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オークションに登場 ワケありアウディ「クワトロ」の正体とは? なぜ車高が高い? “パリダカ”参戦マシンの中身は「レンジローバー」だった!?

“パリダカ”参戦マシンがアウディ「クワトロ」の姿をしていた理由とは

 デ・パオリ氏が手がけた『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』は、なぜアウディ「クワトロ」のボディをまとっていたのでしょう? それは単純に、デ・パオリ氏が普段の足として愛用していたクルマが、アウディ「クワトロ」だったから、だそうです。

見た目こそアウディ「クワトロ」だが、使われているパーツは「レンジローバー」用の方が多いという(C)Aguttes
見た目こそアウディ「クワトロ」だが、使われているパーツは「レンジローバー」用の方が多いという(C)Aguttes

 ただし、ラリーを制覇すべく誕生したアウディ「クワトロ」も、“パリダカ”には不向きということはデ・パオリ氏も十分理解していたそうです。というのも、1984年のラリー・デ・ファラオンでアウディのワークスチームが2台の「クワトロ」を出走させたところ、2台ともリタイアしていたからです。

 アウディワークスの「クワトロ」は、2回のスティントでエンジンの温度が上がりすぎ、オーバーヒートしていたそうです。ターボエンジンは高温になりがちですが、あのクルマではエンジンルーム内の空気の流れを改善したり、オーバーヒート状況を改善したりするためのスペースがないのは明白だったとか。

 そこでデ・パオリ氏は、愛車の「クワトロ」を解体し、各ボディパネルをテンプレートにしてガラスファイバーパネル用の金型を作成。それを元に、ラリーマシンを含めた3台のコンプリートカーを製作し、さらに3台分のシャシーを販売したそうです。しかも、開発において重視したのは、レース参戦中の修理やメンテナンス性だったといいますから本格的です。

 また、プライベーターとしてラリーに参戦しながら、キチンとお金を稼いでいるところは、さすがは元敏腕ビジネスマンといったところでしょう。

 こうして誕生した『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』ですが、一番、厄介だったのはサスペンションだったといいます。そこでピレリに協力を依頼し、デ・パオリ氏のファクトリーに同社のエンジニアが常駐することにまでなったそうです。

 その結果、『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』はダンパーに既存のものを使いつつ、コイルスプリングの代わりにエアスプリングを組み合わせることになりました。ちなみにピレリは、最終的にこのサスペンションシステムを買い取り、現在もフィアットのトラックに採用しているのだそうです。

 そして『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』に搭載されたエンジンは、ローバー製の3.5リッター。燃料噴射装置を3.9リッターのものから流用することで信頼性の向上が図られています。

 エンジンの搭載位置は、ローバーの規定値よりもキャビン側へと移動し、前後重量配分は50対50を実現。最高出力は230馬力/5400rpmに過ぎませんが、1986年当時、未舗装路を200km/hで走ることができたそうです。なおトランスミッションやディファレンシャルは、「レンジローバー」のものをそのまま使用していました。

 デビュー戦となった1986年の“パリダカ”で、『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』はリタイアを余儀なくされます。しかし原因はクラッシュやトラブルではなく、サポートトラックが道に迷ってしまい、タイヤ交換やオイル交換ができなくなってしまったと同時に、ラリーを継続するよりもサポートトラックを探しに行くことを選択したから、という逸話が残っています。

 その後、デ・パオロ氏が手がけた『アウディ「クワトロ」レンジローバーV8』は売却され、フランスで3人目となるオーナーの手に渡りました。そして2019年にはイタリア人コレクターが購入し、デ・パオロ氏のショップにてフルレストアされています。ちなみに当該車両は「フランスで登録された」と紹介されているので、実際に“パリダカ”に参戦マシンではなく、同時に製作された3台のうちの1台なのでしょう。

 予想落札価格は15万~25万ユーロ(約2342万〜3904万円)と決して“お手頃”ではありません。プライベーターが手がけたものとはいえ、それだけの歴史的価値があるマシンなのでしょう。

Gallery 【画像】“パリダカ”参戦用の奇妙なルックスを持つワケありアウディ「クワトロ」を写真で見る(10枚)
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