VAGUE(ヴァーグ)

ミズノ「ウエーブライダー30」が起こす革命――30年の伝統をゼロベースで壊した先にあった“本物の走り心地”とは

名作「WAVE RIDER」が30代目の新時代へ

 日本のランニングシーンを長きにわたり支え続けてきた、ミズノが誇る名作ランニングシューズ「WAVE RIDER(ウエーブライダー)」シリーズ。

 その最新作となる「WAVE RIDER 30」が、これまでの概念を打ち破る大胆な進化を遂げ、いま新たな時代へと突入しようとしています。

 この記念すべき30代目のデビューが発表されたのは、初夏の爽やかな風が吹き抜ける神奈川県・鎌倉。なぜ、あえてこのロケーションが選ばれたのか。

 ミズノのグローバルマーケティング本部の本部長、太田友宏さんは「30年間守り続けてきたウエーブライダーのDNAである『着地から蹴り出しまで、まるで波に乗るようなスムーズなライド感』を、もっとも気持ちよく体感できる最高の場所だからです」と熱く語ります。

グローバルマーケティング本部の本部長、太田友宏さんは、初代「WAVE RIDER」の誕生に携わり、当時のハイテクスニーカーブームを肌で感じていた。
グローバルマーケティング本部の本部長、太田友宏さんは、初代「WAVE RIDER」の誕生に携わり、当時のハイテクスニーカーブームを肌で感じていた。

「波に乗る」というキーワードに導かれるように、ステージにはスペシャルゲストとしてサーフィン日本代表チーム「NAMINORI JAPAN(波乗りジャパン)」から、都筑有夢路(あむろ)選手、大原洋人選手、池田未来(みらい)選手が登壇。

 ミズノは公益社団法人日本サーフィン連盟のオフィシャルサプライヤーとして、2024年からフットウェアの提供をスタート。

 さらに2026年からはウェアのサポートも加わり、「NAMINORI JAPAN」とのパートナーシップをより強固なものにしています。

 海に入れない日の体力づくりとして、日常的にランをこなすトップサーファーたちも、陸の上でのライド感を体現する「WAVE RIDER」の思想に共感していました。

サーフィンの日本代表チーム「NAMINORI JAPAN」からは、都筑有夢路選手、大原洋人選手、池田未来(みらい)選手(左から)が登壇。
サーフィンの日本代表チーム「NAMINORI JAPAN」からは、都筑有夢路選手、大原洋人選手、池田未来(みらい)選手(左から)が登壇。

 今回お披露目された「WAVE RIDER 30」は、単なる機能のマイナーチェンジではありません。

 市場にあふれるトレンドに迎合するのではなく、ランナーが求めるクッション性やスムーズな推進力の最適解を追い求めた結果、シリーズが誇る抜群の安定性をかつてないハイレベルで融合させた、ミズノランニングの「新しい波」を告げる完全新作となっています。

失敗から始まった「乗り心地」の追求。MIZUNOとWAVE RIDERが歩んだ30年

 今や世界中のランナーから絶大な信頼を集める「WAVE RIDER」ですが、その誕生の瞬間は、意外にも挫折からのスタートでした。

 初代「WAVE RIDER 1」が産声を上げたのは1997年11月、ニューヨークシティマラソン。当時は各社がこぞって目に見える機能を競い合う、空前のハイテクスニーカーブームでした。

「ミズノ独自の強みを持った、グローバルで戦えるシューズを作らねばならない」という使命感から、当時の生産技術を結集し、1980年代に一度消えかけていた波状のミッドソール構造を、樹脂プレートを挟み込むテクノロジー「MIZUNO WAVE(ミズノウエーブ)」として復活させたのです。

会場となった鎌倉プリンスホテルのホールには、歴代の「WAVE RIVER」をディスプレイ。1997年の誕生から29年、いまもなお進化を続ける。
会場となった鎌倉プリンスホテルのホールには、歴代の「WAVE RIVER」をディスプレイ。1997年の誕生から29年、いまもなお進化を続ける。

 しかし、鳴り物入りで発売された初代は、市場から「重い」「硬い」と手厳しい評価を受け、大苦戦を強いられることになります。

 ここで開発陣は立ち止まりませんでした。木型(ラスト)を一から見直し、かかとを小さくしてフィット感を向上させ、ミッドソールのスポンジを徹底的に削減して軽量化を突き詰めた「WAVE RIDER 2」を翌年に投入。

 これが米『RUNNER’S WORLD』誌で「エディターズチョイス賞」を受賞するという快挙を成し遂げ、シリーズの大きな転換点となりました。

今回の「WAVE RIDER 30」の開発に携わったグローバルフットウェアプロダクト本部デザイン開発ソーシング部の吉田陽平さん。
今回の「WAVE RIDER 30」の開発に携わったグローバルフットウェアプロダクト本部デザイン開発ソーシング部の吉田陽平さん。

 さらに研究メンバーは、レース中のランナーたちが走っているときの「足音」が他社と違うことに着目。

 走り心地とは、すなわち「車の乗り心地(ライド感)」と同じではないか。急加速や急減速を抑え、いかにスムーズに体重移動をさせるか。実際に車に試乗するなどして「乗り心地」へのあくなき追求が始まりました。

 その思想をさらに発展させ、減速時や加速時をよりスムーズにした「WAVE RIDER 8」など、「WAVE RIDER 」は「ひとつずつ改良を重ね、必ずランナーの信頼を確保する」という愚直なまでのクラフトマンシップによって、その歴史を紡いできたのです。

これまでの固定概念を崩して完成した、まったく新しい「WAVE RIDER 30」

 そんな伝統あるシリーズの30代目を任されたのが、かつて初代企画者の背中を見て育ち、自身もランの楽しさに目覚めた開発リーダーの吉田陽平さんです。

「30」の開発がスタートしたのは2024年の初夏。当初、チームが提案したのは、前作「29」の成功した設計をベースに、ソールの厚みを2mmほど増しただけの、いわば「WAVE RIDER 29.5」とでも呼ぶべき安定志向のマイナーチェンジ案でした。

 しかし、開発チーム内で議論が巻き起こります。「それでは単なる焼き直しだ。30周年の節目に伝統の形を守ることだけに満足して、前作を少し上回る程度のものを出すのは、メーカー側のエゴに過ぎない。本当にユーザーに新しい走りの驚きを提供できるのか」と。

 結果、彼らはそれまで積み上げてきた図面を一度すべて捨て、ゼロベースで設計を見直すという極めて過酷な道を選んだのです。

1997年の登場から全30モデル。毎年アップデートを繰り返してきた「WAVE RIDER」シリーズは、日本のシューズ・ランカルチャーを牽引してきた存在。
1997年の登場から全30モデル。毎年アップデートを繰り返してきた「WAVE RIDER」シリーズは、日本のシューズ・ランカルチャーを牽引してきた存在。

 そこから15種類以上もの試作を重ね、徹底的な検証を経て辿り着いたスペックは、まさに革新的なものでした。

 特筆すべきは、ミッドソールのスタックハイト(厚み)を従来モデルから一気に「6mm」もアップ(前足部30.5mm/後足部40.5mm)させた大胆なアップデートです。さらにドロップ(かかととつま先の高低差)を8mmに設定。

 柔らかく高性能な次世代ミッドソール素材をこれだけ厚くすれば、当然ランニング時のグラつきや不安定さというリスクが生まれます。

 それを解消するため、吉田さん率いるチームは、シリーズ初となる「MIZUNO WAVE(樹脂プレート)」の「フルレングス化」を断行しました。

 プレートを前足部までシームレスに伸ばすことで、厚みがあるのに横ブレを徹底的に抑制。さらに、厚みが増したことで生まれる「つま先への転がり感」や「蹴り出しの抜け感」を相乗効果で高めることに成功したのです。

ソールにはシリーズ初のフルレングスウエーブプレート採用。かかとからつま先までのスムーズな体重移動をサポートする。
ソールにはシリーズ初のフルレングスウエーブプレート採用。かかとからつま先までのスムーズな体重移動をサポートする。

 これだけのドラスティックな変更には、社内の営業やマーケティングチームから「ここまで形を変えてしまうと、ウエーブライダーらしさが失われ、これまでのファンに売れなくなるのではないか」という懸念や反対の声も挙がりました。

 しかし、開発陣の意志はブレませんでした。これは単に世の中の「厚底トレンド」に乗っかったわけではない。どこまでも「ランナーにとって最高のスムーズな走り心地」を追求した結果、必然として導き出されたカタチだったからです。

 驚くべきことに、これだけボリュームを増し、フルレングスプレートを内蔵しながらも、重量は前作とまったく同じ数値をキープ。ミズノの意地と技術力が、ここに結実しました。

これまでの「WAVE RIDER」シリーズからは大きなデザイン変更となったが、そのアイデンティはぶれていない。
これまでの「WAVE RIDER」シリーズからは大きなデザイン変更となったが、そのアイデンティはぶれていない。

 さらに、この革新的な機能をあえて「隠す」かのように、ミッドソールの外側にはスタイリッシュなグラフィックが施されています。

 ここには、「機能のスペックや数値にとらわれることなく、まずは足を入れて、走って、その感覚そのものに向き合ってほしい」という、ミズノからランナーへのメッセージが込められています。

鎌倉のオーシャンビューを横目に感じた走り心地

 開発チームや社内だけでなく、数多くのランナーの声を徹底的に吸い上げて議論を重ねてきた成果は、ランセッションで鮮やかに証明されることとなりました。

 発表会を終え、集まったメディア関係者たちは新しく生まれ変わった「WAVE RIDER 30」に足を滑り込ませます。二層構造のメッシュアッパーが、足全体を優しく、それでいて力強くホールドしてくれる心地良さ。

 鎌倉の美しいオーシャンビューを横目に走り出すと、その進化に目を見張りました。

鎌倉プリンスホテルから江ノ島までのランセッションも開催。初夏の海風を感じながら、感触を確かめながら走る。
鎌倉プリンスホテルから江ノ島までのランセッションも開催。初夏の海風を感じながら、感触を確かめながら走る。

 事前発表のスペックだけを見た段階では、あまりの大幅なアップデートに「これはもう、僕たちの知っているウエーブライダーではないかもしれない」という懐疑的な声も挙がっていたのは事実。

 しかし、実際に路面を捉えて走ってみると、参加者からは不思議と「たしかに、これは間違いなくウエーブライダーだ」という驚きの声が聞こえてきました。

 なぜ、ゼロベースで開発されたにもかかわらず、アイデンティティが失われていないのか。それこそが、ブレずに守り抜かれた「走り心地の追求」というウエーブライダーの本質。

 着地した瞬間に感じる安心感と横ブレのなさは、まさに伝統が通っている証拠。そこに今作ならではの、滑らかに前へと足が転がっていくような推進力が加わっています。

「WAVE RIDER 30」はシューズだけでなく、Tシャツ、タンクトップ、パンツなどウェアのラインナップも充実。
「WAVE RIDER 30」はシューズだけでなく、Tシャツ、タンクトップ、パンツなどウェアのラインナップも充実。

 この「WAVE RIDER 30」は、これまでシリーズを愛してきたシリアスランナーにとっては、未来を切り拓く、30年の歴史の集大成としてその期待を超えてくるはず。

 そして、これから走り出そうとしているビギナーにとっては、走ることの楽しさと、どこまでも遠くへ行けるような安心感を教えてくれる、新しい相棒になるのかもしれません。

製品仕様
「WAVE RIDER 30」
・価格(消費税込み):1万9800円
・サイズ: 22.5〜29.0cm
・カラー:ホワイト×ブラック×レッド、ホワイト×ブルー×スカイブルー

Gallery 【画像】ウェーブライダーでのランニング風景を画像ですべて見る(14枚)
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