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家電をデザインで評価する時代はもう終わり! 未来の家電は存在感ひかえめの“ステルス性能”で勝負する!?

「IFA 2022」を取材して見えた家電デザインの変化

 先ごろAmazonに買収されたことで話題を集めた、ロボット掃除機「ルンバ」でおなじみのアイロボット。かつて同社のCEO(最高経営責任者)だったコリン・アングル氏にインタビューした際、こんな話をされたのを思い出した。

「完璧なルンバを人間が目にすることは一度もありません。なぜなら、触れることもできないルンバだからです。部屋が完璧に掃除されていれば、ロボットであろうと別の何であろうと関係ありません。とにかく目的は、きれいに掃除することなのです」

 まさに、すべての家電にそうした発想が波及してきたのかもしれない……そんなことを思わずにはいられなかったのが「IFA(Internationale Funkausstellung)2022」を取材しての印象だ。

人々が「家電に求めるものは何か?」をあらためて考えた結果なのか、「IFA2022」ではステルス性能の高い冷蔵庫やテレビが目立った
人々が「家電に求めるものは何か?」をあらためて考えた結果なのか、「IFA2022」ではステルス性能の高い冷蔵庫やテレビが目立った

 コロナ禍で中断される以前の「IFA 2018」、「IFA 2019」あたりは、コネクティッド家電、日本でいうところのIoT家電が全盛だった。ヨーロッパや中韓の巨大メーカーは、冷蔵庫のドアにタブレットのような大型液晶ディスプレイを装着。ありとあらゆるモノやサービスとつなぐことが正義とばかりに、オーブンレンジや洗濯機をクルマと接続するような“やりすぎ展示”まで見受けられた。

 それから2年余り。コロナ禍の間は多くの人々が、家の中で過ごすことを強制された。しかし、家電と過ごす時間が増えたことで、人々は「自らが家電に求めるものは何か?」ということに気づいたのかもしれない。一流家電メーカーの展示が一気に方向転換したのは、そのためだろう。

 巨大メーカーの多くがサステナブルをテーマに掲げ、ブース設営時点から二酸化炭素排出量の削減をアピールしたり、人々の生活で“Wellbeing(ウェルビーイング=健やかに生きること)”を追求すると宣言したりする中、それらを具現する家電を個別に見ていくと、多くのモデルが“家電然”とした姿を極力隠すようなデザインをまとっていることに気がついた。

 そういう意味では、ダイソンやバルミューダのように機能をデザインで強調したり、空間のアクセントとしてデザイン自体に付加価値をつけたりするのがクールだとされる日本の家電の現状は、世界のトレンドに比べると徐々に古い考え方になっていくかもしれない。

●シンプルなデザインの中に多機能を盛り込む冷蔵庫

 その根拠となるトレンドが、「IFA 2022」の冷蔵庫とテレビの展示でハッキリと打ち出されていた。

 まずは冷蔵庫からご紹介しよう。ドイツのプレミアム家電メーカー・ミーレの冷蔵庫「K 4000」は、扉を開けるたびに野菜をフレッシュに保つ機能や、冷凍室をパーティ前日などに冷蔵庫の温度帯に変更できるといった機能を搭載する。とはいえ、やはり注目すべきはその見た目だろう。プレミアムブランドならではの隅々まで美しくシンプルなたたずまいは、日本メーカーのそれとは明らかに異なる。

 続いては、ドイツのメーカー・リープヘルの冷蔵庫だ。“冷蔵庫はあなただけの冷蔵庫になる”をテーマに「My Style」というシリーズ名で冷蔵庫を展示。30種類以上のカラーリングから住環境に合わせて選べるほか、フェイス面やサイド面をさまざまな模様にデコレーションできるなど、どんな空間にも調和させられるのが強みだ。

 ドイツの総合家電メーカーのひとつ・シーメンスのビルトイン冷蔵庫「IQ700」の扉は、もはやそれ自体が冷蔵庫の扉かどうか、ひと目見ただけではわからないほどだ。扉を周囲の木や石壁と同じ素材感に統一することで、そこに冷凍冷蔵庫が存在するとは気づかないくらい、さまざま住環境においてその存在感を消すことができる。

人々が「家電に求めるものは何か?」をあらためて考えた結果なのか、「IFA2022」ではステルス性能の高い冷蔵庫やテレビが目立った
人々が「家電に求めるものは何か?」をあらためて考えた結果なのか、「IFA2022」ではステルス性能の高い冷蔵庫やテレビが目立った

 デザインがシンプルなだけではなく、AmazonのOpenAssistによって「アレクサ、冷蔵庫を開けて」といった音声コマンドで冷蔵庫のドアを開けることができるほか、食品の鮮度を最大3倍長く保つ先進の冷却技術“hyperFresh premium”を搭載するのもポイントだ。

●使っていないときは存在感を極力消すテレビの次世代デザイン

 一方、テレビは韓国の2大巨塔がその流れを牽引しているように感じた。

 サムスンの「The Serif」は、単なるコネクティッドデバイスの黒く無機質なテレビではない。部屋の中央に置いても違和感のないインテリア要素の強いデザインが特徴だ。金属製のエレガントなイーゼルにもマッチ。背面も、むき出しのコードが散在する原因となる端子などが並ぶのではなく、パーテーションとして使ってもいいようなすっきりとしたパネル状となっている。

 LGのライフスタイルテレビ「Objet Collection Posé」も、それと並ぶような特徴を有するが、さらにブックシェルフ的な機能をプラスオン。より生活の中に取り入れやすい仕様となっている。

 また、普段は絵画のようなアート作品を映して飾っておくことをデフォルトとしたテレビが、サムスンとLGのブースでは展示されていた。

 サムスンの4K超高画質を実現したライフスタイル向けテレビ「The Frame」は、ディスプレイ特有の反射をなくしたマットディスプレイを搭載。まるで油絵のような質感で映像を見せてくれる。

 LGのデザインテレビ「Easel」は、床置きのオブジェとして壁に立てかけて使える。ディスプレイに映像を映していないときには、リモコンのボタン操作ひとつでパネル部が上へとせり上がり、ディスプレイを細長い表示エリアとして覆うなど、無機質な黒い盤面として置き去りにされることを防ぐ工夫がなされている。

* * *

 家電の存在理由を考えると、大事なことが見えてくるはずだ。家電が過度に目立つ必要はない。人の生活を快適にすることこそが重要だ。家電は道具であり、主役はあくまで人。持続的な幸せを送り届ける、まさにWellbeingをともに追求するためのパートナーのような役割を担うことこそが、家電が存在する上で最も大事なことだろう。

 テレビが無機質なテレビの顔をしている必要はない。むしろ使っていないときは、テレビである存在感は極力ない方がいい。ディスプレイというハードが大事なのではなく、それでコンテンツを快適に楽しめるか否かが肝心なのだ。冷蔵庫も同様。外観を目立たせることよりも、鮮度のいい食材などをしっかり保管し続けることこそが、人を幸せにするのである。

 これからの時代、テレビはテレビの顔をしていてはダメだし、冷蔵庫は冷蔵庫の顔をしていてはダメ。家電はステルス戦闘機のように気づかれない存在になるのがちょうどいい。そんな時代が確実にやってくるはずだ。

Gallery 【画像】「IFA2022」で見つけた“ステルス性能”高めの次世代家電を写真で見る(10枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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