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腐ってもフェラーリ!? 700万円台の跳ね馬は初心者が手を出しても大丈夫? 「F40」よりも手強いV12の4座フェラーリとは

700万円台のフェラーリは、初心者が手にしても大丈夫なのか?

 今回RMサザビーズ「PARIS」オークションにプティジャン・コレクションから出品されたフェラーリ365GT4 2+2は1975年12月に製造された個体で、シャシナンバーは「#18813」。ただし翌1976年に初めて登録されたので、統計上は「1976年型」と分類されるようだ。

ボディデザインを指揮したのは、当時ピニンファリーナに所属していた名デザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティといわれている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
ボディデザインを指揮したのは、当時ピニンファリーナに所属していた名デザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティといわれている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 フェラーリのフランスにおける正規代理店で、この時代にはル・マン24時間などのレースにも参加していた「シャルル・ポッツィ(Charles Pozzi)S.A.」を介してフランス在住のファーストオーナーのもとへデリバリーされたこの車両は、2008年に南仏のディーラーからムッシュ・プティジャンのコレクションに加わるまでの約32年間にわたり、同じ家族のもとに所有されていたことが明らかになっているという。

 生産から半世紀近い時を経た現在においてもなお、この365GT4 2+2を彩る「ブル・オルティス(Blu Ortis)」のボディカラー、そして「ペッレ・ビアンカ(Pelle Bianca:ホワイトレザー)」のインテリアともに、新車時以来のオリジナルとされる。

 またV12エンジンについては、何らかの理由で別の365GT4 2+2からコンバートされたことも判明している一方で、ギアボックスとリアアクスルのナンバーはフェラーリの製造記録と一致しているとのことである。

 RMサザビーズ社がオフィシャルWEBカタログを作製した時点での積算走行距離は5万4780kmとされるが、その数字に間違いはないものと思われる。

 ただし、プティジャン・コレクションから出品されたすべてのフェラーリと同様、この365GT4 2+2もミュージアムへの展示用として長らく不動状態のまま所蔵されていたことから、フェラーリに相応しいパフォーマンスを取り戻すためには、とくにエンジンや燃料系、潤滑系に電気系などあらゆる部位で大幅なリニューアルを必要としているのは間違いないところ。

 さらにブレーキのマスターシリンダーとサーボは欠品しており、ボディにも数か所の凹みがあることが確認されているうえに、インテリアにも明らかな傷みがあり、クリーニングないしは染め替え、新オーナーの指向性によってはレザーの張替えも検討すべきレベルにあることが、カタログ写真からも見てとれる。

 つまり、あらゆるパートのコンディションに問題を抱えていたのだが、RMサザビーズ社では4万~6万ユーロという少々強気にも映るエスティメートを設定。この日プティジャン・コレクションから出品されたフェラーリたちと同じく「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で競売の壇上に上げられた。

●価格はリーズナブル、でも安易に手を出すなかれ

 そして、「308GTB」などのV8ベルリネッタたちが軒並みエスティメートを大幅に超えるハンマープライスをたたき出したのに対して、こちらの365GT4 2+2はエスティメートになんとか到達する5万5200ユーロ、日本円に換算すれば約730万円でハンマーが落とされるに至ったのだ。

 365GT4 2+2は、エンスージアストの間では過小評価されてきたフェラーリながら、コレクターが注目する多くの要素を満たしているともいえよう。とくに、フロントに置かれる12気筒エンジンとマニュアルトランスミッション、6連のウェーバー社製キャブレターなど、1970年代のフェラーリらしいスパルタンな要素が横溢している一方で、パワーステアリングやパワーウインドウ、エアコンディショナーといった実用的な装備も備えているのは、このモデルならではの特徴である。

 ただしここでいっておかねばならないのは、たとえ買い値が安価だといえども、そのあとに要する経費はV8モデルよりもさらに高価になることである。少なくとも、初めてのクラシック・フェラーリに好適とはいいがたい。

 当時のフェラーリではフラッグシップの座にあった365GT4 2+2は高級モデルであるゆえに、1960年代以前のフェラーリに比べて電動ないしは油圧システムの採用部位が大幅に増えた。それにもかかわらず、組みつけの精度などは手作りの域を出ないことから、まだクラシックカーと呼ばれる以前からトラブルがついて回るモデルだった。

 かつて筆者が在籍していた時代のコーンズにて、サービス部門担当の先輩たちが、365GT4 2+2はもちろん、後継の「400i」や「412」ですら同じ時代に販売されていた「F40」よりも手ごわい……、とこぼしていたことが思い出される。

 それでも、もう圧倒的というほかないイタリア的エレガンスの粋、あるいは美しさが自分のものになるならば、出費や手間など厭わないといわせるだけのものがある。それもまた、間違いのない事実と思うのである。

Gallery 【画像】値段は安いが実は上級者向けのフェラーリ「365GT4 2+2」を見る(24枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス

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