばに自らのブランドを置こうとしています。
家電界のチャンピオン企業が、スポーツ界のチャンピオンたちと組む。この図式はわかりやすい。しかし本当に重要なのは、その先です。
ハイアールは、世界一の家電メーカーであることを、世界中の生活者が感情移入できるブランドストーリーへと変えようとしている。スポーツを見る瞬間だけではなく、その前後にある暮らしまで含めて支えるブランドになる。今回のイベントで見えたのは、まさにその現在地でした。
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