なぜ日本では不人気でヨーロッパでは定番化? 「ステーションワゴン」を考えてみた
日本やアメリカ市場では絶滅危惧種となったワゴン
人の気持ちは移ろいやすいもの。だからこそ、次々に新しいトレンドが生まれ、古いものは消え去ってゆく。日本市場におけるクルマのジャンルでいえば、「ステーションワゴン」が、そうした消えてゆくトレンドといえるだろう。
かつての日本車には、ほとんどのセダンにバリエーションとしてステーションワゴンが用意されていた。「クラウン」にもステーションワゴンがあったし、スカイラインのステーションワゴン版とでも呼べる「ステージア」の人気は高く、スバルの看板車種は「レガシィ ツーリングワゴン」であった。
ところが気がつけば、その多くのステーションワゴンは姿を消し、現在残っている車種は、トヨタは「カローラツーリング」と「プリウスα」、スバルの「レヴォーグ」、マツダ「マツダ6」、ホンダは「シャトル」と「ジェイド」があるが後者はもうすぐ終売予定だ。あとは商用バンくらいしか、このボディタイプは販売されなくなっている。
では、いったいなぜ、そうした事態に陥ったのだろうか。
そのヒントとなるのが欧州市場だ。かの地では、今もセダンのバリエーションとして数多くのステーションワゴンが存在している。
一方、アメリカ市場も日本と同様にステーションワゴンは絶滅危惧種になっている。日本とアメリカがダメで、欧州はOK。そこにある違いとはなんなのだろうか。
考えられる理由は、アウトバーンという存在だ。アウトバーンはドイツの高速道路のことで、一部の区間は一応「速度無制限」で、いくらでもスピードを出してよい。
最近では、アウトバーンでも速度制限区間が増えているとはいえ、それでも制限は130km/hなどで、現状の日本やアメリカなどよりも高速だ。
実際に筆者がアウトバーンの速度無制限区間を走った経験でいえば、速いクルマで150km/hから180km/h、普通のクルマが120km/hから140km/hほどで流れている。無制限といっても、皆が皆200km/hも300km/hも出しているわけではないのだが、確実に日本やアメリカなどよりも速度は高い。
いっぽう、制限速度区間になると、速度が一気に下がる。まさに急ブレーキ。そして解除になると一気に速度があがる。アクセルペダルを本当に床まで踏みしめないと流れに乗れないほどの急加速を見せるのだ。
パワーやトルクがあり、なおかつブレーキ性能の高いクルマがドイツ車に多いのも理解できる走行環境ともいえる。
また、欧州はEU圏内であれば、国から国の移動も非常に簡単だ。パスポートチェックのない国境も多い。そのためドイツ車以外のフランスブランドやイタリアブランドのクルマがアウトバーンを走る姿も数多くみられた。
そうした高速移動をおこなう上で、ステーションワゴンは非常に便利な存在だ。セダンと同様の空気抵抗係数(Cd値)で、セダンよりも荷物をより多く搭載できる。
SUVやミニバンは、空気抵抗が大きく重心も高いので、セダンやステーションワゴンほど高速走行が得意ではない。実際に、180km/h以上でSUVやミニバンを運転することを想像してみてほしい。きっと、SUVよりもステーションワゴンを選ぶ人の気持ちもわかるはずだ。
そういう意味で、欧州にはステーションワゴンを必要とする環境が存在する。だからこそ、今なおステーションワゴンのニーズがあり、それに応えて自動車メーカーが販売しているのだ。
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