お茶碗100杯分の汚れた空気を毎日吸い続けますか? それとも空気清浄機を使い続けますか…
売り場の季節と、空気の現実は必ずしも一致しない
4月後半から5月にかけて家電量販店を見て回ると、売り場の主役が少しずつ入れ替わっていくことに気づきます。春先まで目立つ場所に並んでいた空気清浄機は、徐々に売り場の奥へ移動し、代わってエアコン、扇風機、サーキュレーター、除湿機、衣類乾燥除湿機といった夏に向けた家電が前面に出てきます。
もちろん、これは売り場としては自然な動きです。生活者の関心が高い商品を目立つ場所に置くのは当然ですし、空気清浄機は季節要因に左右されやすいカテゴリーでもあります。
秋から冬にかけては乾燥や感染症対策、年明けから春先にかけては花粉対策というわかりやすい需要があり、11月から3月ごろにかけて存在感を高めます。
一方で、花粉のピークが過ぎると、多くの人の意識は空気から離れていきます。マスクを外す時間が増え、手洗いやうがいへの意識も冬ほど強くなくなる。窓を開ける機会が増え、外気を取り込む時間も長くなります。
ただ、ここで見落としてはいけないのは、5月になったからといって空気が急にきれいになるわけではないということです。

室内には、ホコリ、ハウスダスト、調理による油煙やニオイ、衣類や寝具から出る繊維くず、ペットの毛やフケ、人の出入りによって持ち込まれる外気由来の汚れなどが、日々発生しています。
つまり、5月以降は空気が汚れなくなる季節ではなく、むしろ空気に対する警戒心が下がりやすい季節だと考えるべきです。
空気清浄機を止めるということは、空気の汚れがなくなったということではありません。日常生活の中で見えない汚れに対して、生活者の意識が向かなくなったということでもあります。ここに、空気清浄機が“季節家電”として扱われてしまう理由と、その見直すべきポイントがあるように思います。

人は毎日、大量の空気を体に取り込んでいる
ウェルネスという視点で考えると、空気はもっと重視されるべき存在です。
ダイキン工業によると、人が1日に吸う空気の量は約1万4000Lとされています。これは、身近な感覚に置き換えると、お茶碗約100杯分に相当します。
私たちは、食べ物にはかなり気を使います。水にも気を使います。糖質、脂質、タンパク質、腸活、睡眠、運動など、体に入れるものやコンディションを整える習慣への関心は年々高まっています。
その一方で、毎日大量に体へ取り込んでいる空気については、意外なほど無頓着です。空気は目に見えないため、どうしても後回しにされやすい。
しかも、空気清浄機の効果は、掃除機のようにゴミが見えるわけでも、洗濯機のように仕上がりが目に見えるわけでもありません。だからこそ、生活者にとって価値を実感しにくい家電になりがちです。

現代人の多くは1日の大半を屋内で過ごしています。家、オフィス、車内、商業施設など、実際に吸っている空気の多くは室内の空気です。さらに、室内の空気は必ずしも屋外よりきれいとは限りません。
世界保健機関(WHO)や米環境保護庁(EPA)のデータでは、屋内の空気は屋外よりも2倍から5倍、条件によってはそれ以上に汚染されている可能性があるとされています。
室内の空気を汚す原因は、決してひとつではありません。ダニの死骸やフン、ペットの毛、衣類や寝具から出る繊維のホコリといったハウスダスト。
建材、家具、芳香剤、殺虫剤などから発生する化学物質。料理中の煙やニオイ、燃焼機器、人の出入りによって持ち込まれる花粉や黄砂、PM2.5など。ブルーエアも、屋内空気にはこうした複数の汚染要因があることを指摘しています。
そう考えると、空気清浄機を花粉や感染症の季節だけの家電として扱うのは、やはり視野が狭いと言えます。空気清浄機は、外から入ってくる花粉や黄砂だけに対応する家電ではなく、日々の暮らしの中で生まれる室内の空気の乱れを、継続的に整えるための家電でもあるのです。

ブルーエアが示す「空気清浄」から「エアウェルネス」への変化
この流れを考えるうえで、注目したいブランドのひとつがブルーエアです。
ブルーエアは、スウェーデン発の空気清浄機ブランドとして、清浄性能とデザイン性を両立させてきた存在です。空気清浄機というカテゴリーのなかでも、機能だけでなく、暮らしの空間にどう置かれるか、日常のなかでどう使われ続けるかを重視してきたブランドだと言えます。
近年のブルーエアを見ていると、単に「空気をきれいにする機械」を展開しているだけではなく、空気を通じて暮らしのコンディションを整える“エアウェルネスブランド”へと領域を広げているように感じます。

従来の空気清浄機に加え、加湿、睡眠環境、ペットのいる暮らし、パーソナル空間、インテリアとの調和といった文脈を持つ製品群が増えていることは、その象徴です。これは、単に商品ラインアップが増えたという話ではありません。
空気を「花粉やホコリを取るためのもの」としてだけでなく、睡眠、くつろぎ、在宅ワーク、ペットとの共生、部屋の心地よさといった生活全体の質につながるものとして捉え直している点が重要です。
空気清浄機は、これまで花粉、ホコリ、ニオイ、ウイルス対策といった言葉で語られることが多かった家電です。もちろん、それらは大切です。しかし、ウェルネス文脈で見るなら、空気清浄機の価値はそれだけではありません。

寝室で気持ちよく眠るための空気。帰宅したときに深呼吸したくなる部屋の空気。ペットと一緒に過ごすリビングの空気。梅雨どきのこもったニオイを感じにくい空気。在宅ワーク中に不快感を覚えにくい空気。
こうした日常のコンディションを支えるものとして空気を捉えると、空気清浄機は単なる対策家電ではなく、暮らしの質を底上げするウェルネス家電として見えてきます。
ブルーエアのようなブランドが、空気清浄に加えて、加湿、静音性、睡眠環境、空間デザインといった領域へ文脈を広げていることは、市場全体の方向性を示しているようにも思います。
これからの空気家電は、「何を除去するか」だけでなく、「どんな空間で、どんな時間を過ごせるか」まで問われるようになるはずです。

空気清浄機は、暮らしのコンディションを整える家電である
これからの家電は、単に「よく働く」だけでは不十分になっていくと思います。
もちろん、速く洗う、強く吸う、大きく冷やす、よく映るといった基本性能は重要です。しかし、現代の生活者が家電に求める価値は、それだけではありません。
睡眠の質を整える、食生活を支える、体を冷やしすぎない、空気を整える、自分でも気づかない不快を減らす。そうした、暮らしのコンディションを静かに底上げする家電にこそ、これからの価値があると感じます。
その流れで見ると、空気清浄機はまさにウェルネス家電です。汚れたときだけ慌てて動かすものではなく、日常の中で空気を循環させ、フィルターを通して整え続ける家電です。最近のモデルは、自動運転や静音運転、省エネ性も進化しており、24時間運転を前提に使いやすくなっています。

もちろん、空気清浄機だけですべてが解決するわけではありません。換気は必要ですし、掃除やフィルターの手入れも欠かせません。空気清浄機は魔法の箱ではありません。
それでも、室内の空気を整え続けるための手段として、空気清浄機には明確な役割があります。とくに5月以降は、窓を開ける時間が増え、外気が入りやすくなり、梅雨に向かって湿度やニオイも気になりやすくなります。
つまり、空気清浄機の出番が終わる季節ではなく、むしろ使い方を見直す季節だと考えるほうが自然です。
売り場から空気清浄機の存在感が薄れることと、空気の重要性が下がることは同じではありません。空気清浄機の売れどきは、季節で決まるかもしれません。しかし、空気の必要性は、季節では決まりません。
ウェルネスを本気で考えるなら、食べ物や水だけでなく、空気にも目を向けるべきです。5月以降こそ、空気清浄機を“春までの家電”から“暮らしのコンディションを整える家電”へと捉え直すタイミングなのです。
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