「なぜ日本人は運動しないのか?」AIと無人化が叶える“シン・健康インフラ”。チョコザップ事業責任者が語るウェルネス戦略とは
コンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」が起こした革命とは
私は普段、VAGUE編集長としての日々を送る傍ら、キックボクシングの非常勤インストラクターとしても活動し、生徒さんたちに体を動かす楽しさやメンタルケアの大切さを伝えています。
リングの上で多くの方々を見てきて、一つ確信していることがあります。それは「習慣の力こそ、力になる」ということです。
最初から「毎日1時間ハードに追い込むぞ!」と意気込んで入会される方は、仕事が少し忙しくなると途端にジムから足が遠のいてしまいます。
逆に「週に1回、とりあえず5分だけでもサンドバッグを叩きに来る」という低いハードルを設定した人は、いつの間にか体力がつき、表情も明るく、ビジネスの場でも自信に満ちたオーラを放つようになっていきます。
しかし、現代のビジネスパーソンにとって、日常のルーティンに「運動」を組み込むのは簡単なことではありません。着替えの準備、移動時間、そして月額1万円前後の出費。これらの物理的・心理的な摩擦(フリクション)が、私たちのコンディション調整を阻んできました。
そんな業界の常識を打ち破り、2022年の誕生からわずか約3年半で国内1,800店舗超、会員数111万人以上という圧倒的な規模へと急成長を遂げたのが、RIZAPが展開するコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」です 。
1日5分、私服やスーツのままでも通える手軽さは、現代人のライフスタイルにまさに革命を起こしました。
今回は、RIZAP株式会社 執行役員であり、chocoZAP事業責任者を務める村橋和樹氏のお話を交えながら、彼らが掲げる「第2章」のウェルネス戦略について紐解いていきます。

なぜ日本人は運動しないのか? 幸福度との意外な関係
事業発足の背景について、村橋氏は日本が抱える構造的な課題を指摘します。
「日本は非常に『フィットネス途上国』といわれています。実際にフィットネスに通っている方は、全人口のたった3.3%(※1)しかいません。欧米の20%前後と比較すると非常に低い数字です。
さらに、国別の幸福度ランキングを見ても、日本は47位(※2)と低迷しています。私たちは、このフィットネス参加率と幸福度には強い相関関係があると考えています。
だからこそ、運動をもっと自由に、健康をもっと身近にすることで、日本の幸福度を底上げしたいという思いから、この事業をスタートさせました」(村橋氏)
彼らが第一にこだわり抜いたのが、月額2980円(税込3278円)という圧倒的な低価格です。
「ジムに通うための一番のハードルは『高い』ということです。だからこそ、事業開始時に『まずは2980円でやる』と決めました。物価高騰が続く今の日本社会においても、私たちが誰もが無理なく使い続けられる『健康の社会インフラ』になるためには、この価格は絶対にブラしてはいけないものだと考えています」(村橋氏)
テクノロジー×人の温もり:無人エコシステムの裏側
低価格を維持しながら急拡大を続ける上で、最大の壁となったのは「店舗の品質維持」でした。スタッフが常駐しない無人店舗において、清掃やマシンのメンテナンスをどう担保するのか。chocoZAPが出した答えは、テクノロジーと顧客との共創(コ・クリエーション)の融合でした。
「例えば、初期に導入した暗証番号式のロッカーは、番号忘れによるトラブルが多発し、無人運営には不向きだと判明しました。そこでオープンロッカーと持ち運び用のカゴを導入し、さらに1店舗に約10台配置したAIカメラによる見守りを強化するなど、絶えず試行錯誤を重ねて最適解を探ってきました」(村橋氏)
現在では、AIカメラが転倒などの異常を検知するだけでなく、スマートリモコンと連動して室温をリアルタイムで最適化しています。スタッフの姿は見えなくても、システムが先回りして快適な空間を維持する「スマートなおもてなし」が実装されているのです。
そして、テクノロジーと並ぶもう一つの柱が、「サポート会員(フレンドリー会員)」と呼ばれる顧客参加型の仕組みです。
「フレンドリー会員様には、スキマ時間を使って店舗の清掃や備品補充をお手伝いいただき、その謝礼として月額料金の割引等を行っています。
これにより店舗の自浄作用が働くのはもちろんですが、活動を通じて他のお客様から『ありがとう』と声をかけられることで、『誰かの役に立っている』という社会貢献や自己実現の生きがいにも繋がっています。
まさに、人手不足の日本社会に向けた『三方よし』の新しい運営の形なのです」(村橋氏)

第2章「いいこと、どんどん」が提示する3つの新体験
先行投資の回収を終え、強固な収益基盤を確立したchocoZAPは、いよいよ次なる成長ステージ「第2章」へと突入しました。
そのスローガンが「いいこと、どんどん」です。これは、サービスの改善や検証のプロセスを社会に公開しながら、アジャイル(俊敏)に進化させていくという力強い宣言です。
現在、特定の店舗をラボ(実験場)と位置づけ、3つの新たな施策が始動しています。
1つ目は「女性専用店舗」の導入です。
「日本の20代から40代の女性は、他の年代に比べて運動習慣率が低い傾向にあります。そこで、女性が安心して気軽に通えるジムとして女性専用店舗を出店しました。ピンクを基調とした外観や、視線が気にならない空間設計を施し、女性からのニーズが高いピラティスや下半身向けのマシンを中心に配備しています」(村橋氏)
2つ目は、中級者へのステップアップを支援する「ちょこガチゾーン」です。
「フリーウェイトに興味はあるけれど『上級者がいる中には入りづらい』という初心者の心理的ハードルを打破するため、あえて『ちょこガチ』と銘打ちました。従来のマシンには物足りなさを感じていた中級者の方にもご満足いただけるよう、ダンベルやベンチ台、ケーブルなどを追加で配備しています」(村橋氏)

「タイパ」から「サードプレイス」へ。令和の公民館構想
そして3つ目が、私たちビジネスパーソンのライフスタイルにも直結する「サードプレイス構想」です。
「これまでは、サッと来てサッと帰る『タイパ(タイムパフォーマンス)』を最重要視してきましたが、店舗が地域に浸透するにつれ、まるで『令和の公民館』のように、利用者同士が集う地域コミュニティの場になりつつあります。
今後はワークスペースやカフェ機能を設け、ラウンジのようにゆっくりと自分の時間を過ごせる空間をテスト導入していきます。運動だけでなく、日常の中でつい立ち寄りたくなる『第三の居場所(サードプレイス)』としての心地よさも追求していきます」(村橋氏)
インストラクターとしてキックボクシングの現場にいると、練習後に会員さん同士が笑顔で言葉を交わす時間が、実は何よりのストレス発散になっている光景をよく目にします。
身体を動かし、心地よい空間で一息つく。そんなサイクルが日常に組み込まれれば、私たちのウェルネスは劇的に向上していくはずです。
AIやIoTを駆使したスマートな無人運営でありながら、人の温もりや「居場所」としての価値を決して見失わないchocoZAP。
彼らが作り上げる新しい「健康インフラ」は、忙しい私たちが自分らしく輝き、前向きに進むための力強い味方になってくれることでしょう。
日々の小さな習慣の積み重ねが、やがて大きなパフォーマンスの差を生む。あなたも、まずは「1日5分」から、新しいウェルネス習慣を始めてみませんか。
(※1)出典:『2020 IHRSA Global Report The state of the health club industry』(IHRSA、2020)(IHRSA:国際ヘルス・ラケット&スポーツクラブ協会)
(※2)『World Happiness Report 2023』(SDSN、2023)より作成(SDSN:持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)
(※3)
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