“ランクル”に「強敵」出現!? 中東で愛される日産の旗艦オフローダー「パトロール」の実力とは? 日本市場への展開にも期待大
日本でも「GT-R」に代わる“突き抜けた選択肢”になれる!?
今回、サウジアラビアで試乗した「パトロール」は、日産自動車の現行ラインナップの中でも名称別では最も古い銘柄です。その出発点は終戦間もない1951年。陸上自衛隊の前身である警察予備隊が用いる小型高機動車の競争入札に合わせ、当時の日産が開発したのが始まりになります。

ちなみに、同じタイミングで入札に参加したトヨタが開発したモデルは、「ランドクルーザー」の源流となりました。そして採用されたのが結局のところ、第二次大戦中に活躍した「ウイリス」をライセンス生産した三菱「ジープ」だったというのは、当事者的にはなんだかなぁというオチだったのかもしれません。
その後、「パトロール」は“ランクル”と同じく民生&一部法人向けのタフな四駆という道を歩むわけですが、日本市場では1980〜2000年代の間に「サファリ」という名前で売られていた……といえば、思い出される方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、放水銃を備えたテレビドラマ『西部警察』の劇中車……と、そのなぞらえに反応するのは拙も含めてまあまあなオッさんでしょうか。
そんな「サファリ」も2007年を最後に日本では販売されていません。でも国外では、中東を筆頭にオーストラリアや南アフリカ等、さまざまな仕向地で現在も展開されています。
そして、2010年のフルモデルチェンジを機に、「パトロール」はインフィニティのトップグレードとなる「QX80」、そして北米向けSUVの「アルマーダ」とアーキテクチャーを共有。生産も九州工場に一本化されたメイド・イン・ジャパン物件として世界の仕向地に送り出されているわけです。
そんな「パトロール」が2024年秋に14年ぶりのフルモデルチェンジを迎えました。新型は車台もエンジンも完全新設計となっており、その仕上がりは前述の「QX80」や「アルマーダ」にも大きく影響します。

ちなみに新型「パトロール」、日本で再び展開されるのかといえば、それは全くの未定です。車寸でいえばキャデラック「エスカレード」やロールス・ロイス「カリナン」と肩を並べていますから、日本の使用環境からすればNGと、これまでの常識的にはそう判断されても仕方ありません。
が、日本市場でも規格外である3000万円級の「GT-R NISMO」をホイホイさばいていた販売実績が日産にはあるわけで、「こういうちょっと図抜けたプロダクトも扱えるんじゃないか?」という期待の声は社内の一部でも挙がっているようです。
少なくとも、世間の反応をうかがうくらいの価値はあるんじゃないかと、そういう観測気球的な役割もあって、拙のような日本人ライターにもお触りのチャンスが巡ってきたというわけです。
●「GT-R」の開発で培ったノウハウをフィードバック
新型「サファリ」は伝統のラダーフレームを採用しながら、その骨格設計は刷新されています。
ハイテン鋼の使用範囲拡大に加えて、クロスメンバーの一部をサイドメンバーに貫通させてから溶接するなど新たな工法を採用し、前型に対しては曲げ側で57%、ねじり側で40%も単体剛性を向上させました。
「パトロール」はこのラダーフレームに、先代から四輪独立懸架サスを組み合わせていますが、新型はトップグレードをエアサス化したことで、乗り心地の改善に加えて最大120mmの車高調整機能を得ています。
エアサスについては過酷な環境下では耐久性や信頼性の不安がありますが、これについては十分な検証を重ねてきたそうで自信を持って世に送り出したそうです。
が、この手のクルマは法人需要もありますし、擦り切れ尽くすまで無茶苦茶な使われ方も想定されるがゆえでしょう、トップグレード以外はベーシックなコイルサスを採用しています。
エンジンはVR35DDTT型3.5リッターV6ツインターボで、前型まで搭載していた5.6リッターV8の代替的な役割を果たすべく新開発されたもの。最高出力425ps、最大トルク700Nmと、自然吸気なら6〜7リッター級のアウトプットを誇ります。
また、高温の砂漠等、極限の気候環境でも安定した性能を引き出すべく冷却能力には特に気遣われていて、油脂の潤滑系には高圧のスカベンジポンプを採用。これは「GT-R」の開発や熟成の過程で培ったノウハウのフィードバックだそうです。
組み合わせられるトランスミッションにも副変速機つきの9速ATを初採用し、ワイドレシオで巡航燃費の向上も果たしています。駆動方式はフルタイム4WDで、前後輪の配分はドライブモードや走行状況に応じてほぼ0:100〜50:50の範囲でリニアに駆動力を制御しています。
“ほぼ”というのは、瞬時に駆動力を配分できるよう、常に前輪側にプリロードがかけられているからで、その配分の様子はインフォメーションモニター上でも確認することができます。
内装はラグジュアリー系SUVほど豪奢に飾られてはいませんが、それは「QX80」が担うところです。「パトロール」はカテゴリーを鑑みれば十分満足できる質感を備えているといえるでしょう。
望外だったのは、フレームの刷新に合わせて骨格や開口の形状を工夫し、3列目シートの乗降性や居住性が大きく改善されていること。乗せることに特化した5ナンバー級ミニバンと比べても大きな見劣りはない程度の空間を有しています。
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