6点式レーシングハーネスを装備!? ルームミラーもなし! 究極の“ハンドリングマシン”アルピーヌ「A110 Rチュリニ」に乗ってみた
日常でも鮮明に“刺激”を味わえる
旧くを知るひとは郷愁を感じ、新しい世代はとびきり新鮮に映るのが「アルピーヌA110 R TURINI(チュリニ)」。アルピーヌというメーカーが、F1、WECなど最高峰のモータースポーツで培った技術を駆使し、それを支える一流パーツメーカーとコラボしながら鍛え上げた“チューニングカー”です。
今回は“ラディカル(過激で極端)”と呼ぶにふさわしい究極の一台をレポートします。

今となっては珍しい、むしろ唯一無二といってもいいほどラディカルなスポーツカーが、アルピーヌA110 R(=Radical)チュリニです。
ラディカルといっても、1.8リッター直列4気筒ターボエンジンの出力性能は300馬力。今ドキのハイパフォーマンスカーに比べたら凡庸な数値だと思うかもしれません。しかし、エンジンを車体の中心に置いたミッドシップカーにして、ボンネット、ルーフ、リアパネル、バケットシートなどをF1カーボン化するほど軽量化を突き詰め、車両重要はわずか1090kgほどに。ものものしいエアロパーツ(エアスプリッター)がつくし、専用サスペンションによって車高も低くなっています。見るからに“ラディカル”ですね。
身体にぴたりと一致するサベルト製フルバケットシートに身を預けると、ラディカルな印象はさらに際立ちます。リアパネルがカーボン化されて後方視界は皆無なのでそもそもルームミラーがついていない。通常の3点式シートベルトもなくて、身体を固定するのは6点式レーシングハーネスのみ。

まるでストリートに舞い降りてきたレーシングカーです。それでも機能一辺倒ではなく、色使いやマテリアルなどに、そこはかとなく気品を感じさせるのがアルピーヌらしさ。エクステリアはアルピーヌF1マシンと同じレーシングマットブルー(とカーボンパーツ)で覆われ、ダッシュボードやトリムなどはマイクロファイバーに。「ストリートを走れるレーシングカー」のような存在なのに、どこにも暑苦しさを感じさせません。
いちいち乗り降りは厄介だし、路面の段差や縁石、駐車場のスロープにも気を遣います。後方視界はサイドミラー頼りだし、6点式ハーネスだってワンタッチとはいきません。元来、スポーツ志向だったA110Sに比べても、車高がさらに10mmほど低くなり、前後とも10%スプリングレートをアップ。スタビライザーの剛性はフロント10%、リア25%も強化していて、タイヤはセミスリックのようなミシュラン・パイロットスポーツカップ2。街を転がすぶんには、はっきりと硬い。
いつ何時もソリッドでダイレクト、まるでゴーカートのようです。それでも長時間、乗っていられないほどに不快ではありません。路面状況や運転操作に対してダイレクトだから、逆に疲れが蓄積しないのか。稀有なレーシングカーを転がしているようで、心が高揚するからなのか。日常の時速30kmであってもはっきりと“非日常”を味わえるエンターテイナー的な存在だと思います。
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