故アイルトン・セナが愛した「190E」がオークションに登場 新車購入後にドイツの工場から英国の自宅までセナが運転して帰ったという“ホモロゲモデル”の現在の価値とは
F1王者ゆかりの「190E 2.3-16」、その歴史と特別な個体
2025年11月1日に英国ロンドンで開催されるRMサザビーズのオークションに、元F1ドライバーの故アイルトン・セナ選手が新車時に購入した1985年式メルセデス・ベンツ「190 E 2.3-16」が出品されます。

F1の歴史に名を刻むドライバーと強い結びつきを持つこの1台には、当時のセナの思いが色濃く刻まれているといいます。
そもそも、1980年代に登場したメルセデス・ベンツ「190E」は、同社が新たな市場を切り開くために投入したコンパクトセダンです。
堅牢なボディと高い安全性を備え、当時のメルセデスらしい重厚感と実用性を兼ね備えたモデルでした。
中でも特別な存在が、ツーリングカーレース参戦を念頭に開発された「190E 2.3-16」です。
1986年に登場したこのホモロゲーションモデルは、コスワースと共同開発した2.3リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載し、最高出力185馬力を発揮しました。
外観には専用のオーバーフェンダーや大型スポイラーを備え、空力性能とスポーツ性を強調した設計。当時ライバルのBMW「M3」と並び称される存在であり、日本市場にも正規輸入されスポーツ志向のユーザーに強い人気を誇ったといいます。
そして、そんな「190E 2.3-16」と深い関わりを持つのがアイルトン・セナです。
1984年にニュルブルクリンクで開催された「チャンピオンズレース」。これは純粋に「誰が一番速いのか」を証明するという企画レースで、同じ190Eを用いたワンメイクで行われました。当時F1で活躍していたアラン・プロストやニキ・ラウダ、また伝説のジャック・ブラバム、スターリング・モスなどトップドライバーが参戦しました。
当時セナはF1に参戦して3戦のみのルーキーでしたが、ここで優勝。この勝利が彼の名声を一気に高めただけでなく、190 E 2.3-16の名をモータースポーツ史に刻むきっかけとなったようです。ちなみにYoutubeでも当時の動画が残っています。
今回オークションに出品された個体は、まさにそのセナ本人が新車時に購入した1985年式のモデルです。
デザインは、スモークシルバーメタリックの外装にブラックレザーの内装を備えた組み合わせ。
セナはこのモデルを、同胞のマウリシオ・グージェルミン選手とともに、メルセデス・ベンツの工場から自ら運転して持ち帰ったといいます。
また、この車両の記録は詳細に残されており、当時の工場購入請求書や税関関連書類など、セナの名前が記載された一次資料が付属しているとされています。
さらに、1996年に新たなオーナーへ譲渡された後も徹底した整備記録が残されており、車両の来歴を明記。2004年にはオーストラリアに持ち込まれ、排ガス規制への対応でエアコン機構が無効化されたものの、車両は維持され続けました。
走行距離はカタログ作成時点で15万4302マイル(約24万8280km)を記録。長年にわたって使用されたことがわかる数値ですが、セナが所有していたという事実がこのクルマの最大の価値を生み出しています。
そして、エクステリアは当時のままのスモークシルバーメタリックで仕上げられ、スポーティさと品格を併せ持った状態です。
くわえて、ホイールは当時の純正仕様に準じたデザインであり、レカロ製シートやベッカーメキシコステレオ、応急処置キットといったオリジナル装備も残されています。
なお、この特別な個体の落札額は22万ポンドから25万ポンド(1英国ポンド=198円換算で、日本円で約4361万円から約4956万円)と予想されています。
この予想落札価格は、メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」の一般的な取引価格を大きく上回る水準であり、アイルトン・セナという唯一無二のオーナーシップがもたらした結果といえそうです。
※ ※ ※
このモデルは単なるクラシックカーではなく、モータースポーツの歴史と結びついた文化的遺産として扱われています。
とくにF1ファンやコレクターにとって、セナの所有したクルマを手にすることが過去と未来をつなぐかけがえのない体験であることは、言うまでもありません。
その証拠として、今回の予想落札価格が、セナが今もなお世界中の人々に愛され続けていることを雄弁に物語っています。
今後も、このクルマの存在はモータースポーツファンの記憶に刻まれ続けるでしょう。
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