メルセデスAMG「SL」がスポーツカーに“原点回帰”した理由とは? AMGが具現した鋭い走りは人々を魅了する
新型SLはAMGバーションしか存在しない
ニュースとしては「メルセデス・ベンツのオープンカーである『SL』がフルモデルチェンジした」というだけのことなのだが、その中身は予想外のものばかりだった。

まずはその車名である。当面、日本に導入されるモデルは、メルセデスAMG「SL43」である。従来はまず、メルセデス・ベンツのSLがあって、追ってそのAMG版が追加されてきた。だから今回は「AMGが先なのか?」と思った方もいらっしゃるかもしれないが、実際は先でも後でもなく、新型SLはAMG版しかないのである。
実はメルセデス社内では、新型SLの開発が一時ストップしていたというウワサがある。SLのようなオープンカーは専用のプラットフォームが必要だが、そんなにたくさん売れるものではない。コストがかかる割に回収率が悪いモデルなのだ。
一方で、メルセデスの“アイコン”ともいうべきSLを消滅させる案には反対意見も多かったらしく、検討を重ねた結果、AMGブランド専売として存続が決まったそうだ。先代モデルの発表が2011年だったので、7代目の誕生までに10年もの時間がかかったのはそういう背景があったのである。
では、なぜAMGなのか? そもそもSLは“W194”と呼ばれるレーシングカーの「300SL」に起源があり、それをベースに1954年に誕生したのが、初代といわれる“W198”の「300SL」だった。以後のSLは、どちらかといえばスポーツカーというよりもラグジュアリーなオープンカーとしてのイメージが強く、新型がスポーツカーブランドのAMGのみとなったことに難色を示す向きも少なくないようだけれど、メルセデスとしてはいわゆる“原点回帰”と位置づけている。
実車を前にして、従来型との違いにすぐに気がつく箇所がふたつある。ひとつは、ルーフが幌のソフトトップになっていることだ。
“バリオルーフ”なんて呼ばれた時期もあったSLのルーフは、クローズ状態では金属製のルーフがキャビンを覆い、まるで2ドアクーペの装いだった。オープンにするとそれが、からくり仕掛けのようにきれいに畳まれて姿を消す。実質的には、オープンカーとクーペの2台を所有していることになると同時に、セキュリティの面でも高く評価されてきた。
しかし、重量が重くなったりオープン時とクローズ時で前後重量配分や重心が変化したりラゲッジスペースが小さくなるなど弊害もいくつか散見された。スポーツカーとして原点回帰するならば、重量増や重量配分と重心の変化はどうしても避けたい。そんな思惑もあって、新型ではソフトトップが採用されたのである。

もうひとつは、リアシートが装備されることである。新型SLは2シーターではなく2+2のパッケージとなった。厳密にいえば、4代目にもリアシートが用意されていたが、日本への正規輸入はなかったので、日本市場においては“SL初の4人乗り”ということになる。ただし安全性を考慮して、リアシートに着座できるのは身長150cmまでに限定されている。
プラットフォームはアルミのスペースフレームを用いた専用設計で、前後のマルチリンクサスペンションもSLのために新たに設計されている。エンジンは2リッターの直列4気筒ターボで、これ自体は「Aクラス」ベースのメルセデスAMG「A45 4マチック+」などに搭載されてきたユニットだが、SLのそれは“エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー”と呼ばれる、いわゆる電動ターボと組み合わされている。
これはタービンとコンプレッサーをつなぐシャフトの中間にモーターを仕込み、排ガスが十分に送り込まれる前からモーターによって過給するというもの。これによりターボラグはほぼ解消されるとともにレスポンスの向上が実現できた。
●ドライブモードの変更でピュアスポーツカーに豹変
ドライブモードを「コンフォート」にしてタウンスピードで走っている限りでは、従来のSLのようなラグジュアリーオープンカーの様相を見せる。
ところが「スポーツ」や「スポーツ+」にすると、新型SLは豹変する。リニアなステアリングレスポンスとねらい通りのラインに乗る操縦性、安定した挙動と巻き込むような回頭性は、まさしくスポーツカーのそれである。加えて、右足の微細な動きにも反応する後輪の駆動力と最適なトラクションにより、FR(フロントエンジン/リアドライブ)車らしい動力性能とハンドリングを堪能できるのだ。
実は本国には、もっとパワフルな仕様やSL史上初となる4WDモデルも存在する。やがて日本市場にも導入されるかもしれないが、それらのモデルを2021年の国際試乗会ですでに試している身としては、このSL43がベストバランスではないかと思う。どうにか自分でも扱えるパワーとFRのうれしさを、ともに享受できるからである。
●Mercedes AMG SL43
メルセデスAMG SL43
・車両価格(消費税込):1648万円
・全長:4700mm
・全幅:1915mm
・全高:1370mm
・ホイールベース:2700mm
・車両重量:1780kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1991cc
・変速機:9速AT
・最高出力:381ps/6750rpm
・最大トルク:480Nm/3250〜5000rpm
・駆動方式:FR
・サスペンション:(前)マルチリンク式、(後)5リンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)265/40R20、(後)295/35R20
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