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「歩く」と「走る」、仕事に効くのはどっち? 研究で見えた“発想力”と“集中力”の違い

アイデアを出したいなら「歩く」が強そう

 企画に行き詰まったとき、机を離れて歩いているうちに「いいアイデアが浮かんだ!」
 
 この感覚を実際に調べた研究があります。

 スタンフォード大学の研究者らは、参加者48人に「ボタン」や「タイヤ」といった身近な物について、本来とは違う使い道をできるだけ多く考えてもらう課題を行いました。

 参加者は座った状態と、トレッドミルを自分のペースで歩いている状態で、それぞれ課題に挑戦します。

 評価されたのは、単に答えをたくさん出せたかだけではありません。ほかの参加者とは重ならず、なおかつ実際の使い道として成立するアイデアをどれだけ生み出せたかも調べました。

 その結果、48人のうち81%が、座っているときより歩いているときのほうが多くの創造的なアイデアを出しました。平均すると、歩行中には創造的な回答が約60%増えています。(※1)

 ところが面白いのは、歩けばすべての思考能力が高まったわけではないということ。

 研究では、複数の言葉から共通するひとつの答えを導き出す、いわば**「正解を絞り込む」タイプの課題**も行っています。こちらでは、歩いているときに明確な成績向上はみられませんでした。

 つまり歩くことは、「正しい答えを見つける」よりも、可能性を広げる作業に向いている可能性があるということです。

 新商品のネーミングを考える。企画の切り口を探す。プレゼンのアイデアを広げる――。

 そんなときは、机の前で粘り続けるより、一度歩いてみる価値がありそうです。

気分を切り替えたければ、走る。がいい?
気分を切り替えたければ、走る。がいい?

では、走ると“仕事の頭”はどうなる?

 一方、ランニングについては、どうでしょう。

「走る」という行為だけを切り出した研究より、ジョギングなどを含む有酸素運動として調べた研究が多くあります。

 2024年に発表されたメタ解析では、42件のランダム化比較試験、計2881人のデータをまとめて、有酸素運動と実行機能の関係が調べられました。(※2)

 その結果、有酸素運動によって認知的柔軟性、ワーキングメモリー、抑制制御が改善する傾向が示されています。

 少し言葉が難しいので、仕事に置き換えてみます。

 認知的柔軟性は、状況に応じて考え方や注意を切り替える力。ワーキングメモリーは、情報を一時的に頭に置きながら処理する力。そして抑制制御は、不要な反応や誘惑を抑える力。

 つまり、午前中の仕事を引きずったまま午後の会議に入るのではなく、一度頭を切り替える。複数の情報を整理する。目の前の作業に集中する。こうした働きと関係する能力のこと。

 さらに、一度だけ行う有酸素運動についても、複数の研究をまとめた分析で、運動後の実行機能に小さいながら有益な影響がみられる可能性が報告されています。(※3)

 とはいえ、ここで「では走れば仕事ができるようになる」と結論づけるのは早計。

 研究の多くは「ランニングだけ」を調べたものではありませんし、運動の強度、時間、年齢などによって結果も変化します。また、ウォーキングとランニングを同じ条件で直接対決させた研究が十分にそろっているわけでもありません。

アイデアを広げたいなら、歩く。がいい?
アイデアを広げたいなら、歩く。がいい?

“どっちが上?”ではなく、仕事によって使い分ける

 ここまでの研究を仕事に置き換えて考えると、ひとつの使い分けが見えてきます。

 アイデアを広げたいなら、歩く。
 頭を切り替えたいなら、少し心拍を上げる。

 たとえば、企画会議の前に新しい案を考えたいなら10〜20分ほど散歩してみる。

 一方、午前中に大量のメールや資料を処理し、午後から別の仕事へ頭を切り替えたいなら、軽く走ったり、少し息が上がる程度に体を動かしたりする。

 逆に、緻密な数字をチェックしたり、ひとつの正解に集中したりする場面で「とりあえず歩けばいい」というわけでもありません。

 歩くか走るかを選ぶ基準は、消費カロリーだけではなさそうです。

 「いま、自分の頭に何をさせたいのか」

 それを考えて体の動かし方を選んでみる。

 そう考えると、仕事の途中で歩いたり走ったりする時間は、単なる運動ではなく、頭の使い方を切り替える時間になるのかもしれません。

<出典>
※1 Marily Oppezzo, Daniel L. Schwartz, “Give Your Ideas Some Legs: The Positive Effect of Walking on Creative Thinking”, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 2014. DOI: 10.1037/a0036577
PubMed:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24749966/
論文PDF:
https://aaalab.stanford.edu/assets/papers/2014/Give_your_ideas_some_legs.pdf

※2 Mingzhu Ye, Tao Song, Haishuo Xia, Yongqing Hou, Antao Chen, “Effects of aerobic exercise on executive function of healthy middle-aged and older adults: A systematic review and meta-analysis”, International Journal of Nursing Studies, 2024, Vol.160, 104912. DOI: 10.1016/j.ijnurstu.2024.104912
PubMed:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39326271/
ScienceDirect:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0020748924002256

※3 Toru Ishihara et al., “The effects of acute aerobic exercise on executive function: A systematic review and meta-analysis of individual participant data”, Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 2021, Vol.128, pp.258–269. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2021.06.026
PubMed:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34147558/
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2021.06.026

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