ジープを生産していたウィリス社が開発“アウトドアでも活躍する軍用トラック”「M274」の秘密とは
“ローリングシャシー”のような軍用トラック
ちょっと前の話になりますが、フランスの老舗オークションハウスであるアールキュリアルに、面白いクルマが出品されていました。トラックが架装される前の“ローリングシャシー”のような風貌のシンプルな軍用車両「M274」です。

まるで、りんごなどを栽培する果樹園で活躍する、屋根を切り落とした軽トラックのようなルックスのこのモデル、正式名称は「M274トラック・プラットフォーム・ユーティリティ・1/2トン」といい、ファンの間では「ミュール」の呼び名で知られています。
正式名称は、このクルマの性能を列挙したものだといいます。朝鮮戦争まっただ中の1950年代に、前線における小規模輸送のための運搬車として開発計画が進められました。ちなみに開発したのは、ジープの生産をおこっていたウィリス・オーバーランドです。
ドアも屋根もウインドウもない、文字どおりむき出しのM274は、運転席にメーターパネルすらありません。もっとも、最高速度は25mph(約40km/h)ですし、前線における小規模輸送のためのクルマだったので必要ナシ、と判断したのでしょう。
ちなみに、リアに搭載するエンジンは専用開発されたもので排気量は868cc。空冷水平対抗4気筒の4WDで、しかも4WSまでおごられているからびっくりです。
トランスミッションは3速MTで、ハイギアとローギア2速のトランスファーを有していました。4WDにセンターデフが設定されていなかったので、いわゆる直結フルタイム4WDです。前後輪の回転差に起因するタイトコーナーブレーキング現象が発生していたはずですが、オフロード環境での使用や低速域での運用を考慮し、軽量化・コストダウンを優先したのでしょう。
●払い下げ車両がコアなマニアに人気
1956年から1970年までの間に、4つの企業が6種類のミュールを生産したそうです。ちなみに、1965年にはマイナーチェンジを受け、エンジンを約690ccのコンチネンタル・ハーキュレス製の空冷水平対向2気筒へと小型化。メンテナンスの簡素化が目的だったといわれています。とはいえ、気になるパワーダウンは2psに過ぎなかったといいます。
1980年代以降、続々と退役したM274が民間に払い下げられるようになると、予想外の存在として人々にウケたそうです。というのも、その面白いルックスはもちろん、軽快な車両ゆえ、ハンティングやフィッシングといったアウトドアスポーツを趣味としていたコアなマニアが、荒野での移動手段としてM274を活用するようになったのだとか。YouTubeで漁ってみたら、楽しそうにM274を走らせている人の姿を発見しました。日本では耳にしたことはありませんが、ハードコアなオーナーズクラブがありそうです。
今回出品されていたのは、2010年にウィスコンシン州のオークションで落札されたチェット・クラウス氏の有名なコレクションだったもの。クラウス氏はアメリカ軍で使用されたジープのコレクターとして名を馳せた人物です。2017年にジープ専門店「Indian Cars」でメカニカルオーバーホールが実施された個体で、走りは良好だとオークションの出品案内ではうたわれていました。
予想落札価格は8000~1万4000ユーロといわわれていた中、1万6688ユーロ(約236万円)で落札されたことからも人気の高さが伺えます。昨今のクラシックカーのように手が届かないほど高嶺の花じゃないところは好感が持てますね。
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