“平和維持活動”で活躍するランクルを架装「ジブラルタル最大の輸出品」は人道支援向けのトヨタ車だった
ユーザーは国連を始めとする人道支援団体
先日、イギリスの老舗自動車雑誌『Top Gear』が面白いネタを拾ってきました。大西洋と地中海を結ぶ軍事的な重要拠点で、イギリスの海外領土であるジブラルタルにユニークなトヨタディーラーがあるというのです。実はこのネタ、2018年に朝日新聞も拾っていて、それ以前にも個人のブログでいくつか取り上げられたことがあるようです。

そのトヨタディーラーの名は、トヨタ・ジブラルタル・ストックホールディングス社(以下、TGS社)。『Top Gear』では“ディーラー”と紹介されていましたが、TGS社の資料によると「トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ヨーロッパ(以下、TMME)の代理店」なんだそうです。
TGS社がユニークなのは、端的にいうと政府、国連やその下部組織や団体(国連“システム”と呼ぶらしいです)、国に認められたNGOや人道支援団体のみにしか販売しないことです。
しかも、ヨーロッパやアフリカのみならず、前述の団体が必要とする世界各地にデリバリーされるそうです。さらに、いわゆる“へき地”での使用が前提となっているにもかかわらず、保証つきが謳われています。トヨタ車、実に頼りがいがありますね。
元々TGS社は、トヨタのスペアパーツ販売をおこなっていたそうですが、いつしか架装メーカーとしての役割を担うようになったそうです。「ベース車両は日本から送られてくる」と『Top Gear』のYouTube動画では紹介されていますが、個人的には違うんじゃないかと思っています。
動画内に出てくる「ランドクルーザー70」、ヘッドライトやボンネットの取りつけなどを見ると「日本の工場出荷時に許される状態かなぁ?」と思われる仕上がりです。さらに、トヨタのホームページで確認してみると、動画に登場する車両はケニア、南アフリカ、エジプト、ガーナなどで生産されているものです。
また、トヨタのホームページに「トヨタ自動車75年史」という面白い年表がありました。それによると、1991年に「国連直販業務をアフリカ部に移管」、1997年に「東部アフリカを中心に販売・マーケティング業務を豊田通商へ移管開始」、1999年に「TGSがTMMEと代理店契約」と記されています。つまりは、豊田通商が担う仕事をTGS社が引き継いで成長したのではないでしょうか。
●「平和維持活動」向けの手術車や研究車など多彩なニーズに対応
TGS社では、顧客の要望に応じてベース車両をカスタマイズします。へき地での移動車のみならず、救急車、囚人輸送者、地震や津波で活躍した移動手術車、エボラ出血熱で活躍した移動研究車など、幅広いカスタマイズに対応しています。
TGS社には常時1000台ほどのベース車の在庫があり、毎月650台が輸出されているそうです。東京都狛江市ほどの面積しかないジブラルタルにとって、TGS社が手がけるトヨタ車は最大の輸出品となっています。
なお、TGS社では防弾仕様は手がけても、武装車両は手がけないことをポリシーとしています。あくまでも「平和維持活動」に参加する車両だけを製作しているのです。
ちょっと気になったので、国連の調達ページものぞいてみることにしました。すでに入札期限は迎えていましたが、ウクライナのユニセフが調達公示していたのは「ランドクルーザープラドを10台」です。
車両調達公示で具体的車種まで指名しているのは、それだけトヨタ車が信頼されている証でしょう。そしてTGS社は、このような調達公示に入札しているのではないかと思われます。
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ジブラルタルにユニークなトヨタの代理店があることはわかりましたが、一般消費者向けではありませんでした。となると、フツーのジブラルタル在住者はどうやってトヨタ車を買えばいいのでしょう?
検索してみると、バッサドーン・モーターズという会社のホームページが出てきました。乗用車13ブランド、商用車6ブランドを取り扱っている様子ですが、住所はなんとTGS社と同じ! ちなみにTGS社の社長の名前を調べてみたら、ジョージ・バッサドーン氏でした。きっとジブラルタル自動車界の“ドン”なのでしょうね。
これまでジブラルタルは、筆者の中の“訪れてみたい国リスト”ではノーマークでしたが、TGS社の存在を知り、とても気になる国となりました。
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