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城好きにはたまらない! 日本にたった12しかない“現存天守”のなかで唯一残る山城 岡山県にある難攻不落の「天空の城」とは

駐車場から先は、まさに登山気分

 岡山自動車道の賀陽ICを下り、国道484号を走りますが、この道もかなりのワインディング路。慎重に運転します。

 吉備国際大学高梁キャンパスの脇を抜け、急坂をクルマで上ります。分岐するところに案内の人が立っていたので話を聞くと、今日は平日なのでふいご峠駐車場までこのまま行ける、とのこと。ここから駐車場までは、対向車とのすれ違いも難しいほどの細道ですが、案内の人が無線でふいご峠駐車場の係の人と連絡を取り、これからクルマが上っていくことを知らせてくれるため、安心できます。

 ふいご峠駐車場に到着。駐車料金は1000円です。念のために杖代わりの竹の棒を借り、いざ出発。駐車場の係、兼売店のおばちゃんに「頑張ってねー」と声をかけられました。えっ、頑張るほどなのか?

 クルマでけっこうな勾配を上ってここまで来られたのだから、あとは少し歩くだけでしょ。そんな気持ちでいたのですが、これが甘かった。

 駐車場から天守までは徒歩で約20~30分。自分は歩くのが早いから、まあ20分で到着するでしょう。数字だけを見ると、それほど大変そうには感じません。しかし、実際に歩き始めると、想像していた以上の坂道が続きます。

 舗装された平坦な道を散策するのとはわけが違います。山の斜面に沿って続く登城道を、一歩ずつ上がっていかなければなりません。少し歩いては息を整え、また歩く。普段から山登りをしている人ならともかく、気軽な観光のつもりで訪れると、なかなか手ごわい道のりです。

 途中途中に城主からの登場心得という看板がいくつか立てられてあり「この辺りがちょうど中間地点である しばし休まれよ」「よくぞ参られた」など書かれているのをみて心がなごみます。でも正直、ここまででもかなり足にきます。

備中松山城。段差がランダムで歩きづらい。これも城守りの定石?
備中松山城。段差がランダムで歩きづらい。これも城守りの定石?

 それでも、登城道の周囲にそびえる岩壁や、山のなかに築かれた石垣を目にすると、この場所に城を造った人々の苦労が想像できます。もちろん、敵に攻め込まれにくい場所を選んだ「要塞」なので当然なのですが、現代の観光客にとっても簡単にはたどり着けない城なのです。

 坂道を登り切り、ようやくたどり着いた備中松山城。天守を目の前にすると、ここまで歩いてきた疲れも少し報われる気がします。

 天守そのものは、姫路城のような大規模な城と比べれば決して大きくありません。しかし、山の地形と一体になった城の姿には、ほかの城ではなかなか味わえない魅力があります。

 なかでも印象的なのは、自然の岩と石垣が組み合わさった独特の景観です。巨大な岩壁を巧みに利用した城の構えは、山城ならでは。単に天守を眺めるだけでなく、城へ至る道のりそのものが、備中松山城を理解するための大切な体験になっています。

 途中、すれちがったのがネコ城主の「さんじゅーろー」です。首にひもを着けた状態のまま、下山方向に歩いていきました。ほんの少し後、係のおじさん(もしかして、家老?)が汗だくで城主を追いかけていくという、マンガのような光景に出くわしました。

 後で調べると、さんじゅーろーは、2018年の西日本豪雨のあとに城に現れ、ネコ城主として迎えられた猫。いまでは備中松山城の人気者として親しまれています。

城主「さんじゅーろー」様 逃亡の図
城主「さんじゅーろー」様 逃亡の図

 ただし、城主様にはいつでも会えるとは限りません。お出かけ前に公式サイトで登城予定などを確認しておくとよさそうです。

●「天空の城」は、登ってこそ楽しめる

 備中松山城は、雲海に浮かぶ幻想的な姿で知られています。しかし、実際に訪れてみると、魅力は遠くから眺める景色だけではありません。

 山を登り、岩壁や石垣を眺め、ようやく現存天守にたどり着く。その過程を含めて楽しめるのが、この城の大きな特徴です。

 ただし、坂道は思っていた以上に急です。歩きやすい靴と動きやすい服装を用意し、時間にも余裕を持って訪れたいところ。

備中松山城天守
備中松山城天守

 気軽な立ち寄りスポットというより、ちょっとした登山を兼ねた城めぐり。だからこそ、たどり着いたときの達成感もひとしおです。備中松山城は、現存12天守をめぐる旅のなかでも、ひと味違った思い出を残してくれる城でした。

 個人的にはあと一城、福井の丸岡城に行けば現存12天守制覇。ただ現在、丸岡城は大規模修理の真っ最中。終了は2027年11月予定なので、その後に行くのも楽しみです。

Gallery 【画像】日本に残る唯一の山城天守! 「備中松山城」を見る(26枚)
ネギシマコト
ネギシマコト
VAGUE編集部 副編集長
東京都文京区生まれ。大学卒業後、音楽誌、美術誌(陶芸担当)の編集を経て1995年に自動車雑誌業界に入り、輸入車系月刊誌を中心に、国産車系月刊誌でもクルマのイロハを学ぶ。当初よりタイヤ担当としてほぼすべてのタイヤの試走会に参加し、今年で31年目。 最近のマイブームは鉄道での旅。移動中でもパソコン仕事ができる便利さを今さらながら知り、クルマ業界出身にもかかわらず最近はドライブする機会がめっきり減った。趣味は神社巡り(御朱印帳8冊目)、美術館巡り、落語鑑賞、演劇鑑賞。大の巨人ファン。

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