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2度と作られることのない“究極で至高の市販ポルシェ” 走行距離2万キロの2005年式「カレラGT」をオークションで発見 気になる落札予想価格とは

究極で至高の市販ポルシェ

 2025年10月にベルギーで開催されるブロードアローオークションに、2005年式ポルシェ「カレラGT」が出品されます。

 どんなクルマなのでしょうか。

ブロードアローオークションに出品される2005年式ポルシェ「カレラGT」
ブロードアローオークションに出品される2005年式ポルシェ「カレラGT」

「レーシングカー専用の設計と製造プロセスがカレラGTには採用されており、一般的な市販車とは異なるシステムが使われている」──。

 ポルシェが販売店向けに作成した製品資料は、この一文から始まります。そこには、レーシングカーの純粋な魂を公道走行可能な車に落とし込むという、ポルシェの挑戦が凝縮されています。

 カレラGTは単なる2000年代のスーパーカーではなく、モータースポーツの血統をそのまま受け継ぎながらも、公道で体験できる究極のドライビングマシンでした。

 カレラGTの開発の物語は、困難と再生の歴史そのものです。社内で「SCM(Super Car Millennium)」と呼ばれたこの計画は、1990年代後半に秘密裏に始まりました。当初は試作車として構想され、動力源にはポルシェがかつてF1とル・マン・プロトタイプ用に開発していた5.5リッターV10エンジンが搭載されました。

 このエンジンは1990年代初頭にF1用V12エンジンの後継として開発された自然吸気ユニットであり、その後ル・マン参戦計画「LMP2000」のために排気量を拡大して使用される予定でした。しかしレギュレーション変更によりプロジェクトは中止となり、V10はしばらく眠ることになります。

 転機となったのは2000年のパリ・モーターショーでした。

 ポルシェが持ち込んだ試作車は、パリ市内を自走して登場し、群衆を驚かせました。未来的なデザインとV10が奏でる甲高いサウンドに人々は魅了され、カレラGTの市販化を望む声が一気に高まりました。当時ポルシェはSUV「カイエン」の開発に注力していましたが、その商業的成功によって得た資金がカレラGTの市販化を後押しすることになります。

 そして2003年のジュネーブ・モーターショーで正式発表され、同年後半からデリバリーが始まりました。

 カレラGTは、100kgという軽量ながら極めて高剛性のカーボンファイバー強化プラスチック製モノコックシャシを採用しました。

 これはATRコンポジッツ社によって製造され、レーシングカーそのものの構造を持っていました。サスペンションもレーシング仕様で、全輪にステンレス製ダブルウィッシュボーンとロッカーアーム式コイルオーバーを採用しています。

 19インチ(フロント)と20インチ(リア)のマグネシウム製センターロックホイールには、カーボンセラミック製のVブレーキディスクと6ピストンキャリパーが組み合わされ、空力性能も徹底的に追求されていました。フラットなアンダーボディと120km/h以上で自動展開するリアウィングが、その精緻な設計を象徴しています。

 その中心となるのは5.7リッター自然吸気V10エンジンです。レース用プロトタイプの5.5リッターから拡大されたこのエンジンは、チタン製コンロッドやドライサンプ潤滑方式を採用し、8400回転まで回る設計でした。

 612馬力・590Nmを発揮しながら重量はわずか205kg。組み合わせられる6速MTには169mmの小径カーボンセラミッククラッチが使われ、まさに職人技を求められる“アナログなスーパーカー”でした。

 総重量1380kgという軽さを武器に、0-100km/h加速は約3.9秒、最高速度は330km/hに達しました。2004年7月にはワルター・ロールがニュルブルクリンク北コースを7分28秒で走破し、当時のベンチマークとして長く語り継がれる記録を打ち立てました。

 一方で、カレラGTは過酷なサーキット性能だけでなく、日常で扱える上品さも併せ持っていました。室内はレザー仕上げで、エアバッグやパワーウィンドウ、クライメートコントロール、BOSEサウンドシステムなどを備え、快適性も犠牲にしていません。シフトノブにはポルシェ917を思わせる積層木が使われ、歴史的なオマージュを感じさせます。

 また取り外し可能なカーボン製ルーフパネルと彫刻のようなボディラインが、停車時にも存在感を放ちます。

 今回出品されるカレラGT(シャシーナンバー0871)は、シールグレーメタリックの外装にアスコットブラウンとブラックのレザー内装を組み合わせた英国/アイルランド仕様の希少な「C16」モデルです。

 XT仕様のバケットシートやマニュアルエアコン、BOSEオーディオを含むCDラジオシステムが装着されています。

 これまでにわずか3人のオーナーしか経ていません。現在はポルシェとミシュランが共同開発したPilot Sport Cup 2 Nスペックタイヤを装着しています。この新開発タイヤにより、ファクトリードライバーのヨルグ・ベルクマイスター選手はニ、ュルブルクリンクで7分12.69秒という驚異的なラップタイムを記録しました。これはワルター・ロールの2004年の記録を16秒も短縮する快挙でした。

 2025年9月にはポルシェ・ツェントルム・シュトゥットガルトで販売準備のための整備も行われ、車両は完璧な状態を保っています。サービスブックやマニュアルもすべて揃っており、極めてコレクターズバリューの高い一台です。

 極秘裏に構想され、一度は中止され、そして見事に甦ったカレラGTは、フェラーリ「エンツォ」やメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」、「フォードGT」と並ぶ存在でありながら、そのどれとも異なる純粋なレーシングスピリットを宿しています。

 自然吸気V10と6速マニュアルを最後に搭載したこのスーパーカーは、いまなお「公道を走るレーシングカー」として語り継がれる、時代を超えた傑作です。

 走行距離は2万1655km、2005年式ポルシェ・カレラGTの予想落札価格は135万ユーロから155万ユーロ(1ユーロ176円換算で約2億2850万円から2億7385万円)とされています。

Gallery 【画像】20年前の“究極のポルシェ”「カレラGT」を写真で見る(29枚)
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