未来のテレビの最適解!? “4K×超短焦点×webOS”で13万円台~のプロジェクター「LG CineBeam S」の実力とは――家電で読み解く新時代|Case.07
テレビを置きたくない層に支持される「映す自由」
いま、コンシューマー向けプロジェクター市場がかつてないほど盛り上がっている。背景にあるのは、Z世代やインテリアにこだわりのある“テレビを持たない/置きたくない”という生活者の価値観の変化だ。
テレビを見る時間は減っても、映像を観る時間はむしろ増えている。スマートフォンやタブレット、PCがあればNetflixもTVerもYouTubeも見られる時代。では、リビングや寝室で“いい映像体験”を得たいとき、人々はどんな選択をするのか。
そこで注目されているのがプロジェクター。とくに近年はエントリーからミドルレンジ帯のプロダクトが高機能化し、価格も手ごろに。
フルHDはもちろん、4K対応の製品も10万円台で手が届くようになった。なかでも最新トレンドとして注目したいのが、“短焦点プロジェクター”だ。
壁からわずか数十センチで大画面を投影できるというこのタイプは、狭い部屋でも設置可能。スクリーンの代わりに白い壁さえあれば、どこでもシアターになる。
まさに“テレビを置かない暮らし”にぴったりの映像ガジェットであり、かつてはホームシアターマニアのための存在だったプロジェクターが、日常使いの領域に降りてきた瞬間でもある。

10万円台で4K+超短焦点+webOS。この構成は反則級
そんななかLGが放った新製品「LG CineBeam S(PU615U)」は、まさに“全部入り”の一台だった。
まず目を引くのは、そのサイズ感。片手で持てる1.9kgのボディに、4K(UHD)対応のRGBレーザー光源、最大100インチを約40cmの距離で投影できる超短焦点レンズを搭載。
しかも、19万9800円という価格でwebOSを標準搭載している。つまり、プロジェクター単体でNetflix、YouTube、TVer、Prime Video、Disney+といったVODサービスがサクサク再生できるのだ。もはやFire TV StickやApple TVを別途つなぐ必要もない。
HDMIとUSB-Cポート、Bluetoothも備え、スマホやPCからのミラーリングも容易。さらに、USB-Cからの給電でモバイルバッテリー運用も可能という、可搬性にも優れた設計だ。
この仕様で、Makuakeでの最速割価格は13万5860円。正直、スペック表だけを見たときは「これは本当にその価格で成立するのか?」と疑ったほどだ。

実際使ってみてわかった「今どきプロジェクター」の完成形
では、実際に使ってみるとどうだったのか。
まず驚いたのは、“置いてすぐ映る”という体験のスムーズさ。投影先との距離が約8cmで40インチ、40cmで100インチという構造上、設置場所を細かく調整する必要がなく、テーブルやサイドボードの上に置くだけでOK。
さらに、一度設定してしまえば、高速オートフォーカスと自動台形補正が優秀で、電源を入れて数秒で歪みのない画角が整う。
画質は、RGBレーザーらしい発色の良さと、DCI-P3 154%の色域、HDR10対応によるダイナミックなコントラスト表現が光る。
明るい部屋でも映像が沈まず、特に暗部の黒の締まりと、鮮やかなカラーの抜け感は価格以上のクオリティだ。
webOSのUIも直感的で、操作レスポンスも速い。LGのスマートモニターで培ったOS設計の経験値が、プロジェクターにも活きていると感じた。

PCからのミラーリング機能が非常に便利だった。自宅の書斎などで、ノートPCの画面をそのまま大画面で映せるというのは、資料などの制作にはもちろん、リモート会議にも使えるし、ちょっとしたプレゼンや作業画面の共有にも最適だ。
また、オートフォーカスと台形補正のスピード感は特筆すべき点だ。設置して数秒で自然な画角に整い、画面の歪みもほとんど気にならない。
場所を移動したり、角度を変えても、すぐに適切な長方形画面で映せるので、これは毎回起動時にストレスなく使える、生活家電としての重要な完成度の高さにつながっている。
一方で、やや惜しいと感じたのは明るさと音質。 明るい日中のリビング、特に直射日光が差し込むような環境では、映像がやや霞んで見えてしまう場面があった。
カーテン越しの明るさであれば問題ないが、常時リビングで使いたいユーザーにはやや光量不足に感じられるかもしれない。
音質に関しても、Dolby Atmos対応とはいえ、低音の厚みや空間の広がりという点ではやや物足りなさが残る。とはいえ、外部スピーカーを接続すれば改善できる範囲なので、音にこだわりのあるユーザーは追加のスピーカー導入も検討したい。
加えて、インテリア好きにとって嬉しいのが「ウォールスクリーンモード」の存在だ。
ベージュやグレーなど、白壁以外の壁でも色調を調整できるため、内装を崩すことなくナチュラルに映像を馴染ませることができる。これにより、プロジェクター設置が“インテリアの妥協点”にならずに済むのは大きな魅力だ。

比較対象で見えてくる“絶妙なポジション”
プロジェクター市場は盛況だが、短焦点、4K、スマートOS搭載という三拍子がそろったモデルはまだ限られている。
たとえばAnkerのNebula Cosmosシリーズは、明るさや音質などに優れた高性能ポータブルプロジェクターだが、短焦点ではなく設置スペースをある程度確保する必要がある。
popIn Aladdinシリーズは天井一体型という画期的なコンセプトで日本市場にフィットしているが、設置の自由度という点では制約もある。
その点、LG CineBeam Sは“持ち運びもできる据え置き機”として、ちょうどよいバランスを実現している。
コンパクトながら据え置きの安定感、そして短焦点という省スペース性。webOS搭載でストリーミング環境も一体化し、まさに一人暮らしからファミリーまで幅広く対応できる万能機と言える。

IFA2022で見た「存在感を消す家電」がついに家庭に届いた
私は2010年代から毎年IFA(国際家電見本市)に足を運んできたが、2022年のベルリンで強く印象に残っているトレンドがあった。
それは「存在感を極力消す家電」だ。大型テレビでさえ“部屋の風景に溶け込む”ことを意識し、ディスプレイ自体をインテリア化する方向へシフトしていた。画面を絵画のように見せる、使っていないときはフレームと化す、あるいは壁紙に同化させる──。
LG CineBeam Sは、まさにこの延長線上にある。プロジェクターという存在自体が、使わないときはただの小さなキューブに過ぎない。必要な時だけ現れて、映像を映し、また姿を消す。
これこそ、ウェルビーイングを追求する次世代家電のあり方ではないかと、2022年に予測した“未来像”が、いま家庭向けに現実のものとして届いたという印象だ。

未来のホームガジェットは「テレビじゃない」
振り返ってみれば、テレビという存在は、20世紀の家庭にとって象徴的な家電だった。リビングの中心に鎮座し、家族の視線と時間を束ねる装置だった。
しかし、2020年代の今、情報やコンテンツは個人に最適化され、空間もライフスタイルも多様化した。そこに置かれるべき映像デバイスもまた、“主張しすぎず、必要なときだけ活躍する”存在であるべきだ。
「LG CineBeam S」は、その未来を先取りするようなガジェットだった。テレビを置かない暮らし、旅先での映画体験、ベッドルームでの癒しの映像投影──。
これまでテレビにはできなかった“映像の自由”を、この小さな筐体が実現している。本連載のタイトル通り、まさに“時代の空気”を映し出す、ひとつの象徴的な家電であると断言できる。
この価格で、ここまでの体験を提供してくるLGの戦略は見事だ。家電スペシャリストとしても、そして未来の住空間を考える起業家としても、「これは買いの一台」と胸を張っておすすめしたい。
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