“世界に292台しかない名車”を改造!「ワケありオープンカー」なぜ誕生? 高額落札も納得のポルシェ「959スピードスター」の秘密とは
オープン仕様のポルシェ「959」はなぜ誕生したのか?
先ごろイタリア・ミラノで開催されたRMサザビーズのオークションに出品された1台のポルシェ「959」を見たとき、驚きを隠せませんでした。なんとこの当該車両、36年前にオープン仕様に改造された世界で唯一の「959スピードスター」だったのです。その希少性が評価されたのか、今回のオークションでは129万8750ユーロ(約2億2077万円)で落札されました。

ポルシェ「959」は、1980年代の“究極のポルシェ”でした。「コンフォート」と「スポーツ」という2グレードが設定され、可変式サスペンション(「スポーツ」には不採用)や加減速・コーナリングなどの車体状況に応じて前後の駆動力配分をコンピュータで自動制御する高度な4WDシステムを搭載。
さらに、当時としては画期的だったタイヤ空気圧モニタリングシステムや超軽量な中空マグネシウム合金ホイールなど、搭載されたメカニズムや採用された装備はとにかく斬新でした。
そして、1987年11月6日、ドイツ・シュトゥットガルトの生産ラインから1台のポルシェ「959コンフォート」がラインオフしました。シルバーメタリックの洗練された外観に、カシミアベージュとブラックのツートーンレザーインテリアを備えたこの車両は、レーシングドライバーのユルゲン・レシグに納車されました。
レシグといえば、1995年のデイトナ24時間耐久レースで優勝した経験を持ち、1987年のル・マン24時間耐久レースでは2位という輝かしい成績を残しているドライバーです。
1988年、納車から数千kmを走行したレシグの「959」は、アウトバーンでクラッシュしてしまいます。デイトナ優勝ドライバーでも不慮の事故は避けられなかったようです。
その後、レシグの「959」は、ポルシェレーサーでもある職人、カール・ハインツ・フォイステルの手に渡ります。フォイステルはレシグの「959」を単に修理するのではなく、世界に前例のない特別な1台へと改造することを決意します。
ケルン近郊の小さな村にある専門工房で、2名の職人とともに約4000時間という膨大な時間をかけて改造されたレシグの「959」、世界唯一の「959スピードスター」へと変貌を遂げたのです。
●ふたりの職人が4000時間かけて大改造
1990年2月の『スポーツカー・インターナショナル・マガジン』が伝えているように、「959スピードスター」は上質なクルマへの深い関心と愛情を持つ3人のアイデアと真のドイツの職人ワザを反映しています。
エクステリアはグランプリホワイトに塗装され、鮮やかな青いレザーインテリアとの組み合わせで特徴的なコントラストを持つ1台となりました。
また、単にルーフを切り取っただけでなく実用性も考慮されているのがポイント。シフトレバー脇に設置されたスイッチで電動開閉できるソフトトップ、取り外し可能なハードトップが用意されました。
さらに、今回オークションに出品された「959スピードスター」には、輸送ケース入りのハードトップ、トノカバー、交換可能な専用フロントガラス、予備のドアミラー、そしてオーナーズガイドが付属していました。
こうして完成した「959スピードスター」は、1989年9月の「フランクフルト国際モーターショー」と同年12月の「エッセンモーターショー」で披露されました。
ちなみに、当時、フォイステルが提示した価格は約120万ドル(現在のレートで1億7324万円)で、1989年当時としては信じられないほど高額だったそうです。
実際、フォイステルが「959スピードスター」をいくらで売却したかは不明ですが、1990年にドイツのコレクターであるベルク・クラウスに売却され、世紀をまたいで大切に所有されてきたようです。その後、2008年に、この稀有な「959スピードスター」は新たなオーナーの元へ売却されています。
「959スピードスター」はいわゆる事故車(中古車業界用語では“修復歴アリ”)であり、一般的にはマイナス評価されるものですが、不慮の事故から36年前に世界で唯一のオープン仕様として新たな息吹を注ぎ込まれたことが高く評価され、今回の高額落札につながったようです。
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