バイク界に君臨する“王者”が10年ぶりに進化を遂げた! 2輪の“最強SUV” BMW「R1300GS」のスゴさとは? 公道で体験
世界で6割のシェアを持つ絶対王者
今、2輪の世界では“アドベンチャーバイク”と呼ばれるカテゴリーが人気です。
これはさまざまな道を走破できるオフロード性能と、高速道路やワインディングロードを快適に走れるオンロード性能を兼ね備えたマルチパーパスなバイクのこと。クルマでいうならSUVのようなモデルです。
このカテゴリーの先駆けとなったのが、今から40年以上前、1980年に登場したBMW「GS」シリーズです。

GSとはドイツ語で“ゲレンデ(野原)”と“シュポルト(スポーツ)”の頭文字を組み合わせたもの。クルマでいえば初代「レンジローバー」やメルセデス・ベンツ「ゲレンデヴァーゲン」(現在の「Gクラス」)のような存在といえるでしょう。
誕生から40年あまりの時を経て、GSシリーズは世界のツーリングエンデューロ(欧米ではそう呼ばれる)市場で約6割のシェアを持つ絶対的リーダーとなりました。BMWモトラッド(2輪部門)においても全世界で年間約20万台の販売台数のうち、約6万台を占める基幹モデルです。
そんなGSが10年ぶりのフルモデルチェンジを受け、「R1300GS」となって登場しました。
BMWによれば、新型GSは前モデルの「R1250GS」に比べて90%以上のパーツが刷新されており、新たな電子デバイスも多く採用されているとのこと。R1300GSがBMWにとっていかに重要なモデルであるか、ということを、試乗を前に痛感させられました。
●「強く、大きく」から「軽く、扱いやすく」へ
試乗会場にズラリと並べられたR1300GSに相対すると、前モデルに比べて印象がずいぶん変わっているのに気づきます。
小山のように大きかった車体は若干コンパクトになり、物理的な大きさに加えてデザインが全体にすっきりとしたことも“いかつい”印象を和らげています。
特にヘッドライトは、これまでGSの特徴でもあったふたつのライトを組み合わせたアシンメトリーな異形2眼から、小型LEDライトを“X型”に配したマトリックスデザインとなり、大きくイメージを変えています。
併せて、カウルもスリムになり、スマートになった顔つきと引き換えに、前モデルまでの“陸の王者”然とした迫力はやや影を潜めた感があります。
ですが、実はその“迫力”こそが、多くのライダーにとっては“敷居の高さ”になっていたのも事実。今回のフルモデルチェンジで最も重視されたのは、そのイメージの払拭にあったのです。
前述したように、このカテゴリーの絶対的リーダーとなったGSは、モデルチェンジするたびに「大きく」、「強く」、「高性能に」という進化を遂げてきました。結果、車重は初代「R80G/S」の196kgに対し、前モデルのR1250GSでは256kg(日本仕様)と約60kgも増加。当然、ボディも大きくなり、特にわれわれ日本人の平均的な体格のライダーを尻込みさせる要因になっていました。
そこで新型R1300GSでは、進化の方向が見直されました。さらなる性能向上は果たした上で、より扱いやすく、多くのライダーが臆せず扱えるように、ということにプライオリティが置かれたのです。
プレス向けの資料によると、多岐にわたる進化のポイントをまとめるならば、「コンパクト化」、「軽量化」、「シンプル化」という3つに集約できるとのこと。つまり「乗りやすく」「扱いやすく」なったのです。
●速度に合わせてシートが自動で上下
今回試乗したのは、最上位グレードとなる「R1300GS ツーリング」。その特徴は、電子制御サスペンションの“DSA”およびザックス製の“アダプティブ・ビークルハイトコントロール”が装備されることです。
アダプティブ・ビークルハイトコントロールは停車時に前後サスを縮めることで、座面の高さを走行時の850mmから820mmに下げてくれます。この30mmのローダウンは実際にまたがってみると効果絶大で、燃料タンクやシート形状の変更とも相まって、身長173cmの筆者でも両足をしっかり地面に着けることができるほど(カカトが少し浮くぐらい)。足着きはよくなっています。
走り始めて50km/hを超えると、シート高は約3秒で850mmへ上昇。25km/h以下になると約1.5秒で再び下がるので、安心して停車することができます。その作動はとてもスムーズなので、あえて意識していなければ上下動には気づかないぐらいです。
この車高調整機構は、センタースタンドをかけるときにも働きます。スタンドに体重を預けると車高がわずかに上昇し、車体を引き上げる力をアシストしてくれるのです。これはツーリングなどで荷物を積んでいるとき、あるいは小柄、非力なライダーにはとても有効なはずです。
走り出してすぐに感じるのは「軽さ」です。ひとつは物理的な軽さ。車両重量は前モデルより12kg軽量化され、グレードにより若干違いがあるもののおおむね250kgに収まっています。また、ボクサーエンジンとトランスミッションのレイアウトを改め、エンジン下部にトランスミッションを組み込んで搭載位置を見直すなど、重量物を車体中央に集中させたことによる「身のこなしの軽さ」も実感できます。
今回の試乗では林道も走ってみましたが、以前のGSだったら躊躇してしまいそうなダートを前にしたとき、「行ってみようか」と思えたのはこの“軽さ”ゆえ、でしょう。
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