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萬古焼の里で見た“土を家電にする”現場とは——タイガー〈炊きたて〉JRX型が生む土鍋ご泡火炊きの一膳【家電で読み解く新時代|Case.19】

土鍋を「精密部品」に変える発想

 起業家であり、家電スペシャリストでもある滝田勝紀氏が、連載「家電で読み解く新時代」と題してテクノロジーの奥に潜む“時代の空気”を紐解く。

 三重・四日市。萬古焼(ばんこやき)の産地に息づく窯業の技と、最新の炊飯テクノロジーが握手する場所がある。今回の取材先は、タイガー〈炊きたて〉「土鍋ご泡火炊き JRX-S060/S100」の“心臓”、本土鍋の内なべを手がけるミヤオカンパニーリミテド(MIYAWO)だ。案内は営業・開発の廣田哲平さん。

 萬古焼は、江戸期から続く四日市の伝統工芸。耐熱・耐久に優れ、生活道具として鍛えられてきた。タイガーが2006年に“内なべ=本物の土鍋”を打ち出して以来、その素地には萬古焼の系譜が流れている。

 今回のJRX型でも、土鍋は単なる“味づけ”ではない。熱を受け、溜め、返すという物理の器——つまり精密部品として機能している。

「炊飯器用の土鍋は、焼き物の常識ではなく“寸法の世界”で生きています」

 廣田さんの第一声は、産地の空気を一変させる。一般の土鍋が収縮や個体差を“味”として許容するのに対し、JRX型の内なべは底面厚みを±0.3mm、要所寸法(内径)を±1.0mmで詰める。IHの熱は正直で、底のわずかな厚薄が“ごはんの温度地図”を乱すからだ。

シリーズ最新のJRX型。萬古焼の本土鍋を“心臓部”に据えた最上位モデル
シリーズ最新のJRX型。萬古焼の本土鍋を“心臓部”に据えた最上位モデル

世界中から集められる原料と緻密な調整

 原料置き場には、ベトナム、日本(北陸)、中国、欧州、韓国……世界各地から選んだ約10種類の天然原料袋が積まれている。同じ鉱山名でも採掘面が変われば性状が変わる。

 そこで、粉砕・ブレンドしたスラリーを地下タンクに“5t程の仕込み約20回分(100t程度)”を蓄えて撹拌し、ロット差の波をならす。

 次にフィルタープレスで“ケーキ”状に脱水し、およそ1か月寝かせる。さらにパグミル(練り)で締まりを調整。

「夏は柔らかめ、冬は硬め。 最後は指の感覚でも決めます。ここが土の“伸び方”(成形の安定)に直結するので」と廣田さん。

 成形を終えた素地は、約50mの連続炉(窯)で最高約1250℃、半日かけて一次焼成へ——ここが萬古焼の伝統と、家電の精度が握手する地点だ。

 焼き物は通常、段階的に温度を上げるが、ここでは最初に高温で“寸法を決める”。続く釉薬焼成(1100〜1200℃)では、ディップではなくスプレーで膜厚のバラつきによる耐熱・耐衝撃性のバラつき抑制し、寸法変動を最小化する。

 さらに萬古焼の知恵としての通常二度焼きに加え、内なべは寸法、性能、発熱体性能を最大限向上させるために萬古焼に無い焼成を1度加え、“三度焼き”で素地を鍛える。

 乾燥と焼成を重ね、緻密に締め上げて高い強度と寸法の安定を両立させるアプローチだ。伝統の器づくりを、“家電の内なべ”として再設計している。

営業・開発の廣田哲平さん
営業・開発の廣田哲平さん

泡と火がごはん輪郭を守る

 萬古焼の土鍋が生むのは、細かくやさしい“泡”だ。激しい対流で米表面を荒らさないこの泡が、ハリとつや、輪郭の保たれた粒立ちを支える。

 製品名の「土鍋ご泡火炊き」は、その物理を正面から言い切ったものだ。

 JRX型では底面に発熱体シートを手貼りで密着し、面で熱を立ち上げる。R面にも熱を回すべく、サイズや追従性の試作を重ね、気泡や歪みの排除に手間を惜しまない。

 さらに、底面発熱体にはシラス台地由来の微小中空粒子(シラスバルーン)を活用し、断熱と立ち上がりのバランスを最適化。

 コントロール側では、二層構造のWレイヤーIHと匠火センサーが土鍋の蓄熱特性を読み込み、直火の“炎の温度差”に近い熱のグラデーションを再現する。

 結果として、激しくもやさしい対流が生まれ、甘みを引き出しながら、米の輪郭を壊さない。

NextNEXT:厳格な検査体制から生まれる最高のモノづくりとは
Gallery 【画像】萬古焼で作られるタイガーの炊飯器を画像で見る(35枚)
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