トヨタの遊び心も感じる「電気ハチロク」のスゴさとは“MT搭載”でドリフトも決まる「未来型AE86」の気になる実力
アクセルに力を入れると「ブォーン」という電子音が
残念ながらハチロクEVの試乗はかなわなかったが、始動プロセスだけは体験できた。

シートに収まりキーをひねると「ボボボボボ……」というアイドリング音(のようなもの)が聞こえてくる。「アクセルをあおってみてください」といわれて右足に力を入れると「ブォーン、ブォーン!」とエンジンサウンドに似せた電子音が響き、回転計の針が上下に振れるのである。思わず、笑ってしまった。本当になんてバカバカしいのか。そして楽しいのか!
渡辺氏によれば、このMTのおかげで走りの感触は普通のEVとは別物だという。クルマを操る感触が格段に濃厚だというのだ。トルクはフラットながらそのサウンドも奏功して回転の上昇感はある。トルクがありエンストという概念がないので発進は容易だし、パワーはグロス130psのハチロク用4A-GEUと大差ないものの、電気モーターは豊かなトルクを即座に発生するため、ドライバビリティは良好だという。
実際、テスト走行では勢いよくテールを振り出しながらの、まさにハチロクらしい走りっぷりを存分に見せつけてくれた。外から眺めている分にはロードノイズしか聞こえてこないが、室内には盛大にエンジン(のような)サウンドが響いているかと思うと面白い。
●AE86オーナーも胸を張って乗れるハチロクEV
旧車のEV化についてはこれまでたくさんの事例があるが、率直にいえばそれらは大抵、元のクルマの個性や楽しさをスポイルしがちで、あまり支持されるものではなかった。実はハチロクを今も所有し、ときどきサーキット走行を楽しんでいる筆者自身、同じような感情を抱いていたことは否定しない。
よって今回も、事前には必ずしもポジティブに見ていたわけではなかったのだが、実車を見て気持ちがすっかり変わった。それはハチロクEVが、ハチロクらしさを失うことなくしっかり備えていたからだ。しかも、それがカーボンニュートラルを実現しているとなれば、これは胸を張って乗れそうだと思えたのだ。
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今回のGRによる2台のハチロクの提案は、まさにクルマ好きが、楽しみながらカーボンニュートラルを実現していくための道筋を示すものだったといえる。1983年に生まれたハチロクが、登場40周年にしてクルマ好きの未来を明るく照らし出す役割を担ったのだから、とても痛快な話ではないだろうか。
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