S30系「フェアレディZ」は大陸系の乗り味【旧車試乗】
マルセイユまで運転した「240Z」を日本で再試乗してみたら
筆者がこのモンテカルロ・ラリー仕様のダットサン240Zを運転するのは、これが初めてではない。
横田正弘館長が2018年2月の「ラリー・モンテカルロ・ヒストリーク」に参戦した際、サポートメンバーとして全行程に随行した筆者は、ラリー完走後に船便で日本へと送り返すために、モナコから南仏の港町マルセイユまでの陸送の一部を担当していたのだ。
ただし、その際でのドライブは高速道路「オートルート」とマルセイユの市街地を走ったのみで、このクルマの本質に触れることまではできず、ひたすら乗りやすくて安楽という印象に終始。そこで今回のテストドライブでは、ワインディングロードを中心にこのダットサン240Zを味わってみることにした。
●グラントゥリズモとしての本分を体現した走りっぷり
先にお断りしておかねばならないが、横田館長のモンテ240Zレプリカは、主に外観のみをコスメチューンしたもので、実質的なパフォーマンスはスタンダードのダットサン240Zと変わらない。
したがって、L24型水冷直列6気筒SOHC2393ccエンジンが発生する出力は、150psという控えめなもの。しかも、当時の日本で採用されていたグロス表示のスペックであるため、現代のネット表示ならば130ps前後と推定される。とはいえ、こちらも当時のデータを信ずれば1トンにも満たない軽さのおかげで、少なくとも一般道で体感できる動力性能はなかなかのものである。
この個体には、4速マニュアルの標準型トランスミッションが組み合わされているが、シフトストロークは短めで、コクコクと気持ちよく決まる。
4速ゆえにややワイドレシオながら、2.4リッターのトルクに助けられて、緩やかなアップダウンのワインディングでは実にリズミカル。往年のL型6気筒エンジンをご記憶の方なら懐かしく感じるであろう、「ビュイーン」という独特のサウンドを味わいつつ、とても楽しいドライブが満喫できるのだ。
一方、鋳鉄製ブロックを持つ重いL24エンジンを搭載しているせいか、あるいは近代的なラック&ピニオン機構を持ちつつも、パワーアシストがない分ステアリングのギア比がスローなのか、ハンドリングは少々ゆったり目といわねばなるまい。
ステアリングの重さによる「手アンダー」も相まって、全長4115mm×全幅1630mm×全高1285mmというコンパクトなボディサイズから想像されるような機敏さには欠けるかに思われた。
ただしS30Zが、主にアメリカ大陸でのクルージングを目的としたGTとしてのキャラクターを追求していたことを思えば、これは正しい出来栄えともいえるだろう。当時としては充分に先進的だった4輪独立懸架はハンドリングを損なうことなく、快適な乗り心地を実現しているのは間違いないところである。
実際のところ1972年のモンテカルロ・ラリーにて、ルノー・アルピーヌ「A110」やポルシェ「911」など、より俊敏かつスパルタンなリアルスポーツカーたちと対等に渡り合って3位入賞を果たした快挙には、現在のWRCよりも走行距離の長かった当時のラリーで、より疲労度が少なかったことも大きく寄与していたといわれているのだ。
ちなみに、モンテカルロ・ラリーの夢をかなえた横田館長は、少年時代に憧れたもうひとつの夢があったという。それは「240Zでサファリラリーを走りたい」というもの。
そこで「サファリラリー」のクラシック版、次回は2023年春に開催予定という「イーストアフリカ・サファリラリー・クラシック(East Afirica Safari Rally Classic)」へのエントリーを目指して、現在もう1台、サファリラリー仕様の240Zレプリカを製作しているとのことである。
こちらのサファリ240Zレプリカは、悪路が連続するハードなコース設定を見越してエンジン排気量を拡大するほか、ヘビーデューティ向けの仕立てでロールケージも組み込むなど、「本気のクラシック・ラリーカー」となっているようだ。
新たに製作中の240Zは、2年後の「イーストアフリカ・サファリラリー・クラシック」を走り切り、無事に日本に戻ってきた暁には試乗させていただくつもりなので、それまでお楽しみにお待ちいただきたい。
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