タイヤはクルマの一部 ランボルギーニの要望とブリヂストンの技術力がマッチした瞬間
ところで、ランボルギーニがスーパースポーツカー用として求めるのはどのようなタイヤなのでしょうか。ブリヂストンのスタッフは次のように説明します。
「コーナリング性能、スタビリティの性能、高速域のコントロール性、そしてドライだけでなくウエットでも高いグリップ。言葉で表すとシンプルですが、その次元が違います。最適化されたゴム、トレッド、そして構造。そういった技術力を織り込んで、レヴエルトの高い性能をしっかり受け止めるタイヤとなっております」
そのうえで、レヴエルトのような超ハイパワーモデルゆえの特別な難しさもあると言います。
「パワーが大きいゆえにタイヤへの入力もきわめて大きいので、耐久性がシビアになります。クルマがタイヤに求める走行性能や快適性は満たしつつ、安全性や耐久性も担保しないといけない。そういった部分に関して、こういったハイパワー車両だと特に難易度が高まるのです」(ブリヂストンのスタッフ)
ちなみにタイヤの耐久性というと一般的には「摩耗」をイメージしますが、ここではそれに加えてより高負荷な入力に対してタイヤが故障することなく安全性を担保するという点です。スーパースポーツカーは車の出力が非常に大きいためその点の配慮が重要と考えます。
そして、そんなスーパースポーツカーの要求に答えられるタイヤメーカーがブリヂストンなのです。高い技術力を持つブリヂストンだからこそ、レヴエルトのタイヤを完成させることができたと言っていいでしょう。
“ブリヂストンを履いておけば間違いない”世界を知った元F1ドライバーが発する言葉の重み
なにを隠そう、ブリヂストンと鈴木亜久里氏との付き合いは長い。最初にかかわりを持ったのは、鈴木亜久里氏がレーシングカートをやっていた頃で、当時はまだ10代中盤だったと言います。
「当時の日本は違うメーカーが主流だったけど、ブリヂストンがカート用のタイヤを始めることになって、それからはずっとブリヂストン。だから付き合いはもう50年にもなるよ」
鈴木亜久里氏はなぜここまでブリヂストンを使い続けるのでしょうか。
「どうしてブリヂストンかって? 理由は簡単だよ。いいタイヤだから。レースで走っても強いしさ」
鈴木亜久里氏はブリヂストンのレーシングタイヤの開発にも大きくかかわり、同社がF1へタイヤ供給を行う際も開発ドライバーを務めました。そんな鈴木亜久里氏から見て、ブリヂストンのタイヤのすごさはどこにあるのでしょうか。
「ブリヂストンのタイヤの特徴は、圧倒的なグリップ力。特にトラクションがすごいよね。いわゆる縦方向のグリップ力だよ。レーシングタイヤではそれが“強さ”につながっている。ダントツだよ」
「レヴエルトに履いているブリヂストンのタイヤは360km/hまでの性能が保証されているわけでしょ。まずそれが高い技術力の証しだよね。レースで鍛え上げたからそういうことができる。そして、ブリヂストンのそういう部分にランボルギーニが一目置いているからこそ、オフィシャルテクニカルパートナーの契約を結んだってこと。ランボルギーニが認めたタイヤ作りってとても意味があるんだってことを多くの人に知ってほしいね」
それはレーシングタイヤだけでなく市販車に装着するPOTENZAでも同じなのでしょうか?
「市販のPOTENZAも強みは同じだよ。注目はまずグリップレベルの高さ。ハイパワーをしっかり受け止めるし、急にレーンチェンジをしなければならない状況でもしっかり反応する。そういったところに秀(ひい)でている」
「それから、激しいブレーキングでもしっかり止まる。これは速く走るためでもあるけれど、安全にも直結すること。運転を楽しむのも安全性が確保されていることが前提だからね」
ちなみに、「POTENZA」というブランドの誕生は1979年ですが、ブリヂストンのモータースポーツ活動の歴史はさらに長く、昨年60周年を迎えました。ブリヂストンとPOTENZAは、まさに日本のモータースポーツの発展を支えてきたブランドであり、サーキットをはじめとする競技フィールドで培った知見を投入して技術力を磨き、育ったブランドなのです。
ランボルギーニとのオフィシャルテクニカルパートナーシップはそんなブリヂストンやPOTENZAの技術力や高品質の証しに他なりません。そしてランボルギーニが同社において史上最高となる出力を持つ新型車のタイヤにブリヂストンを指名するのも、ブリヂストンが作り出すタイヤの性能が他を圧倒する実力を持っているからなのです。
鈴木亜久里氏は最後にこう言います。
「ブリヂストンを履く理由? それはブリヂストンを履いておけば間違いないからだよ。すべてが一流なんだ」
ランボルギーニがブリヂストンを選んだ理由も、ひとことでいえばそうなるのでしょう。ブリヂストンが持つ技術力と品質は、ランボルギーニも認める、他の追随を許さない次元に上りつめているのだから。クルマの性能を極めた先には「ブリヂストンでなければダメ」という世界があるのです。
[Text:工藤貴宏 Photo:土屋勇人]
page