“アルヴェル”を本気で研究!? メルセデス・ベンツの新ミニバン「VLE」を海外で先行試乗! 全長5.3m超でも“小さく感じる”理由とは
商用バンの発想から決別! 最大8人乗りの“グランド・リムジン”へ
欧州市場でミニバンというと、かつてはピープルムーバーやトランスポーターとしての実用性が最優先されるカテゴリーでした。
メルセデス・ベンツの「Vクラス」は長らく欧州ミニバン市場を牽引してきましたが、根底には商用バンの「ヴィトー」とデザインや骨格を共有する成り立ちがあり、高級プレステージサルーンの領域とは明確な一線が引かれていたのも事実です。
しかし、日本市場におけるトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」や日産「エルグランド」の人気、さらには中国市場での高級ミニバンブームにより、ミニバンは“セダンに代わる最高峰のショーファーカー”としての地位を完全に確立しています。
そんな状況を受け、メルセデス・ベンツがこれまでの枠組みを打破すべく投入したのが、完全新設計の電動ミニバン「VLE」です。
開発陣が掲げたコンセプトは、従来の商用車派生ミニバンではなく「最大8席の広大な空間を持つ“グランド・リムジン”」でした。それを受け、荷物を積むバンを豪華に仕立て直したクルマではなく、最初から超高級サルーンやリムジンと同列の目線でゼロから設計されています。
筆者(山本シンヤ)はひと足先に、この「VLE」が生産されるスペインの地で実車を見て・触って・乗ってきたので、その実力を報告したいと思います。
「VLE」は、全長5309mm、全幅1999mm、全高1943mm、ホイールベース3342mmという堂々たる巨体ですが、商用車とは完全に別物となる流麗なワンモーションシルエットによって、ミニバンとしては異例のCd値(空気抵抗係数)0.25を達成しています。

パワートレインはBEV(電気自動車)のみですが、115kWhという大容量バッテリーを活かし、1回の充電で欧州WLTPモード700km以上という航続距離を誇ります(プレゼンでは「日本では東京から岡山まで行ける」とのアナウンスも)。
さらに、800V高電圧システムの採用によってわずか15分の急速充電で最大355km分の航続距離を確保できるなど、長距離移動のグランドツアラーとしての実力も申し分ありません。
シャシーには新開発のBEV専用モジュラープラットフォーム“VAN.EA(Van Electric Architecture)”を採用。車台を3つのモジュールに分け、商用/乗用、FF/4WDなど用途に応じて組み合わせて使います。
加えて、“AIRMATICサスペンション”のダンパーを約45度寝かせて配置し、4WDの「VLE400」では後輪用モーターを横に寝かせて搭載するという緻密なパッケージングを採用。これにより、室内高を犠牲にすることなく完全フラットフロアを実現しています。
このように、メカニズムに関してはメルセデス・ベンツらしさが満載の「VLE」ですが、注目点はそれだけではありません。
これまで欧州のミニバンは、日本独自のミニバン文化に対して一定の距離を置き、独自の質実剛健な哲学を貫く傾向がありました。しかし、新しい「VLE」に触れると、メルセデス・ベンツが日本の高級ミニバンを徹底的に研究し、強く意識してきたことがうかがえます。
例えば、最上級グレード「エクスクルーシブ」に備わる“グランドコンフォートシート”には、電動オットマン、リラクゼーション機能、シートヒーター&ベンチレーションはもちろんのこと、冷温庫、格納式テーブル、ワイヤレス充電まで完備されています。さらに、後席用の31.3インチ・8K大型格納式スクリーンを備えるなど、まさに“全部盛り”のエンターテインメント空間が用意されています。

それだけではありません。従来の「Vクラス」で長らくウィークポイントとして指摘されることが多かった“開閉できないスライドドアのガラス”は、待望の昇降式ウィンドウに。さらに、リアゲートには狭い駐車場で重宝するリアウィンドウ単体の開閉機構が備わり、両側にはハンズフリースライドドアが採用されるなど、日本車勢が得意としてきた細やかな“気配り機能”がしっかりと盛り込まれています。
さらに、日本の狭い道や立体駐車場を見据えたかのように、最大7度の後輪操舵機構“リアアクスルステアリング”を採用。これにより、全長5.3m超の巨体ではあるものの、最小回転半径は約5.5mとコンパクトカーに匹敵する数値を実現するなど、日本の道路環境でも持て余さないという“本気度”がうかがえます(もちろん、ボディ自体は大きいので取り回しには注意が必要ですが……)。
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