新車なのに走行距離99万9997km!? オークションをにぎわせたBMW「Z1」の数奇な生い立ちとは
希少性の高さでコレクターに人気の2シーターオープン
希少性の高さから、昨今、コレクターたちに人気のBMWの2シーターオープン「Z1」が、2023年2月にフランス・パリで開催されたRMサザビーズのオークションに出品されていました。
しかもこの個体、新車とうたわれているにも関わらず、総走行距離を示すオドメーターが99万9997kmを指していたことでも注目を集めました。

BMWの2シーターオープンカーである「Z」シリーズ。なかでも1987年に市場投入された初の「Z」シリーズである「Z1」は、センセーショナルなモデルでした。
明確にうたわれていたわけではありませんが、先端技術をテンコ盛りし、ミニ「モーク」やシトロエン「メアリ」のように開放的な“ビーチクルーザー”を目指していたのではないでしょうか?
シャシーやマルチリンク式のリアサスペンションは「Z1」用の専用設計でしたが、エンジン、トランスミッション、フロントサスペンションなどは同時期のE30型「3シリーズ」の「325i」ゆずりでした。「Z1」のためのマルチリンク式リアサスペンションは、後にデビューした「3シリーズ」や、同時期にBMWが英国のローバーを買収して投入したローバー「75」などにも採用されています。
「Z1」がスペシャルなのは、ドアが上下にスライドして開閉することです。ドアの開け閉めはリアクオーターパネルに設けられたカギ穴を押すことで操作します。ドアを持ち上げる“取っ手”が設けられていますが、これは万一ドアが下がったままの場合に使うものです。
サイドシルは一般的なクルマよりも高めで、乗り降りにはコツが必要です。ロールバーがフロントピラーの上部に設けられていて、これをつかんで乗り降りすることが前提となっています。なお、サンバイザーはロールバーから“生えて”います。
「Z1」の車内に乗り込むと「3シリーズ」っぽさを随所に感じます。ドアの開閉は足下のサイドシル横に設置された、見慣れたドアの開閉レバーでおこないます。ドアは開けた(下げた)ままでも運転できますし、運転中に閉める(上げる)ことも可能です。
また、ボディパネルは取り外し可能で、オーナーの好みで異なる色のパネルに交換することもできます。当時、BMWは「40分で全ボディパネルを交換できる!」とうたっていましたが、実際には6時間ほどかかるといわれています。
新車時の価格は、同時期のフラッグシップセダンである「7シリーズ」を超え、ポルシェ「911」と同等でした。ただし、「Z1」はスペシャルなモデルではありましたが、ハイパフォーマンスカーではありませんでした。現在では総生産台数8000台という希少性ゆえ、コレクターにウケています。
●走行距離が少ないほど評価が高いと思われがちだが
今回、RMサザビーズのオークションに出品され「Z1」は、新車とうたわれているにも関わらず、オドメーターが99万9997kmを指していました。インテリアの写真を見る限り、新車といわれても疑わないコンディションであるにもかかわらず、です。
RMサザビーズの車両解説によると、新車の納車時にオドメーターが進んでいることを嫌うオーナー向けに、工場出荷時にメーターを巻き戻すことがあったとか。クルマは生産完了後、オーナーの元に届くまで走行検査、工場敷地内移動、輸送用移動、カープール内移動などを経るため、どうしてもメーターが進んでしまいます。新車であってもオドメーターの表示がゼロというのはあり得ません。
今回、オークションに出品された個体の初代オーナーは、ル・マン24時間耐久レースで優勝した経験を持つ人物でした。しかし彼は、購入してから一度も「Z1」を運転することはなく、次のオーナーも2014年に購入後、一度も運転することなく手放したそうです。両者とも、値上がりを期待して動態保存していたのでしょうか?
一般的に、走行距離は中古車の“程度”を判断する際の重要な目安として用いられています。少なければ少ないほど高く評価されがちですが、今回の「Z1」は8万6250ユーロ(約1251万円)での落札となりました。海外の中古車マーケットで販売されている、走行距離2万km程度の個体と大差ない金額でした。
さすがに走ったことのないクルマは、それなりのメンテナンスが必要だと敬遠されたのでしょうね。中古車はバランスが大事だということなのでしょう。
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