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カレラGTや959超え!? 3億7000万円で落札された964型ポルシェ「911ターボ」の正体とは? 生産台数86台の「ライトウェイト」ってどんなクルマ?

IMSAスーパーカー選手権を制したレーシングカーの“公道版”

 クラシックポルシェの市場価値は、どこまで高騰を続けるのでしょう? 2026年の幕開けとなるRMサザビーズ・アリゾナオークションにおいて、ある1台の「964」に目が釘づけとなりました。その予想落札価格が、ポルシェの歴史的アイコンである「カレラGT」や「959」(ともに180万~220万ドル/約2億7000万円〜3億3000万円)をも凌駕する設定だったからです。

 当該車両は正確には、1993年式のポルシェ「911ターボS ライトウェイト(ライヒトバウ)」です。わずか86台しか生産されていない同モデルは、現代のハイパーカーに匹敵する価格で取引されているようです。

 RMサザビーズが掲げた予想落札価格は225万~275万ドル(約3億3750万円〜4億1250万円)。そして実際の落札価格は248万ドル(約3億7200万円)でした。

「911ターボS ライトウェイト」は、1992年の「ジュネーブモーターショー」でプロトタイプが発表され、ポルシェ・エクスクルーシブ・マニュファクトゥール部門によって開発された記念すべき第1号となりました。

 同プロジェクトを主導したのは、当時、ポルシェのエクスクルーシブ部門でマネージャーを務めていたロルフ・シュプレンガー氏と、テストドライバー兼エンジニアのローランド・クッサマウラット氏です。

 彼らが目指したのは、1991年に「IMSAスーパーカー選手権」を制したレーシングカーの“公道版”を世に送り出すことでした。

オークションに出品された、走行距離わずか633kmの「911ターボS ライトウェイト」。内装はレッドで統一(C)RMサザビーズ
オークションに出品された、走行距離わずか633kmの「911ターボS ライトウェイト」。内装はレッドで統一(C)RMサザビーズ

「911ターボS ライトウェイト」最大の特徴は、その名が示すとおり“ライトウェイト”、つまり軽量化です。

「911ターボS」と比較して、実に約180kgもの軽量化に成功しています。ボンネットとエンジンカバー、リアスポイラーにはカーボンファイバー強化複合材を採用し、窓ガラスも薄くしています。

 さらに、エアコン、パワーステアリング、リアシート、オーディオシステム、防音材など、快適装備の多くが削ぎ落とされました。結果、車両重量はわずか1290kgまで絞り込まれたのです。

 軽量化は、ポルシェのレース活動によって培われたノウハウでしょうし、同時期の「911RS」ですでに手慣れたものだったと思われます。

●走行距離わずか633km! オーナーこだわりの内外装は新車のよう

「911ターボS ライトウェイト」に搭載されたエンジンは、3.3リッターの“M30/69 SL型”水平対向6気筒ターボ。

 改良されたカムシャフト、大型化された燃料噴射装置、効率化されたターボチャージャーを装備し、最大ブースト圧1.0バールで最高出力は381psにまで引き上げられていました。標準の「911ターボS」と比べて61ps上積みされています。

 トランスミッションは5速MTのみの設定で、0-60mph(96km/h)加速タイムは4.7秒をマークしました。

 シャシーにも、モータースポーツ由来の技術が惜しみなく投入されています。

 シーム溶接で補強されたボディシェル、アルミ製のフロントストラットブレース、40mm低められた車高、そして18インチのスピードライン製3ピースホイールが装着されていました。

 サスペンションはM030ヨーロッパスポーツパッケージ仕様で、より硬いスプリング、ストラット、ショックアブソーバー、そしてより太いスタビライザーバーを採用しています。

 ブレーキには、“ビッグレッド”と呼ばれる4ピストンキャリパーとクロスドリルドローターが4輪に装備され、減速性能は1Gを超えるといいます。

 エクステリアは、フォグランプの代わりに設けられたブレーキ冷却ダクト、標準の「911ターボS」とは異なる形状のワンピース構造リアスポイラーが目を惹きます。リアのホイールアーチ前方にあるベンチレーションダクトは、ポルシェ「959」から受け継いだデザインとなっています。

 1992年3月の「ジュネーブモーターショー」に、ポルシェは「911ターボS ライトウェイト」のプロトタイプを準備し、同会場で60件の購入を前提とした問い合わせと25件の受注を獲得しました。これを受けて1992年5月22日、ポルシェの経営陣は80台の限定生産を承認。最終的には合計86台が出荷されたそうです。

 さらに、今回のオークションに出品された「911ターボS ライトウェイト」は、ポルシェエクスクルーシブのVIP顧客によってオーダーされた車両で、ミッドナイトブルーメタリックのボディにボルドーレザーの内装(オプション装備のロールケージまで本革巻き)を組み合わせています。

 また、ホイールの中心部はアメジストメタリックに塗られ、ゴールドのブレーキキャリパーを組み合わせるという独特のカラーコーディネートとなっています。

 なお、ホイール中心部のアメジストメタリック塗装は、オーナーのシグネチャー・カスタムなのだとか。オーナーが誰なのか特定はできませんでしたが、なんと4台(右ハンドル2台、左ハンドル2台)の「911ターボS ライトウェイト」をオーダーした人物であることは判明しています。各車、内外装の仕様は違えども、ホイールの中心部だけはアメジストメタリックに塗装されていたのだそうです。

 当該車両の走行距離はわずか633km(393マイル)で、まるで新車のようなコンディションが保たれていることにも注目です。

 快適性を捨て去り、軽さと速さだけを追求した「911ターボS ライトウェイト」。そのストイックな乗り味は、電子デバイスで守られた現代のハイパーカーでは決して味わえない究極の贅沢なのかもしれません。

Gallery 【画像】超カッコいい! 高額落札されたポルシェ「911ターボS ライトウェイト」を写真で見る(15枚)

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