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「ゲレンデヴァーゲン」を改造した“奇妙なオープンカー”がオークションに登場! 実は名コーチビルダーがつくった「掘り出し物」でした

メルセデス「Gクラス」ベースの異色のリフトアップ・オープンカー

 1996年に、当時、フランスにあったコーチビルダーのひとつ「ルイ・ユーリエ・カロッセリー」がパリサロンでお披露目した「イントルーダー・コンバーチブル」。

 まるでメルセデス・ベンツの初代「SLK」をリフトアップし、トラック用の大型タイヤを履かせたような雰囲気を持つキテレツなモデルが、先頃、アメリカ・マイアミで開催されたボナムズのオークションに出品されました。

名オークションハウスのボナムズに出品された「イントルーダー・コンバーチブル」(C)ボナムス
名オークションハウスのボナムズに出品された「イントルーダー・コンバーチブル」(C)ボナムス

 ルイ・ユーリエ・カロッセリーは、かつてフランスで最も長く存続したコーチビルダーのひとつです。

 1920年代に、ワゴンと客車を製造すべく設立された同社は、1928年にフォードのシャシーにパン屋さんのバンを載せた最初の車体を製造。1970年代に自動車への関心が高まるまで、同社はバスや商用車の車体製造を手がけてきました。

 ユーリエ社はさまざまなタクシー、リムジン、そしていくつかの奇抜なコンセプトカーを手がけていましたが、やがて大手メーカーからプロトタイプやコンセプトカーの製造、少量生産車の開発などを依頼されます。

 同社の作例が、シトロエン「BX」、「CX」、「エグザンティア」などのステーションワゴンや、プジョー「206CC」など少量生産オープンカー。しかし、それらの生産も後に終了し、2014年には事業を終了してしまいました。

 そんなユーリエ社が、1996年にパリサロンにてお披露目したのが「イントルーダー・コンバーチブル」です。

 メルセデス・ベンツの初代「SLK」をリフトアップして、トラック用の大型タイヤを履かせたような雰囲気のこのモデル、実はそのベースとなっているのは、同時期にメルセデス・ベンツから発売されていた「G320」、いわゆる「ゲレンデヴァーゲン」です。

 ボディはユーリエ社のオリジナルで、流用しているパーツは「G320」のものだけというこのキテレツなオープンカーが、先日、アメリカ・マイアミで開催されたボナムズのオークションに出品されました。

 ちなみに、1999年に世界一周旅行をおこなった著名な投資家ジム・ロジャーズ氏は、本当に「Gクラス」のプラットホームに「SLK」のボディを融合させた「ミレニアム・メルセデス」なる冒険車両を特注していました。

●およそ30万ドルを投じてレストアされたものの……

 ボナムズのオークションに出品された「イントルーダー・コンバーチブル」は、現代のメルセデスAMG「GT」に通じるテイストも感じられるなど、メルセデス・ベンツにとっては案外、影響力のあるクルマだったのかもしれません。

 鋼鉄とカーボンファイバーでできたボディカウルの下には、基本的には「G320」のシャシーが存在し、エンジンにはM104型直列6気筒ツインカムガソリンユニットが搭載されています。

「イントルーダー・コンバーチブル」は、「G320」のトランスミッション、トランスファーケース、ソリッドアクスル、トリプルロックディファレンシャルを流用しており、12インチ(約30cm)の最低地上高を確保。

 サスペンションのみ、重量の違いを考慮してリセッティングが施されていたそうですが、オフロード性能は「G320」のままをキープしているということです。

 デザインを担当したデシャン氏は、コンピュータなどのサポートを用いずに設計する、実物大模型とクレイモックアップでの作業を好んでいたそうです。

 ボディが完成すると、ユーリエ社の少人数のチームがインテリアデザインを即座に手がけ、メルセデス・ベンツの純正部品やスイッチ類を利用し、親しみやすさを保ちつつも、鮮やかなブルーのレザーでキャビンを包み込みました。

 ハイライトともいうべきメタルハードトップは、ラゲッジスペースにすっきりと収納できるほか、取り外して広い荷室を確保することも可能。ライトシステムにはこの時代としては革新的なLEDを採用しています。

 そんな「イントルーダー・コンバーチブル」は世界中のモーターショーを駆け巡り、その途中で何度もボディカラーを塗り替えられています。香港のショーでは赤く塗られ、パリとハンブルクではホワイトに、そしてジュネーブとトリノではシルバーに仕上げられました。

* * *

 その後、長い間、人々の目に触れることのなかった「イントルーダー・コンバーチブル」ですが、世界的に有名なレストア会社であるイギリスのDKエンジニアリングにて大規模なレストアが実施されました。

 レストアに要した費用は、およそ30万ドル(約4838万円)。レストア費用の領収書やレストア中の工程の写真、宣伝用のパンフレットや当時の写真など、大量のファイルも付属しています。

 30万ドルもの費用をかけてレストアされた「イントルーダー・コンバーチブル」ですが、ボナムズの落札予想価格25万~30万ドル(約4032万円〜4838万円)と控えめ。しかし、いざフタを開けてみると、落札価格はわずか7万2800ドル(約1174万円)でした。

 クルマ自体は、クラシックカーのオークションで見かける機会も稀な“掘り出し物”だったのですが……。今後、「イントル―ダー・コンバーチブル」のオークション価格がどのような動向をたどるのか、引き続きチェックしていきたいと思います。

Gallery 【画像】これが「ゲレンデヴァーゲン」を改造したキテレツなオープンカーです(16枚)
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