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トヨタの燃料電池で動く「アメリカズカップのチャンピオンチーム」が製作したテンダーボートの秘密とは

ヨットをサポートするボートをクリーンエネルギー化

 ヨットレースの最高峰であるアメリカズカップのチャンピオン「エミレーツ・チーム・ニュージーランド」が、興味深いボートを製作しています。なんと動力源はエンジンではなく、トヨタ製の燃料電池なのです。

エミレーツ・チーム・ニュージーランドが製作したテンダーボートは、トヨタ製の水素燃料電池を搭載。水流の揚力で船体が浮き上がった状態で進む(C)YouTube『EmiratesTeamNZ』
エミレーツ・チーム・ニュージーランドが製作したテンダーボートは、トヨタ製の水素燃料電池を搭載。水流の揚力で船体が浮き上がった状態で進む(C)YouTube『EmiratesTeamNZ』

 アメリカズカップという名称を耳にしたことのある人は少なくないでしょう。1851年にイギリス・ロンドンで開催された第1回万国博覧会の記念行事として、ロイヤル・ヨット・スコードロンが主催した“ワイト島1周レース”に端を発する歴史ある大会です。

 海洋国であった英国の快速艇が一堂に会すこのヨットレースに、当時はまだ新興国だったアメリカから1隻だけ参加したのが、ニューヨーク・ヨットクラブに所属していた101フィートスクーナーの「アメリカ号」でした。そんなアメリカ号が圧倒的な速さを見せつけ優勝した結果、ビクトリア女王から贈られた銀製の水差し状のカップがアメリカ号のカップ、すなわち“アメリカズカップ”と呼ばれることになりました。

 後に、このカップはニューヨーク・ヨットクラブに寄贈されたのですが、アメリカ号のオーナーたちは「いかなる挑戦も受けるべし」という内容の証書をつけたそうです。これにより、1870年に英国艇「カンブリア」がアメリカに乗り込み勝負を挑んだのが、第1回のアメリカズカップとなりました。

 そんなヨットレースの最高峰において、3度の防衛戦を死守し、現在もチャンピオンに君臨しているのがエミレーツ・チーム・ニュージーランドです。

 コロナ禍でレースができなかったこともあり、陸上におけるヨット「ランドヨット」で世界記録を樹立した同チームは、持て余す時間を有意義に過ごすためか、母船に付き添うサポート役である“テンダーボート”の燃料電池化も進めていました。いやはやこのチーム、勝者としての余裕があり過ぎます。

●燃料電池の供給をアピールしないトヨタ

 燃料電池で動くテンダーボートの製作は2021年にスタート。2022年5月には試運転をおこなっていました。「Hydrogen Support Vessel」と呼ばれる同艇は、全長33フィート、6名乗り、最高時速50ノット、30ノットであれば4時間の巡航が可能という性能が与えられています。

 燃料電池は、チームのスポンサーのひとつであるトヨタが供給しているようですが、トヨタの広報サイトには特段、うたわれていません。テンダーボートが搭載する燃料電池はトヨタ製のようですが、ドイツのBrusaというメーカーのDC/ACインバーターや、同国のAVANCOグループに属すXPERION社の水素タンク“X-Store”が組み合わされているため、トヨタとしては大々的にアピールしにくいのかなぁ、と思っています。

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 ちなみに、フランスにHylicoという新興の水素モビリティメーカーがあるのですが、つい先日、トヨタは同社のトラック/トラクターヘッド向けに燃料電池を供給することを発表しました。欧州トヨタは大々的にプレスリリースを出していますが、日本のトヨタはこの件について沈黙を守っています。「温室効果ガスの削減に貢献!」と大々的にアピールできるのに、あえてうたわないのはマーケティング上のなんらかの戦略なのでしょうか?

 まぁいずれにせよ、ゆっくりと、しかし着実に、燃料電池を搭載したモビリティのソリューションが展開されつつあるのは確かなようです。

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