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“ナナサン・カレラ”は現在も新品パーツを入手可能「ZF社」はなぜマニアの要望に応え続けるのか

ZF社が“ナナサン・カレラ”の50周年を祝うコンテンツを公開

 ドイツの大手部品メーカー・ZF社のホームページを見ていたら、興味深いページに出くわしました。1972年の“パリサロン”でデビューしたポルシェ「911カレラRS2.7」、通称“ナナサン・カレラ”の50周年を記念するコンテンツが用意されていたのです。

 ZF社のような巨大自動車部品メーカーは、さまざまな自動車メーカーとつき合いがあるでしょうから、このように1ブランドにフォーカスするのは極めて珍しいことだといえます。

日本ではマニアから、“ナナサン・カレラ”と呼ばれているポルシェ「911 カレラ RS2.7」
日本ではマニアから、“ナナサン・カレラ”と呼ばれているポルシェ「911 カレラ RS2.7」

“ナナサン・カレラ”として知られるポルシェの911カレラRS2.7は、1972年10月のパリサロンでデビューしました。

 サーキットでの操縦性にフォーカスしたスペシャルモデルで、「RS」(ドイツ語でレーシングスポーツを意味する、レンシュポルトの頭文字をとったもの)は現在にも受け継がれています。

 2.7リッター水平対向6気筒エンジンの最高出力は210psで、0-100km/h加速は5.8秒、最高速は245km/hをマークしていました。“サーキットでの操縦性にフォーカス”した結果、フロントバンパー下にエアロパーツを、そして、“ダックテール”と呼ばれる特徴的なリアウイングを装着しています。

 そんな“ナナサン・カレラ”に採用されたZF社のパーツは、ステアリング機構一式とLSDでした。“ナナサン・カレラ”のデビューから半世紀が過ぎた現在でも、ZF社ではステアリング機構一式の新品パーツを用意し、LSDについてもスペアパーツの提供に応じているそうです。なんて頼もしいんでしょう。

●かつてのパーツの再生産や復刻も手がけ続ける

 さらに気になったのは、「パーツのカスタム製作はZFトラディションまでお問合せください」と記されていることです。

 ZFトラディションのホームページをのぞいてみると、ZF社モータースポーツ部門の系列であることがわかります。ZF社ではかつて生産したパーツの再生産、修理、オリジナルパーツ提供、パーツがZF社にない場合はワンオフ製作業者の紹介などをおこなっているとのこと。乗用車やスポーツカーだけでなく、商用車や農作業車のパーツまであるようです。

 先ごろアストンマーティンが、映画『007シリーズ』に登場した「DB5」を復刻したことが話題を集めましたが、ZF社がトランスミッションの復刻を手がけていたのですね。ベース車のパーツをリビルトしたのではなく、当時のトランスミッションを復刻生産しています。

“S5-325”と呼ばれる5速トランスミッションは、アストンマーティンのDB5だけでなく「DB6」にも採用されたほか、イソ「リボルタ・グリフォ」やマセラティの「ギブリ」と「ミストラル」にも搭載されていたそうです。

 ZFトラディションのホームページで初めて知ったのですが、フォード「GT40」、BMW「M1」、デトマソ「パンテーラ」はいずれも、同社の“5DS25/2”と呼ばれる5速トランスミッションを搭載していたのですね。いやはや、勉強になります。

 ZF社ほどの規模であれば、“復刻版”による売上高は微々たるもののはず。それでもクラシックカー・オーナーたちのニーズに応え、職人さんたちの技芸を後世に残そうとしている姿勢には感服です。

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