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空気清浄機メーカーが「空気清浄だけでは足りない」と考え始めた。30周年のブルーエアが温度・湿度まで見始めた理由【家電で読み解く新時代】

「空気がきれい」だけでは足りない?

 空気清浄機に求める性能といえば、花粉やハウスダスト、PM2.5などの除去でしょう。ところが、2026年に創業30周年を迎えたスウェーデンのブルーエアが掲げるのは「Air Optimized for Health(健康のために最適化された空気)」という考え方です。空気をきれいにするだけでなく、温度や湿度、睡眠時の快適性まで視野に入れるというのです。

 空気清浄の専門メーカーが、なぜそこまで踏み込むのでしょうか。その答えは、同社の歩みと、空気を取り巻く社会の変化にあります。

創業30周年を迎えたブルーエアの記念ビジュアルは「DreamWell™ Mini Humidifier H21」と「Blue Pure Mini Max Auto」。空気清浄を専門に歩んできた同社は、清浄性能だけでなく、温度や湿度を含めた空気環境全体へと視野を広げています。
創業30周年を迎えたブルーエアの記念ビジュアルは「DreamWell™ Mini Humidifier H21」と「Blue Pure Mini Max Auto」。空気清浄を専門に歩んできた同社は、清浄性能だけでなく、温度や湿度を含めた空気環境全体へと視野を広げています。

子どもへの思いから生まれた「空気をきれいにする技術」

 ブルーエアの創業は1996年。創業者ベント・リトリ氏は、家族でスウェーデンの森や島へ出かけるたび、都市との空気の違いを感じていました。「子どもたちには、きれいな空気の中で育ってほしい」。そんな思いが開発の出発点でした。

 1997年に初号機「Blueair 401」を発売。2000年には「Blueair 501」が米国家電製品協会(AHAM)の定めるCADRで当時の最高値を獲得しました。

 CADRとは「Clean Air Delivery Rate(クリーンエア供給率)」の略で、一定時間にどれだけの清浄な空気を供給できるかを示す指標です。日本では「何畳用か」という適用床面積が目立ちますが、フィルターが高性能でも、そこを通る空気が少なければ部屋全体はなかなかきれいになりません。

 ブルーエアは、粒子を捕らえる能力と大量の空気を循環させる能力の両立を追求してきました。独自の「HEPASilent®(ヘパサイレント)テクノロジー」も、そのための技術です。

ブルーエアのルーツ的モデル「Blueair Classic 605」。創業以来、微粒子を捕らえるフィルターの性能だけでなく、清浄な空気を室内に速く届けることを重視してきた姿勢が、現在の製品にも受け継がれています。
ブルーエアのルーツ的モデル「Blueair Classic 605」。創業以来、微粒子を捕らえるフィルターの性能だけでなく、清浄な空気を室内に速く届けることを重視してきた姿勢が、現在の製品にも受け継がれています。

日本でも変わり始めた、空気清浄機を選ぶ「物差し」

 興味深いことに、2026年には日本でも性能評価の新しい動きがありました。日本電機工業会(JEMA)が、国際規格IEC 63086-2-1に準拠する試験方法を用いた空気清浄機の性能認証制度を設けたのです。中心となる指標はCADR。集じん効率70%以上、CADRの実測値が表示値を10%超下回らないことなども認証基準に含まれます。

 従来の日本では適用床面積が広く使われ、集じん試験にはタバコの煙も用いられてきました。煙を試験に使うこと自体に技術的な意味はあります。ただ、花粉やPM2.5への関心が高まる今、メーカーや国をまたいで性能を比較しやすくすることの重要性は増しています。

 たとえば同じ「適用床面積」の製品でも、実際にどれほど速く空気を清浄できるかは、機種ごとの設計によって異なります。数字の意味を知ることは、生活者が製品を比較するうえでも大切です。新制度は従来の評価方法を一律に廃止するものではありません。それでも、ブルーエアが30年近く重視してきた「どれだけ速くきれいな空気を届けるか」という考え方と、日本の新たな評価軸が時を超えて追いついたことは見逃せません。

赤ちゃんと猫が過ごすリビングに置かれた「PetAir Pro」。空気清浄機への関心は、花粉やPM2.5といった特定の汚染物質への対策から、家族が日常的に過ごす室内環境全体へと広がっています。
赤ちゃんと猫が過ごすリビングに置かれた「PetAir Pro」。空気清浄機への関心は、花粉やPM2.5といった特定の汚染物質への対策から、家族が日常的に過ごす室内環境全体へと広がっています。

PM2.5問題が「快適家電」を生活に欠かせない機器へ変えた

 その性能が切実に求められたのが、2010年代に深刻化した中国のPM2.5問題です。北京の米国大使館は2008年から大気汚染を独自に測定・公開し、空気の安全性は社会的な議論にもなりました。

 2013年、米国政府は中国に勤務する大使館関係者らの室内環境を改善するため、ブルーエアの空気清浄機を数千台規模で採用しました。メーカーが後に公表した資料では4000台を超え、職員住宅も対象に含まれていました。

 大気汚染は屋外で起きていても、人が長い時間を過ごす住宅やオフィスの空気をどう守るかは別の課題です。室内で使う空気清浄機が注目された背景には、そうした日常生活への切実な不安がありました。ここで空気清浄機は、単に部屋を快適にする製品ではなく、暮らしの環境を守るための機器として選ばれたのです。

 筆者は国内外の家電メーカーを取材してきましたが、家電の価値を変えるのは新技術だけではありません。社会問題や生活習慣の変化が、それまでの「あると便利」を「必要なもの」に変えることがあります。

ブルーエアが掲げる「Air Optimized for Health」のビジョンは、空気中の汚れを除去するだけでなく、温度や湿度、日々の心地よさまで考えるという、30周年を迎えたブランドの方向性を表しています。
ブルーエアが掲げる「Air Optimized for Health」のビジョンは、空気中の汚れを除去するだけでなく、温度や湿度、日々の心地よさまで考えるという、30周年を迎えたブランドの方向性を表しています。

清浄性能の先にある「理想の空気」とは

 ブルーエアは「Clean Air for Children」を通じて子どもたちの過ごす場所にきれいな空気を届け、「Freedom to Breathe」というメッセージも発信してきました。食べ物や飲み物は選べても、その場の空気は吸わずにいられない。創業時の思いは、空気を吸う権利という考え方に広がったのです。

 そして30周年の現在地が「Air Optimized for Health」です。いくら花粉やホコリが少なくても、冬に乾燥しすぎれば喉や肌は不快です。夏も、空気がきれいなだけで暑さは解消しません。「清浄な空気」と「心地よい空気」は同じではないのです。
 
 そこで同社は、空気清浄と加湿を組み合わせた「2-in-1 加湿空気清浄機」や、ファンとヒーターを備える「ComfortPure 3-in-1 空気清浄機」などへ領域を広げています。

 ポイントは機能の数ではなく、開発の出発点です。「どう空気をきれいにするか」から「どうすれば人が心地よく過ごせるか」へ。生活者が求めるものから製品を考える方向に変わりつつあります。

ベッドサイドに設置された「DreamWell™ Humidifier」。空気清浄機がリビングだけでなく、長い時間を過ごす寝室でも使われることを示す一枚です。生活空間になじむ置き方も製品選びのポイントになります。
ベッドサイドに設置された「DreamWell™ Humidifier」。空気清浄機がリビングだけでなく、長い時間を過ごす寝室でも使われることを示す一枚です。生活空間になじむ置き方も製品選びのポイントになります。

多機能化は正解なのか。専門メーカーの次の課題

 日本の家電市場では、ひとつの製品に複数の機能を搭載する発想は珍しくありません。しかし、空気清浄機を一年中使う家電にするためには、機能を増やすだけでなく、季節ごとの使い勝手や維持管理まで考える必要があります。

 もっとも、多機能化すれば必ず使いやすくなるわけではありません。加湿には手入れや衛生管理、暖房には消費電力など、空気清浄とは別の課題があります。日本の住宅では省スペース化が魅力ですが、専用機を組み合わせたほうが合理的な場合もあるでしょう。

 経営の視点で見れば、専門メーカーが領域を広げることは競合や開発負担を増やし、強みを曖昧にするリスクも伴います。だからこそ、清浄性能を維持しながら、温度や湿度に関わる機能をどこまで高い水準で両立できるかが問われます。

 かつて花粉やタバコの煙など、特定の困りごとへの対策として選ばれてきた空気清浄機。PM2.5問題を経て、いまは日々の空気環境を整える存在へと役割を広げようとしています。もちろん換気や汚染源への対策も欠かせません。

 30年前、ブルーエアが追い求めたのは「きれいな空気を速く大量に届けること」でした。その技術を土台に、次は「人にとって健康的で良い空気とは何か」を問い直す。30周年は、空気清浄機の価値を測る物差しが変わり始めた節目ともいえそうです。

製品概要

 「DreamWell™ Mini Humidifier H21」

製品名: DreamWell™ Mini Humidifier H21 30YR Limited Edt.
カラー: Aurora Blush(オーロラブラッシュ)
発売時期: 2026年11月上旬予定
価格: 2万3100円(税込)
サイズ: 約直径200×H280mm
重量: 約1.8kg
加湿方式: 気化式
水タンク容量: 2.1L
消費電力: 2.0〜12W
運転音: 12〜43dB(A)
主な機能: オート加湿モード、温度・湿度センサー、加湿フィルタードライ機能、チャイルドロック、ディスプレイ照度調整
付属品: 専用セントポッド1個
販売: ブルーエア直販サイト限定・数量限定

「Blue Pure Mini Max Auto」

製品名: Blue Pure Mini Max Auto 30YR Limited Edt.
カラー: Lavender(ラベンダー)
発売時期: 2026年11月上旬予定
価格: 1万7600円(税込)
サイズ: 約直径173×H306mm
重量: 約1.2kg
適用床面積: 最大12畳(JEMA基準)
推奨フロア面積: 最大6畳(AHAM基準)
空気清浄時間: 6畳あたり約17分
消費電力: 2.7〜8W
運転音: 11〜44dB(A)
フィルター交換目安: 最大約9カ月
主な機能: HEPASilentテクノロジー、空気質センサー、オートモード、ナイトモード、チャイルドロック
販売: ブルーエア直販サイト限定・数量限定

Gallery 【画像】“空気清浄の先”を目指すブルーエア最新モデルの画像を見る
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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