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日常のアシは「電気自動車がいいかも!?」 経験不足だった筆者がフィアットの電動SUV「600e」と10日間過ごして気づいたこととは?

BEVのみで日常の移動をまかなうのは大変なのか?

 僕(嶋田智之)はここ3か月ほど、BEV(電気自動車)のある生活を楽しんでいます。仕事の際にはエンジン車を走らせることもありますが、現場までの移動や日常のアシには、メーカー/インポーターから借りたBEVを使っています。

 その中で、特に気に入ったというか、僕の気持ちの中に根を張っちゃったモデルというのが、フィアットの電動コンパクトSUVの「600e(セイチェント・イー)」。本記事ではその理由をご紹介したいと思います。

フィアット「600e」
フィアット「600e」

 僕が最近、積極的にBEVを利用している理由、そのひとつは「勉強不足、体験不足だったBEVをもっと知りたい」と考えたから。そしてもうひとつは、「BEVのみで日常生活をまかなうのは、現状、どれくらい大変なのだろう?」というシンプルな興味からです。

 2024年の夏に転居して埼玉の片田舎に住むようになったこともあり、仕事の際は平均して1日当たり200kmくらいは走ります。また出張も多く、往復で800〜1000km移動することもザラ。そうした僕の日常にBEVを当てはめてみると、いったいどうなるのか……。

 そんな出来心からスタートした僕なりの実証実験。まだ日本で購入できるすべてのBEVに試乗できたわけじゃありませんが、カタログ上の航続距離が600kmを超えるクルマも、実質250km程度のクルマも、巨大なクルマも小さなクルマも、スポーツ系も実用系も……これまであれこれ試してみました。

 そんな途中経過的状況の中で実感したのは、「カタログ上の航続距離が400kmを超えるモデルであれば、ほとんど不自由を感じることはない」ということ。なかでも、生活を共にして「とてもバランスがいいクルマだな」としみじみ感じたのがフィアット「600e」でした。

 これまで試してみたBEVの中には、「600e」よりもっとスポーティで走りの楽しいモデルもありましたし、驚くほどの航続距離を経験させてくれたモデルもありました。快適だったり実用性が高かったり……さまざまなタイプのBEVを体験中ですが、ここに取り上げる「600e」はクルマに求めたいもの、BEVに求めたいものといったさまざまな要素のひとつひとつが、決して最高とはいえないものの、それぞれポイントが高いのです。仮にレーダーチャートをつくるなら、尖ったところがない代わりにグラフの中にできる多角形がきれいなカタチを描き、なおかつ、その面積が大きい、といった感じです。

「600e」のカタログ上の航続距離(WLTCモード)は493kmですが、バッテリーが満充電状態での航続距離はメーター読みで400kmといったところ。ある日、その状態で自宅を出発し、都内をグルグルと走り、用事を済ませて自宅まで戻ったところ、総走行距離は218km、メーターに表示されるバッテリー残量は45%、残りの航続可能距離は157kmでした。

 そこから近所にある90kWの急速充電器で30分間充電したら、バッテリー残量は88%まで回復。航続可能距離は358kmとなりました。10日間ほど「600e」と過ごしてみたのですが、日々だいたい似たようなデータをマーク。思いのほか電気を飲み込む能力が高いことに驚きました。

 いまや充電器の設置場所や出力を知ることができ、しかもそこまでGoogleMapでナビゲートしてくれるアプリが存在します。そもそも一般的に、1日当たり200km走るなんて機会はあまりありません。となると、「600e」くらいの性能でも十分実用的だと感じるのです。

 もちろん、走らせ方によってBEVの航続可能距離はガラッと変わるのですが、少なくとも僕は、何ひとつ困った思いをしませんでした。ネガティブな意見の多い充電時間も、スマホでメールの返信をしたり、タブレット端末で仕事関連のメモをチェックしたり、所用を済ませているうちに、あっさりと過ぎ去ってしまうからです。

 気になるランニングコストは、別途、毎月4180円(税込)を要するものの、1分間の急速充電当たり27.5円(税込)で済むe-Mobility Powerカードを利用すれば、30分間の急速充電に要する額は1回825円(税込)。もし、1リッター当たり15km走るクルマで218km走行し、自宅近くのガソリンスタンドで195円のハイオクガソリンを満タンにすると、代金はその倍をはるかに超えてしまいます。

「600e」は585万円(消費税込)と決して安いクルマではありませんが、日常的なランニングコストは驚くほど安いのです。また、回生ブレーキを多用するBEVはブレーキパッドが減りにくいといったメリットもあるので、所有している間の整備コストも抑えられることでしょう。

 そんなわけで、BEVに求めたい“不自由なく日常的に乗れること”という条件を、僕のライフスタイルでは余裕でクリアできるな、と実感したのでした。

●“見た目よりずっと快適”な電動コンパクトSUV

 BセグメントのコンパクトなSUVであり、事実上の先代モデルといえる「500X」と比べて全長が95mm短く、全幅が15mm細身で、全高が15mm低いフィアット「600e」の車体は、日本の道路環境の中で間違いなく機動力に優れるサイズです。

フィアット「600e」
フィアット「600e」

 ボディが丸いので四隅はつかみづらいのかな? と思いきや、視界は悪くないしボンネットが水平に近い上に四隅も丸いので、取り回しに難儀することはありません。

「600e」のキャビンは、さすがに大人5名での長距離移動には少しキツいかもしれませんが、4名なら楽に移動できるだけの広さが確保されています。

 ラゲッジスペースは通常で360リットル、後席の背もたれを倒せば1231リットルの容量を備えています。

 通常なら、シフトセレクターが備わる部分に大きく深い小物入れがあってものすごく便利など、使い勝手も良好です。

 友人といっしょに出かけたときには、ひとつも不満が出なかったどころか“見た目より快適”との声を聞きました。

 リアバンパー下につま先を入れるとリアゲートが開くハンズフリーパワーリフトゲートだとか、出来のいいADASなど、なくても問題はないけれどあるとうれしいものを含め、装備類に不満はありません。コンパクトSUVとしては、なかなかハイレベルです。

Next運転が苦手な人でもBEVのメリットを味わえる「600e」
Gallery 【画像】「えっ!…」これが「電気自動車もいいかもね!」と思わせてくれたフィアット「600e」です(30枚以上)

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