“アルヴェル”を本気で研究!? メルセデス・ベンツの新ミニバン「VLE」を海外で先行試乗! 全長5.3m超でも“小さく感じる”理由とは
“アルヴェル”や新型「エルグランド」と何が違う? 実走で見えた「VLE」の個性
このように、日本の高級ミニバンをかなり意識した「VLE」ですが、ライバルと比べてみると、それぞれの目指すベクトルの違いが浮き彫りになります。
例えば、トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」は、何世代にもわたる試行錯誤の末に磨き上げられた“究極のおもてなし空間”が真骨頂です。
「エグゼクティブラウンジ」グレードに見られる航空機のビジネスクラスのような包まれ感や、スマホ型液晶コントローラーによる直感的な操作系など、同乗者を心地よくもてなす緻密なインターフェース設計は高級セダンも顔負け。パワートレインも実用燃費に優れるハイブリッドやPHEV(プラグインハイブリッド)をそろえ、BEVとは違って気軽にどこへでも行ける総合力の高さも大きな強みです。
対する「VLE」は、こうした“アルヴェル”のホスピタリティを強く意識しつつも、圧倒的な車幅とフラットなフロアを武器に、より開放的でデジタルなラウンジ空間として対抗しています。
一方、先日、16年ぶりに刷新された日産「エルグランド」は、“ビジネスクラス・グランドツアラー”をテーマに掲げ、「スカイライン」などの系譜を感じさせる“GTカーの大容量版”というアプローチを採っています。
第3世代“e-POWER”と独自の4輪制御技術“e-4ORCE”、そして、電子制御式サスペンションを統合制御することで、加減速時のピッチングや旋回時のロールを徹底的に抑え込み、ドライバーの意のままの走りと後席乗員の頭部揺れ防止を高次元で両立しています。
これに対して「VLE」は、電子制御式ダンパーとエアスプリングを組み合わせた“AIRMATICサスペンション”によって路面からの衝撃をゆったりといなし、車体ごとふわりと包み込むような“リムジン的フラットライド”を志向しており、走りの味つけは明確に異なります。

実際に「VLE」のステアリングを握ると、約3トンというヘビー級の巨体でありながら、発進した瞬間から車体がひと回りもふた回りも小さく、軽く感じられることに驚かされます。モーター駆動車特有のなめらかで力強いトルクの立ち上がりと、“リアアクスルステア”の切れ味、そして良好な視界設計が相まって、街中のタイトな交差点でも全く持て余す感覚がありません。
乗り心地は、近年のメルセデス・ベンツの乗用車に見られる硬質でスポーティなアジリティ路線とは異なり、フワフワしているのに芯は極めて強固、という絶妙な感触です。試乗車は22インチの大径タイヤを履いていましたが、それを全く意識させず、路面からの入力を素早く打ち消すのではなく、あえて時間をかけて溶かすように減衰させていく所作は、まさに往年のクラシック・メルセデスを思い出させるものです。
ミニバンには不釣り合いなタイトなワインディングを走らせても、いい意味での驚きがありました。床下の巨大なバッテリーがもたらす圧倒的な低重心と、“AIRMATICサスペンション”の緻密な姿勢制御により、背の高いミニバン特有のグラッとくるロールや前輪外側への荷重集中がきれいに抑え込まれています。
コーナーの進入から脱出まで4本のタイヤがしっかりと路面をとらえ続け、ねらったラインをきれいにトレースしていく身のこなしは、ミニバンというよりも目線の高い最高級サルーンそのもの。この操縦安定性の高さこそが、ドライバーには絶対的な安心感を、後席のパッセンジャーには揺れを感じさせない極上の安らぎを提供してくれます。
* * *
そろそろ結論にいきましょう。これまで独自の哲学の元で商用バンベースの「Vクラス」を展開してきたメルセデス・ベンツが、日本の高級ミニバン文化を真正面から研究し、リスペクトを込めながら専用BEVとして仕立て直した「VLE」。そこには、“日本のミニバンが切り拓いたショーファーカーの価値を、威信をかけて欧州最高峰のリムジンに仕立てる”という明確な意志が宿っています。

日本市場への導入は現在、検討中とのことですが、国内でのテスト風景がSNSなどにアップされている状況を考えると、時間の問題といったところでしょう。
ただし導入に当たっては、車両総重量が3.5トン以上となると日本の普通免許で運転できないという課題もあり、それらをどう解決してくるか注目です。今後、登場が予定されているバッテリー容量を80kWhに抑えた仕様「VLE250」をベースにしてくるかもしれません。
個人的には、最高峰の「エクスクルーシブ」やスポーティな「AMGライン」が導入されれば、長年“アルヴェル”や「エルグランド」が牽引してきた日本のプレステージ・ミニバン市場に、これまでにない強烈なインパクトを与える可能性が高いと思います。
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