VAGUE(ヴァーグ)

マッチングアプリ、Pairs(ペアーズ)の「ハイブリッド型マッチング」は新時代の“恋ウェル”を高められるか

マッチングアプリが一般化しても、埋まらない「あと一歩」

 今回取り上げるのは、国内最大級の恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」が始める、オンラインとオフラインを融合した新サービス「ペアーズイベント」。

会場に展示された「ペアーズイベント」の実機画面とピックルボールのパドル。アプリで探し、リアルで体験し、再びアプリに戻って関係を選ぶというO2Oの構造を、ひと目で示す展示だ
会場に展示された「ペアーズイベント」の実機画面とピックルボールのパドル。アプリで探し、リアルで体験し、再びアプリに戻って関係を選ぶというO2Oの構造を、ひと目で示す展示だ

 恋愛ウェルネスを高めませんか?マッチングアプリは、もはや一部の人だけが使う特殊なサービスではない。

 発表会で示されたこども家庭庁の調査では、既婚者の25.1%、つまり4人に1人以上がマッチングアプリをきっかけに配偶者と出会っている。ペアーズの累計登録数も、2026年4月時点で2700万を突破した。

既婚者の25.1%がマッチングアプリをきっかけに配偶者と出会っている。アプリが恋愛の補助線ではなく、結婚へつながる主要な出会い方のひとつになった現状を示す
既婚者の25.1%がマッチングアプリをきっかけに配偶者と出会っている。アプリが恋愛の補助線ではなく、結婚へつながる主要な出会い方のひとつになった現状を示す

 オンライン上のマッチング精度も高まっている。ペアーズの「本日のおすすめ機能」では、AIの進化によって、旧AIと比べたマッチ率が男性で約2.4倍、女性で約1.5倍に向上したという。

 メッセージの先で互いに「会いたい」と思っているかをキャラクターが確認し、意向が一致したときだけ知らせる「おさそいアシスト」も、デートへ進む際の気まずさを減らす仕組みだ。

ペアーズの「本日のおすすめ機能」と「おさそいアシスト」。AIで相性のよい相手を提示するだけでなく、会いたい意向が一致したときだけ知らせることで、次の一歩に伴う心理的な負担を抑える
ペアーズの「本日のおすすめ機能」と「おさそいアシスト」。AIで相性のよい相手を提示するだけでなく、会いたい意向が一致したときだけ知らせることで、次の一歩に伴う心理的な負担を抑える

 それでも、すべての人がアプリだけで軽やかに恋愛へ踏み出せるわけではない。

 プロフィールだけで自分を表現する難しさ。知らない相手と、いきなり1対1で会う緊張。連絡先を聞いて断られる不安。AIが「相性の良さそうな人」を選べても、最後に会うのは生身の人間同士である。そこには、アルゴリズムだけでは埋められない“あと一歩”が残る。

 ここでいう「恋愛ウェルネス」とは、恋人がいることやマッチ数の多さを競うものではない。自分と相手の意思や境界線、時間やペースを尊重し、無理なく関係を育てられる状態を指す。本稿では、これを「恋ウェル」と呼ぶ。ペアーズの公式用語ではないが、同社の新サービスを読み解くための補助線になる。

 発表会で、ペアーズを運営するエウレカの代表取締役CEO、山本竜馬氏は、現在の若者を取り巻く恋愛環境をこう表現した。

「SNSでコミュニケーションを取ることが当たり前になった一方、身近なコミュニティーでは“行儀よくしていなければならない”という感覚が強くなっています。職場で異性にアプローチすることも難しくなり、恋愛が、ある種“秘密の活動”のようになっている面もあるのではないでしょうか」

ペアーズを運営するエウレカの代表取締役CEO、山本竜馬氏。SNS時代には身近な関係の中で恋愛へ踏み出しにくくなり、アプリの一般化後もリアルに会うまでの空白が残ると、新事業の背景を説明した
ペアーズを運営するエウレカの代表取締役CEO、山本竜馬氏。SNS時代には身近な関係の中で恋愛へ踏み出しにくくなり、アプリの一般化後もリアルに会うまでの空白が残ると、新事業の背景を説明した

 職場や学校、友人関係の中で恋愛に踏み出すことは、以前より慎重さを求められる。実際、職場や学校、友人・家族の紹介といった従来型の出会いが、20代と30代の双方で2023年から2025年にかけて大きく減少していた。

 一方、マッチングアプリは、既存の人間関係から切り離された場所だからこそ使いやすい。ただし、そこで相手を見つけても、メッセージから実際に会うまでには別のハードルがある。ペアーズが今回埋めようとしているのは、まさにその空白だ。

リアルで人柄を知り、オンラインに戻って関係を選ぶ

「ペアーズイベント」の基本構造は明快だ。

 アプリで興味のある企画を探し、予約・決済。当日はQRコードと本人確認済みのペアーズアカウントでチェックインする。参加者は、ピックルボールやカラオケ、ダーツ、ボードゲーム、水族館、都市伝説や怪談といった共通のテーマを楽しむ。

 イベント中や終了後には参加者一覧を確認でき、気になった相手へ「いいね!」やメッセージを送れる。最大のポイントは、会場で無理に連絡先を交換しなくてもいいことだ。

 従来の街コンや婚活パーティーでは、限られた時間内に相手を見つけ、その場で連絡先を聞かなければ、関係が途切れやすかった。積極的な人ほど有利で、会話に時間がかかる人や、いったん帰って冷静に考えたい人には不利な構造でもある。

 ペアーズイベントでは、リアルの場で表情、声、会話のテンポ、周囲への気遣いといった、プロフィールには表れにくい人柄を知る。その上でオンラインへ戻り、関係を続けたいかどうかを自分のペースで判断できる。

 従来のマッチングアプリが「デジタル上で相手を選んでからリアルで会う」ものだとすれば、今回は「リアルな共通体験を経てから、デジタル上で次へ進む相手を選ぶ」。順序を反転させた点に、このサービスの新しさがある。

オフラインで共通体験と会話のきっかけをつくり、オンラインでは連絡先交換の摩擦を減らす。「ペアーズイベント」は、両者の利点を往復させることで、マッチングアプリの“あと一歩”を埋めようとする
オフラインで共通体験と会話のきっかけをつくり、オンラインでは連絡先交換の摩擦を減らす。「ペアーズイベント」は、両者の利点を往復させることで、マッチングアプリの“あと一歩”を埋めようとする

 事業開発を統括する本多由美氏は、イベントを出会いの場として前面に押し出すのではなく、“楽しむ理由”を先に置くことに意味があると話した。

「同じ時間を楽しむことは、外へ一歩踏み出すための“言い訳”になると思うんです。実際、ピックルボールのイベントに来た男性から、『出会いが目的というより、人気でコートが取れない中、ペアーズでイベントを見つけたので参加しました』と声をかけられました」

事業開発を統括する本多由美氏。「出会いに行く」のではなく、好きな体験を楽しみに行くことが参加の“言い訳”になると説明。恋愛を前面に出しすぎない設計が、参加への抵抗感を和らげる
事業開発を統括する本多由美氏。「出会いに行く」のではなく、好きな体験を楽しみに行くことが参加の“言い訳”になると説明。恋愛を前面に出しすぎない設計が、参加への抵抗感を和らげる

「出会いに行く」のではなく、「ピックルボールをやりに行く」「怪談を聞きに行く」。恋愛を目的として正面から掲げることに気恥ずかしさを覚える人でも、興味のある体験なら参加しやすい。

 そこで偶然、話の合う相手に出会うかもしれない。出会いを参加目的ではなく、体験から生まれる結果へと置き換えた設計が巧みだ。

 大人数のイベントでは、参加者全員と話せるわけではない。会場では声をかけられなかった相手や、帰宅してから気になり始めた相手にも、アプリ上からあらためてアプローチできる。リアルイベントの弱点だった「その場で行動しなければ終わってしまう」という時間制限を、オンラインの機能で取り除いたのである。

体験は「探す」「予約」「チェックイン」「あとでマッチ」の4段階。本人確認済みのアカウントで参加し、会場で連絡先を聞けなかった相手にも、イベント後にアプリから意思を伝えられる
体験は「探す」「予約」「チェックイン」「あとでマッチ」の4段階。本人確認済みのアカウントで参加し、会場で連絡先を聞けなかった相手にも、イベント後にアプリから意思を伝えられる

 ペアーズは2024年からオフライン施策の検証を重ね、2026年2月から7月15日までに204イベントを開催。有償参加者は累計8882人、平均予約率は93.6%、体験後の再参加意向は72.5%に達した。

 思いつきのリアルイベントではなく、約2年間の実証とシステム開発を経た正式事業化なのである。

Nextなぜローンチ企画が「ピックルボール」なのか
Gallery 【画像】ペアーズが始めるオンラインとオフラインを融合した新サービス「ペアーズイベント」の概要を写真で見る(10枚)
ロケット級の飛びは本当?新「ZXi RKTドライバー」をアマチュアが本音試打
プロだけじゃない アマチュアこそ試したいスリクソンの新アイアン
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

page

  • 1
  • 2

VAGUEからのオススメ

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

RECOMMEND